「……本当に旅の預言士(スコアラー)がケセドニアにいるのかしら?」

アルビオールでケセドニアに向かう中、そうティアが口を開いた。

「さぁな。単なる噂かもしれないしな」
「え〜〜〜っ! それでいなかったら、行き損じゃん!!」

そう言ったガイの言葉にアニスは頬を膨らませてそう言った。
「さぁ……それはどうでしょうね?」
「? どういうこと、ですか?」

ジェイドの意味ありげな言葉にアリエッタは首を傾げた。

「何でもありませんよ。全てはケセドニアに着いたら、わかることですし」

そう言ってジェイドは窓の外を眺めた。
全てはケセドニアに行けばわかる。
アッシュが言っていたことが本当なのかは………。






〜Shining Rain〜








「何でしょう!? 行って見ましょう!!」

アルビオールを砂漠に停め、ケセドニアに着いたルークたちは広場の方が騒がしいことに気付いた。
ナタリアはそう言うと一人駆け出していった。

(この間にナタリアの乳母に話を聞きに行くか……)
「おい、ルーク。何だか様子が変だぞ」

そうルークが考えているとき、ガイがそう言ったのでルークはその群集へと目を向けた。
その騒ぎは人々が誰かを囲んでいる為起こっているのだということはわかった。

「さぁ、預言(スコア)を求める者は僕と共に来い! そこで預言(スコア)を与えよう」
「……やはり、アッシュの予想が当たった様子ですね」

ジェイドがそう言うのを聞きながらルークたちも走った。

「待ちなさい!」

人垣を掻き分けながらアニスはそう声を張り上げた。

「ローレライ教団は預言(スコア)の詠み上げを中断しています! その預言士(スコアラー)は偽者です!!」

すると、人垣から人を馬鹿にしたような笑い声が聞こえてきた。
「これは心外だね、アニス。これから預言(スコア)を詠むのはローレライ教団の預言士(スコアラー)じゃない。モース『様』が導師となって新たに拓かれた、新生ローレライ教団の預言士(スコアラー)だよ」
「「「「「「「!?」」」」」」」

人々を押し退けて前に出たその人物を見てルークたちは瞠目した。
そこにいたのは、にこやかな笑みを浮かべたイオンだった。

「あっ、あんたは……まさか……!?」

イオンそっくりの少年はイオンが浮かべることはない皮肉めいた笑みを浮かべた。

「…………シンク!?」
「生きていたのですね」

間違いない。
彼は被験者(オリジナル)イオンのもう一人のレプリカ。
六神将の一人≪烈風のシンク≫だ。

「あなたが生きているとなれば、ヴァンがローレライを取り込んで生きている可能性もあるでしょうね」

やれやれといった感じでそう言ったジェイドに対してシンクはフッと笑った。

「そこまでわかってるんだったら、真剣に≪ローレライの宝珠≫を捜した方がいいじゃないか?」
「おまえらだってまだ見つけていないだろうが」
「……見つからない分にはこっちが有利だからね」

ルークがシンクを睨みつけてそう言ったが、それでもシンクは笑みを消さなかった。

「相変わらず、ふれぶてしい!」
「…………シンク。新生ローレライ教団って何? モースが導師ってどういうこと?」

アニスは前に出るとシンクにそう問いかけた。

「何だ、モースはあんたに話してなかったのかい? 裏切り者さん」
「……私は好きでモースの言いなりになってた訳じゃない!!」

シンクの心ない言葉にアニスは悲痛な声でそう叫んだ。

「安心しなよ。こっちも好きでモースを担いでいる訳じゃないさ」

そう言うとシンクは、人々へと振り返った。

「さぁ、邪魔が入ってしまったが、預言(スコア)を望むものはついて来い!」

そして、ルークたちを完全に無視してシンクは歩き出した。
それを追うように人々も歩き出す。

「待ちなさいっ!」

アニスは駆け出し、シンクと人々の間に立ち塞がった。

「退け! 俺たちは預言(スコア)を知りたいんだ!!」
「そうだ! そうだ!!」

だが、正当なローレライ教団の人間であるアニスに対して人々は、そう口々に怒鳴るとアニスを突き飛ばした。

「アニス!」

それをイオンがしっかりと支えた。
それを見たシンクは、フッと笑みを浮かべた。

「……よかったね。まぁ、あのときアッシュがいなければ、確実に死んでたと思うけどね」
「…………」

イオンはシンクの言葉に何も言い返すことなく、ただジッとシンクを見つめていた。

「…………どうして、です」

そう言ったのは、今まで黙っていたアリエッタだった。

「どうしてです、シンク。どうして、こんなことするんです? 兄さまはこんなこと望んでいないです!」
「……アッシュが望んでいようがいなかろうが、もう僕には関係ないよ」
「だけど!」
「うるさいよ!!!!」

アリエッタの言葉にシンクは怒鳴った。

「何も知らないくせに! おまえたちは、ずっとアッシュに守られているくせにっ!!」
「「「「「「「「っ!」」」」」」」」

シンクの言葉にルークたちは言葉に詰まった。
シンクの言う通り、俺たちはいつもアッシュに守られてばかりだからだ。

「僕は、僕のやり方でアッシュを守る。誰が何と言おうとね」

わかってる。
僕のやり方だとアッシュは、心の底から喜んではくれないことは。
だけど、僕に出来ることはこれくらいしかないから。
アッシュを助ける為には……。

「……さぁ、時間が勿体無い。もう行くよ!」

一度ルークを睨みつけてからそうシンクは、言うと今度こそルークたちを無視して人々を引き連れて去っていった。

「アニス、アリエッタ。……大丈夫ですか?」

心配して二人に声をかけたイオンにアニスとアリエッタは小さく頷いた。
その様子を見れば明らかに大丈夫ではないことがわかる。

「……ナタリア。二人を連れて気晴らしにバザーにでも行ってくれ。その間、俺たちは預言士(スコアラー)に気を付けるよう、アスターに伝えておく」
「わかりましたわ。さぁ、アニス、アリエッタ。参りましょう」

ルークの頼みにナタリアは、快く承諾すると二人に優しい笑みを浮かべて手を差し出した。
アニスとアリエッタはその手を取り、市場へと歩いていった。

「あの……ルーク。僕も一緒に行ってもいいですか? 二人のことが心配なので」
「あぁ。二人の傍にいてやってくれ」

イオンの言葉にルークは頷くとそう言った。

「ありがとう、ルーク」

それを聞いたイオンは、ルークにそう言うとすぐさま三人の許へと駆け出していった。

「…………上手いなぁ、ルーク」
「? 何がなの、ガイ?」

苦笑するガイを見てティアは、不思議そうに小首を傾げた。
インゴベルトとアッシュの会話を聞いていないティアだから仕方のないことのだが。

「別に……。二人が落ち込んでいるのは、事実だろうが」
「まぁ、そうだけどなぁ」

溜息をついてそう言ったルークにガイはそう言った。

「とにかく、アスターのところへ行きましょうか」

ジェイドの言葉にルークたちは頷くとアスター邸へと向かうのだった。
























Rainシリーズ第9章第3譜でした!!
ここでシンクとの再会です。
シンクにとって今一番会いたくないのは、アリエッタかもしれないですね。
そして、ルークは、この状況をうまく利用してこれからアスター邸に向かいます!


R.1 7/21



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