何故だ? 何故、アッシュは俺の前に現れないんだ。 最後に聞いたあいつの声が今でも耳から離れない。 またすぐに会えると思っていたのに……。 だが、俺は諦めたくない。 あいつに逢って、そして……。 〜Shining Rain〜 「ご主人様、皆さんのお手紙、読まないんですの?」 無事に港へ行き船に乗ってから数分がたった後にミュウがそう言った。 「ん? 読んでみるか……」 シェリダンに着くまでまだまだ時間はある。 暇潰しを兼ねてルークは一番上にあった手紙、ティアの手紙から読み出した。 『ルークへ 外殻大地が降下したことでユリアシティは一時混乱。このユリアシティとローレライ教団上層部との関連が末端の教団員にも知られ始め、祖父テオドーロが新しい体制作りに奔走中。 兄ヴァンの罪は、既に死亡したこともあって、伏せられて葬儀が執り行われたが、一部の神託の盾騎士団員が教団から離籍し、姿をくらました模様。 アッシュの捜索はされるものの、未だ行方不明。 あの、手紙なんて書いたことないから、おかしかったらごめんなさい』 それを読んだルークは思わず苦笑した。 ティアらしいと言えばティアらしい。 「……これじゃぁ、報告書だろ」 そして、次の手紙を手にした。 次はガイからのだった。 『ルーク、元気にしてるか? 俺はピオニー陛下のご厚意で、グランコクマに屋敷を構えて何とか生活している。一応、俺も貴族なので、貴族院にも顔を出すようになった。 もっとも今の仕事は、陛下の買っている『ブウサギ』を散歩させることでね。使用人っぷりはおまえのところと変わらないぜ。 時々街に出てはアッシュを捜しているが、悪い。まだ見つけられないでいる。 まぁ、暇があったらこっちにも遊びに来てくれよな』 「……ブウサギ…………」 アッシュを何度も下敷きにしたあのブウサギか。 それを引き連れて散歩しているガイの姿を想像して、ルークは思わず噴出しそうになった。 次の封筒に手をつけたとき、ルークは一瞬開くことを躊躇った。 「どうしたんですの?」 「いっ、いや、なんでもにない……」 ミュウの問いにルークは、首を振ると覚悟を決めるようにその少女趣味な封筒を開いた。 差出人は言うまでなく、アニスだ。 『ヤッホー、ルーク! アニスちゃんで〜す♪ って、いうか超退屈だよぅ! 相変わらずイオン様はボヤ〜ッとしてるし。 アリエッタはアッシュ捜しで全然帰って来ないし。周りにはしょぼくれたジジイしかいなし。 アニス、このままじゃ行き遅れちゃう。なので! ルークがどうしてもって言うなら、いつでも公爵夫人になってあげるからね? 旅費を送ってくれた、遊びに行っちゃう♪ 船は、豪華客船『プリンセスナタリア』の特別室でよろしくぅ♪』 「…………」 それだけの内容だが、まさにアニス以外の何者でない手紙だった。 「……相変わらず、目が滑る…………」 元々は俺に対して様付けして呼ぶアニスに呼び捨てでいいと言ったからなんだが……。 そうルークは呟くと手紙を封筒へとしまった。 それぞれ違った手紙だが、共通した箇所がある。 それは、いずれもアッシュが見つけられていないことだ。 本当だったら、俺が捜すべきだったんだ。 被験者とレプリカという繋がりがある俺が。 この一ヶ月でルークは超振動の扱いだけでなく、フォンスロットの繋ぎ方も独自で身に付けた。 アッシュに連絡しようと思えば出来るのだ。 だが、それをルークはしないでいた。 俺と繋がる度に、アッシュは頭にあの強烈は痛みに襲われるのだ。 いくらアッシュを捜す為とはいえ、アッシュを苦しめたくはなかった。 だから、絶対俺からは繋げない。 自分の足であいつを見つけてやるんだ。 「あれから、皆さんどうしてるんですの?」 「ティアは、ユリアシティでテオドーロの手伝いをしている。ガイの奴はジェイドと一緒にグランコクマにいる。イオンは、導師としてダアトにいる、アニスとアリエッタは結局、導師守護役に復職したと聞いている。ナタリアはキムラスカの使者として各地を巡っている」 「皆さん、忙しそうですの」 「……そうだな…………」 ミュウの言葉にルークは海を眺めた。 穏やかな海を見るととてもここが魔界だったとは思えなかった。 世界は預言から外れた。 もう何も心配することなどないはずだった。 しかし、プラネットストームが再び活性化し始めたのだ。 このまま活性化をし続けたら、タルタロスが崩壊する恐れだってあるだろう。 そうなったら、世界は……。 それを想像するだけで、ルークの背筋が凍りつくようだった。 一体、何故プラネットストームは、活性化を始めたのだろう。 そして、プラネットストームが活性化を始めたことをアッシュは、知っているのだろうか。 もし、知っているとしたら、それについてアッシュは、動いているのだろうか。 俺はいつもアッシュの後ろを追いかけてばかりだ。 追いかけても追いかけても、追いつけない。 追いつきたいのに……。 あいつと同じ場所へ行きたいのに……。 いつか、あいつと同じ場所にいけるだろうか。 「……そろそろ、部屋に戻るぞ」 まだまだ船旅は始まったばかりなのだ。 「はっ、はいですの!」 ルークはミュウを引き連れて自分の船室へと戻った。 Rainシリーズ第8章第2譜でした!! ティアたちの手紙を読みふけるルーク。ティアたちが総出で探してもアッシュは見つからないなんて、やっぱ凄いね!アッシュは!! そして、頑張ってフォンスロットの繋ぎ方を習得してもそれを決してやらないルークは本当にアッシュ想いだなぁとか思っちゃいましたww 「じゃぁ、なんで習得したの?」っというツッコミが入りそうですが……; H.26 1/3 次へ |