タルタロスが振動を始めた。 ルークたちは姿勢を低くして放り出されないように気をつけた。 「いけません。もう時間がない!」 ジェイドはそう言うと、槍を消して立ち上がった。 「シンクに消された譜陣は私が描き直します。ですが、これ程の規模だとかなり集中力がいる。ルーク、ティア、協力してください」 「どうすればいい?」 「私はここで全身のフォンスロットを開いて、音素の塊を生成します。ティアは甲板に残っている譜陣の痕跡をもとに、指示を出してください」 「はい」 ジェイドの言葉にティアは頷いた。 「ルークはミュウの炎を利用してその塊を移動させてください」 「わかった」 「では、始めます」 ルークの返事を聞くとジェイドは、全身のフォンスロットを開いた。 〜Shining Rain〜 「……何とか描けたな」 ティアの指示のもと、ルークはジェイドが生成した音素の塊をミュウの炎を使って動かした。 そして、それが何とか上手くいってルークは息をついた。 「ええ。……では、アルビオールへ」 「ああ……」 ジェイドの言葉にルークは頷き、アルビオールへ乗り込もうとした。 そのとき、 ズキン 「くっ……!」 ルークは頭に今まで感じたことのない、激しい痛みに襲われた。 その痛みにルークは思わず膝を折った。 ――――…………じるか。 そして、頭の中に男の声が反響する。 アッシュとは違う、低い男の声が……。 その声が頭の中で反響する度に頭が割れそうな痛みが来る。 ――――……感じるか? この痛みを。おまえと回線を繋ぐときにいつも感じている、彼の痛みが……。 (!?) 男の言葉にルークは目を見開いた。 男の言う彼が誰のことかはっきりとわかる。 アッシュだ。 アッシュがいつもこんな痛みを感じていたのか……。 だが、この声が主は、一体誰なんだ? 「ルーク! どうしましたの、しっかりなさい!!」 「待って、今すぐ治癒譜術をかけてみるわ!」 ナタリアとティアの慌てたような声が遠くで聞こえる。 そして、辺りに美しい旋律が響き渡ると、少しだけ痛みが和らいだ。 ――――……ユリアの譜歌か! ユリアの血縁が、余計なことを!! それに何処か悔しげな声で男は言った。 ――――……仕方ない、また借りるか……。 そう男の声が響いた瞬間、すうっと痛みが引いていった。 ルークはティアへと視線を上げると、目を見張った。 ティアは淡い光に包まれて、瞳の色はサファイヤブルーではなく、自分と同じ翡翠になっていた。 「……おまえ……誰だ?」 『ほぉ? 満更馬鹿ではないようだな』 ルークを見つめたティアは薄く笑った。 『我はおまえと同位体。人は、我をローレライと呼ぶ』 「……第七音素の集合体!?」 ジェイドは驚いたようにティアを見た。 『……≪聖なる焔の光≫よ』 そんなジェイドを無視し、ティアは――ローレライはルークに向かい合った。 そして、 パン ローレライがルークの頬を思いっきり叩いた。 その力は女性のものとは、とても思えなかった。 「……っ! ……何しやがる!!」 『おっと、すまんな。ちょっと、手が滑った』 ルークがそう言うと、ローレライは爽やかな笑みを浮かべてそう言った。 (……絶対、わざとだ!!) その笑みを見れば誰だってそう思うだろう。 『……まったく、彼はこやつの何処がいいのだろうか?』 ジーっとルークを見つめてから、ローレライは溜息をついてそう言った。 「なんだと?」 『言葉通りの意味だが……なんか文句でもあるか?』 ルークの言葉にローレライは、人を小馬鹿にしたような物言いでそう言った。 それに対して、ルークはキレそうになったが、ガイに宥められた。 『さて、そろそろ戻るか。あまり長くここに留まると、彼女に負担が掛かるからな』 それを知ってか知らずか、ローレライは呑気な口調でそう言った。 『……≪聖なる焔の光≫よ。これだけは、はっきりと言っておく』 「……なんだよ」 自分を見つめるローレライにルークは睨みつけた。 『……我は、おまえが嫌いだ』 「はぁ!?」 『では、さらばだ』 「おっ、おい! ちょっと待て!!」 ルークはそう言ったが、ティアの身体を包んでいた光が消え、ティアはまるで糸が切れた人形のように倒れた。 それを咄嗟にルークは支えた。 「ティア! 大丈夫か!?」 ルークの声にティアの瞼がゆっくりと上がった。 「……眩暈が……私、どうしちゃったの……?」 何が起こったのかわからなかったのか、ティアは不思議そうにルークに尋ねた。 「その話は後で。ここは危険です。とにかく、今はアルビオールへ移動しましょう」 それにジェイドがそう言うと、ティアが立ち上がるのを手伝った。 ジェイドの言葉に皆頷き、ルークたちは急いでアルビオールに乗り込んだ。 全員が座席に着いたのを確認して、ノエルはアルビオールを発進させた。 着陸脚が離れると同時に、甲板に描かれた譜陣が発動する。 直後、一気にアルビオールは地核を抜けた。 「……何とか、間に合いましたね」 長い溜息をついた後、ジェイドはそう言った。 「……ティア、身体は大丈夫か?」 「ええ……今は落ち着いているわ」 ルークの問いにティアは、頷いてそう答えた。 「でも、心配ですわね。突然、ローレライを名乗る何かに身体を奪われたんですもの」 「あの野郎……ムカつく!!」 心配そうにそう言ったナタリアの言葉にルークは唇を噛んでそう呟いた。 「……? どうしたの、ルーク?」 そんなルークの様子を見て、ティアは不思議そうに首を傾げた。 「まぁ、いきなり平手打ちをされて、その上自分のことが嫌いだと言われたら、腹が立ちますでしょうね」 「えっ!? 私、そんなことしたの!? ごめんなさい、ルーク」 「いや……。あれは、ティアが悪いじゃない。……悪いのは、あの野郎だ!!」 申し訳なさそうに謝ったティアに、ルークはそう言った。 それにガイたちは思わず苦笑した。 「……まぁ、とにかく一度シェリダンへ向かいましょう。アッシュと合流しなければいけませんし」 ジェイドの言葉に皆頷く中、一人ルークは俯いた。 自分に助けを求めるあの声を思い出して……。 「……どうした、ルーク?」 「いや……何でもないさ」 ガイの問いにルークは首を振ってそう言った。 あれが幻聴であって欲しいと今でも思っている。 シェリダンに行けば、またあの笑顔で迎えてくれること望んでいるのだ。 そんな気持ちを胸に秘めたまま、ルークはシェリダンに向かうのだった。 Rainシリーズ第7章第10譜でした!! わ〜い!ルークとローレライの初対面だ!! ですが、上手く書けなかった!?もっと、喧嘩腰で二人を描きたかったのに!!(>_<) 何ですか、この中途半端なものは!! 自分の文章力のなさに泣いてしまいそうです(ノ△T) H.25 6/15 次へ |