「お祖父様。モースはエルドラントがどうとか言ってたわ。何か心当たりはある?」

ユリアシティの会議室でルークたちはテオドーロと話をしていた。
そして、ティアの問いにテオドーロは顎を撫でた。

「エルドラントというと、古代イスパニア神話に出てくる、《栄光の大地》ぐらいしか……。そうだ。エルドラントのことはわかりかねますが、少しおかしなことが起きています」
「おかしなことだと?」
「はい。ただでさえ、第七音素(セブンスフォニム)が減少傾向だというのに、第七音素(セブンスフォニム)が異様に消費されている点があるのです」

ルークがそう訊くとテオドーロはそう言うのだった。






〜Shining Rain〜








「それは何処だ?」
「一つは第八セフィロトの付近です。調査隊を派遣しましたが、その時点では何もなかった。もう一ヶ所は現在追跡中です」
「追跡?」

ジェイドは眉を顰めた。

「場所を特定するのに追跡というのは解せませんね?」
「追跡と言わざる得ないのですよ。何しろ場所自体が移動しているようなので」
「移動施設? 陸艦とか、馬車とか?」
「わかりません。ただ、もっと巨大なものではないかと、あれだけ第七音素(セブンスフォニム)を消費するのは不可能だと思います」

ガイの言葉にテオドーロは首を振ってそう言った。

「ふむ。戦争も起きていない状態で、第七音素(セブンスフォニム)を大量に使うのはフォミクリーぐらいのものです。気になりますね。……移動に決まった法則はないのですか?」
「現在調査中ですが、海を移動していることは確実ですな」

テオドーロの話で聞きだせるのはどうやらここまでのようだ。
ルークたちは礼を言うと会議室を後にした。

「海、か。……一体何なんだ? 海を移動する巨大なものは」
「一角鯨とか?」

アニスの言葉にナタリアは首を傾げた。
「一角鯨は大きいもので体調三十メートル程度ですわ。海を動く巨大なものというには小さくありませんこと? やはり、陸艦ではありませんか? 最近ではかなり大きいものがあるですが?」
「ああ。だが、さすがに千メートル級になるとまだほとんど出回ってないらしいぜ」
「そうですの……」

ガイの言葉を聞くとナタリアはガッカリしたように息をついた。

「まぁ、巨大なものですから、海を見れば見落とすことはないでしょう」
「海を目で探すのか?」
「ええ。徹底的に♪」

ルークの言葉にジェイドは笑みを浮かべてそう言った。
それを聞いたアニスは溜息をつく。

「はぅ……。海を見てると眠くなるんだよね。まっ、仕方ないか」
「……あっ、あの…………」

海を目指すことを決めたそのとき、アリエッタが恐る恐る口を開いた。

「どうかしましたか、アリエッタ?」
「あの……それってもしかして………島、じゃないかと思うんです」
「島!?」

< 突然のアリエッタの言葉にアニスは瞠目する。

「前に……総長がアリエッタを仲間にしてくれたとき言ったんです。沈みかけたフェレス島を浮かび上がらせて、基地にするって」
「フェレス島、か………」

フェレス島はホド諸島の島だ。
ホド消滅の影響で津波に潰されたらしい。

「なるほど……。ヴァンたちは、そこを本拠地にしている可能性があるますね」

アリエッタの言葉を聞いたジェイドは、眼鏡を押さえながらそう言った。

「行ってみるか。フェレス島へ」
「ああ……」

ルークは頷くとアリエッタを見た。

「アリエッタ、助かった。おまえのおかげで時間を掛けずに探せそうだ」
「お役に立てて嬉しいです!」

ルークが礼を言うとアリエッタは嬉しそうに笑った。





















「本当に……あったな」

ガイが驚いたように呟く。
アリエッタの言葉でルークたちはアルビオールでフェレス島へと向かうと、海面をゆっくりと移動する島を発見した。
早速フェレス島に着陸すると、そこの建物はボロボロとなっていた。

「津波で、街がこんなにもボロボロになっちまうのか……。水は恐ろしいな」

あたりに広がり塩臭い臭いに微かに眉を顰めながらルークは言った。

「ミュウは泳げないですの……。また、津波がきたら、大変ですの……」

足元でブルブルと耳をミュウは振るわせた。

「今は大丈夫よ。それにアルビオールもあるし」

ティアがそう言うとミュウはホッとしたように耳を膨らませた。
そんなミュウの頭を優しく撫でるとティアは、一つの柱に歩み寄ってザラザラした表面に触れた。

「……この街の人々は、ほとんど助からなかったでしょうね」
「…………」

ティアの言葉にアリエッタは、手にしていたぬいぐるみをギュッと抱き締めた。

「ティア!」
「あっ……! ごめんなさい、アリエッタ」
「いいの。……本当のことだから」

謝るティアにアリエッタは、そう言って笑みを浮かべた。
その笑みは、泣いているようにも見えた。

「とにかく、奥へ行ってみるか」
「アリエッタ。案内してもらえますか?」
「はい!」

イオンの言葉にアリエッタは頷くと歩き出した。
その後に続く形でルークたちも歩いた。
アリエッタが迷うことなく足を進める中、突如足が止まった。
その先には一期は大きな建物があった。
他の建物とは違って、人の手が入っているのがよくわかるほど、その建物だけは綺麗だった。

「ここで……総長は何かしていました」

そう言ってアリエッタは扉を開いたが、そこは普通の家と変わらない様子だった。

「何も……ないようだが?」

ルークが不思議そうに言う中、ジェイドは建物の中へと入っていく。

「………どうやら、この奥のようですね。何かが動いている」
「何?」

ジェイドが床を蹴ったのでルークはそこへと近づいた。
すると、微かだが、床の下で唸るような機械音が聞こえた。
だが、何処にも下へと繋がる階段などはない。
ジェイドはポケットから何かを取り出すとそれを床へと転がした。

「ミュウ。火を」
「はっ、はいですの!」

ミュウは慌ててその物体に火球を噴きつけると、それはほぼ垂直に炎を上げた。
それが収まると、床には大きな穴が開いた。
これなら人一人が楽に通れそうだ。
ジェイドは、その穴を覗き込むとロープを取り出して下へと降りていった。
暫くすると、大丈夫ですよという声が返ってきたので、ルークたちも下へと降りた。

「これは……!」

その途端、ガイが急に息を呑んだのが聞こえた。
そこは巨大な空間が広がっていて、二メートルほどのカプセルがズラリと並んでいる。
そこから繋がった管が床へと走り、コーラル城で見た同じ機械に接続されていた。

「これは、もしかして…………フォミクリーか?」

ガイがそう言うとジェイドが頷く。

「驚きました。かなり大規模なものです。しかも稼動しています」
「そうか。ここでレプリカを造っていたのか」
「すぐに停止させましょう。第七音素(セブンスフォニム)の減少が少しマシになるかもしれません」

ジェイドの言葉にルークは頷いた。

「これ以上、レプリカを増やすわけにはいかない」

ジェイドは頷くと操作盤と思われる機械に近寄ると、ほとんど迷うことなく指を動かしていく。
すると、それまで安定した規則的は作動音を発していた機械が息をつくように震え、そしてすぐに沈黙した。

「やめろっ!」
「!!」

突如響いた声にガイは、振り返るとその瞳は微かに動揺で揺れた。
そこにいたのは、ガイと同じ青い瞳に長い金髪の美しい女性の姿があった。

「…………姉上」

彼女を見たガイは、ポツリとそう呟くのだった。
























Rainシリーズ第9章第5譜でした!!
やっと、フェレス島ですよ;なかなか話が進まないなぁ;
そして、今回でついにレプリカ・マリィが登場しました!
次回で、エルドラントが浮上します!!


R.1 8/28



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