「ナタリア、よかったの?」
「何がですの?」

アニスの言葉にナタリアは首を傾げた。

「私たちと一緒に来て、よかったの? せっかく、わかり合えたのに……」
「いいんですわ」

アニスの言葉にナタリアは首を振った。

「十数年も同じときを過ごしたんですもの。……もう、血の繋がりなんて関係ないわ」
「ありがとう、ティア。認めてもらうことが、これほど嬉しいことだなんて、わたくし初めて知りましたわ」

ティアの言葉にナタリアは微笑んだ。

「……兄さまも、本当によかったのですか?」

アリエッタはぬいぐるみをギュッと抱き締めてアッシュを見上げた。

「……いいんだ」

アッシュは天を仰いでそう言った。

「……俺にはやるべきことがあるから……」

立ち止まることは出来ない。
全てを終わるその日までは……。






〜Shining Rain〜








「あれ? どうしたの、アッシュ?」

グランコクマの主城にやってきたアッシュは突然動かなくなった。
それに気付いたアニスは首を傾げた。

「……あのさ……ここは、ルークたちだけで行ってきてくれない?」
「おいおい、ここまできて何言ってるんだよ;」
「そうです! 兄さまも一緒に行くです!」

アッシュの言葉にガイは呆れたように言い、アリエッタは必死にアッシュの背中を押した。

「うわぁっ! まっ、待って!! その扉はまだ開けないで!!」

必死にアッシュはそう言ったが、それを完全に無視して主城の入り口をガイが開けた。

「うわぁっ!」
「「「「「アッ、アッシュ!?」」」」」
「兄さま!?」

その途端、動く物体がアッシュに怒涛に降ってきた。
降ってきた物体、それは……。

「ブ、ブウサギ!?」

それは、六匹のブウサギだった。

「みゅううぅぅ。アッシュさんから放れるですの!」

ミュウはアッシュの傍でぴょんぴょんと跳ねてそう言った。

「おお! やっぱり、アッシュか〜♪」

すると、扉の向こうから何やらふざけたような声が聞こえてきた。
それは間違いなく、ピオニーであった。

「ジェイドたちが一斉に走り出したから、もしやと思ってここに来たらビンゴだな♪」
「「「「「「ジェイドぉ!?」」」」」」

ピオニーの言葉にルークたちは見事にハモリ、ジェイドの顔を見た。
それに対して、ジェイドは嫌そうな顔をすると、深く溜息をついた。

「……私ではありませんよ。そこのブウサギです」

ジェイドの言葉にルークたちは納得したように頷いた。

「って、みんな! 少しは助けてくれたっていいじゃん!!」

なんとか、ブウサギの下から這い出たアッシュはルークたちにそう叫んだ。

「アッシュ〜♪」
「うわぁっ!!」

すると、ピオニーはアッシュの背中に抱きついた。

「おっ、お久しぶりです。陛下;」
「なんだよ、アッシュ。俺のことは呼び捨てとタメ口でいいって言ってるだろう?」
「そっ、そんなこと出来ませんよ! あなたはマルクトの陛下ですよ!!」
「つれないなぁ〜、アッシュは; この前来たときには逢いに来てくれなかったし」
「そっ、それは……;」

ピオニーの言葉にアッシュは焦った。

「まっ、いいけどな♪ それにしても、やっぱアッシュは可愛いなぁ〜♪」
「へっ、陛下! いい加減、放してください!!」
「や〜――」
「へーいーかー♪」

ピオニーの言葉を遮ってジェイドはそう言った。
ジェイドの顔は笑みを浮かべているが、かなり怖い。
そして、何故かルークとガイからも何やら殺気らしいオーラが漂っている。
それに、ピオニーはビビリ、アッシュを解放する。

「はっ、話があるんだろ; 謁見のまで聞こう;」

そう言うとピオニーは謁見の間へと歩き出した。
だが、すぐに何かを思い出したのか、足を止めた。

「ああ、そうだ。アッシュは俺の膝の上な♪」
「陛下、いい加減にしてくださいね♪」
「……はい、ごめんなさい;」

今にもこちらに向かって槍を飛ばしそうな笑みのジェイドにピオニーは焦ってそう言うのだった。
それにアッシュはただ苦笑いするだけだった。





















「……そうか。漸くキムラスカが会談をする気になったか」

先程まで様子とは打って変わって、ピオニーは重々しくそ呟いた。

「陛下」

ナタリアは前に出て、その両手を胸の前で組み合わせた。

「キムラスカ・ランバルディア王国を代表してお願いします。どうか、我が国の狼藉をお許しください。そして、改めて平和条約の――」
「ちょっと、待った。自分の立場を忘れてないか?」

ピオニーの言葉にナタリアは首を傾げた。

「あなたがそう言っては、キムラスカ王国が頭を下げたことになる。書記官、今のナタリア王女の発言の削除を。……止めないのも人が悪いな、ジェイド」
「おや? バレましたか」

それにジェイドは人の悪い笑みを浮かべた。
ピオニーは呆れたように苦笑した。

「……ここは、ルグニカ平野戦の終戦会議という名目にしておこう。で? 導師。和平会談は何処でするのかね?」
「本来なら、ダアトなのでしょうが……今はまずいですね。モースの息のかかっていない場所が望ましい」

イオンの言葉にアニスは困ったように唸った。

「……ユリアシティなんてどうかな?」

すると、そうアッシュが口にした。

「どうかな、ティア?」
「えっ? でも、魔界(クリフォト)よ? ……いいのかしら?」
「だからだろ。あそこなら、モースの手は伸びてはいない。そうアッシュは言いたいんだろう?」

ルークの言葉にアッシュは頷いた。

「うん。それに、魔界の状況を知ってもらったほうがいいと思うんだ。外殻を下ろす先は魔界(クリフォト)だし」
「確かに、悪くないですね。――陛下、魔界(クリフォト)の街へご足労いただけますか?」
「ケテルブルクに軟禁されてたことを考えりゃ、何処でも天国だぜ。行ってやるよ」

ピオニーは迷うことなくそう返答した。

「あの、ひとつ提案してもいいですか?」
「なんですか、イオン様?」

イオンの声にジェイドは視線をイオンへと向けた。

「平和条約締結の際、キムラスカとマルクト、そしてダアトも降下作戦について了承できます。ですが、ケセドニアは自治区であって、国家でないために蚊帳の外です。本来ならそのような権限がないことはわかっていますが、アスターも立ち合せてやれませんか?」
「いいじゃないか?」

イオンの提案にアッシュはあっさりとそう言った。
それにルークも頷いた。

「そうだな。成り行きとはいえ、外殻を降ろすことを最初に認めてくれたのはあの人だしな」
「よし! なら、まず俺たちはケセドニアに行く。俺たちがアスターと話す間に、ノエルとギンジには陛下たちをユリアシティへと運んでもらおう。それなら、多少は次官の無駄にならない。――どうだ?」

ガイの言葉に反対する者はいなかった。

「みなさん。ありがとうございます!」

イオンはそう言うと、アッシュたちに笑みを浮かべた。

「では、陛下。後日、改めて迎えに来ます」
「おう! 頼んだぞ」
「では、失礼します」

ピオニーの言葉にアッシュたちは一礼をすると、謁見の間を後にした。

「うわぁっ!!」
「「「「「アッシュ!?」」」」」
「兄さま!?」

扉を開けた途端、アッシュがブウサギに埋もれたのは言うまでもなかった。
























Rainシリーズ第7章第3譜でした!!
ピオニー陛下再び登場ww
何気にピオニーにアッシュと絡ませるのが好きですww
そうすると、絶対ジェイドの素敵な笑み(?)が見られると思うしww
ブウサギに潰されるアッシュ。可愛いですwwww


H.24 12/22



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