「皆さん! どうして、ここに……?」 図書室へと向かったルークたちは、そこでイオンの姿を見つけた。 ルークたちの姿を見たイオンは驚いた様子で座っていた椅子から立ち上がった。 「すごいです! 兄さまが言っていた通りです!!」 「でも、どうしてここにイオン様がいるとわかったの?」 「そ、それは……」 再び、同じような質問をされたアッシュは困ったような顔をした。 「……二年前からヴァンがイオンとは接触するなって、言ってきたから。……イオンの一日の行動パターンを頭に叩き込まれて……」 「「「「「「…………」」」」」」 アッシュの言葉にルークたちは返す言葉をなくした。 「あっ! でも、そのおかげで、イオンに会えたんだし……俺自身そんなに気にしてないから!!」 そんなルークたちの様子を見て、アッシュは慌ててそう言った。 「そ、そうだ、イオン! ユリアの預言にはセフィロトの暴走は詠まれたなかったのか?」 「……どういうことです?」 「それについては私から説明を……」 ジェイドはそう言うとイオンに今まで起きたこと、知り得たことを全て話した。 「……なるほど、そんなことがあったんですね。実は、僕がダアトに戻ったのは秘預言を全て理解するためだったんです。でも……秘預言にはセフィロトの暴走は詠まれてなかったはずです」 「えっ!? マジですか! イオン様!!」 驚いてそう言うアニスにイオンはコクリと頷いた。 「ええ。……ですが、念のために礼拝堂の奥へ行って調べてみましょう」 それを聞くとアニスとアリエッタの表情が一変した。 「!? イオン様! それはお身体に障りますよぅ!!」 「そうです! また、倒れたら……っ」 「止めないでください、アニス、アリエッタ。必要なことなのですから。……行きましょう」 イオンはそう言うと先立って歩き出した。 ルークたちは、それに従って礼拝堂へと歩き出した。 〜Shining Rain〜 「この譜石は第一から第六までの譜石を加工したものです」 礼拝堂に置かれている巨大なテーブルのようなものの前に立ったイオンはそう言った。 「導師は譜石の欠片からその預言を全て詠むことが出来ます。ただ、量が桁違いに多いので、ここ数年の崩落に関する預言だけを抜粋します」 そう言うとイオンは譜石へと手を伸ばそうとした。 「……イオン」 アッシュはイオンの手を掴み、それを遮った。 アッシュの翡翠の瞳が心配そうに揺れていた。 「大丈夫ですよ、アッシュ。これは僕にしか出来ないことですし、それに……僕はアッシュのお役に立ちたいんです」 「…………」 イオンの優しい笑みを向けられたアッシュはイオンの手を放すしかなかった。 イオンは、今度こそ譜石へと手を伸ばし、瞳を閉じた。 イオンの手が譜石に触れた途端、譜石が輝きだした。 「……ND2000。ローレライの力を継ぐ者、キムラスカに誕生す。其は王族に連なる赤い髪の男児なり。名を≪聖なる光の焔≫と称す。彼はキムラスカ・ランバルディアを新たな繁栄へと導くだろう……」 息をつき、イオンはさらに続けた。 「ND2002。栄光を掴む者、自らの生まれた島を滅ぼす。名をホドと称す。この後、季節が一巡りするまで、キムラスカとマルクトの間に戦乱が続くであろう……」 ホドという言葉が出た途端、ガイの表情が微かに硬くなったのがわかった。 「ND2018。ローレライの力を継ぐ若者、人々を引き連れ鉱山の街へと向かう。そこで若者は力を災いとし、キムラスカの武器となって街と共に消滅す。しかる後にルグニカの大地は戦乱に包まれ、マルクトは領土を失うだろう。結果、キムラスカ・ランバルディアは栄え、それが未曾有の繁栄の第一歩となる……」 譜石の輝きが消え、力尽きたようにその場にへたり込むイオンをアッシュが支えた。 「「イオン様!」」 アニスとアリエッタは慌ててイオンに駆け寄った。 「……これが、第六譜石の崩落に関する部分です」 息絶え絶えにイオンはそう呟いた。 「やっぱり、アクゼリュス崩壊と戦争のことしか詠まれてないな。……もしかしたら、セフィロトの暴走は第七譜石に詠まれているのかもしれないぜ」 イオンの言葉にガイはそう言った。 「……でも、おかげでわかったことがあるよ」 静かなアッシュの声が辺りに響いた。 「……ユリアの預言には俺が……レプリカの存在が抜けている。……俺が生まれたことで、もう世界は――」 「見つけたぞ、鼠め!」 アッシュの言葉を聞き終わる前に扉が開かれ、多数の神託の盾兵たちが雪崩れ込んで来た。 そして、ルークたちはあっという間に神託の盾兵たちに取り囲まれてしまった。 「こんなところまで入り込みおって……」 神託の盾兵の後ろからゆっくりと現れたモースは苦々しげにそう言った。 「いずれ見つかるとは思いましたが。……これだけの兵、準備がいいことですね♪」 ジェイドは皮肉めいた笑みを浮かべてそう言うと、モースに気付かれないように譜術の準備にかかった。 「大詠師モース! もうオールドラントはユリアの預言とは違う道を歩んでいます! その原因を探り……」 「黙れ、ティア!」 前に進み出たティアにモースは聞く耳を持たなかった。 「第七譜石を捜索することも忘れ、こやつ等と馴れ合いおって! いいか! ユリアの預言通りにルークが死に、戦争が始まれば、その後繁栄が訪れるのだ!!」 「………行きますよ」 ジェイドは小さくそう呟いた。 術の発動準備が整ったのだ。 それにルークは頷き、剣を握ろうとした。 そのとき、 「抵抗はお止めなさい、ジェイド!」 扉からゆっくりと現れたディストの声にその動作が止まる。 「さもないと、この女の命はありませんよ?」 ディストがそう言うと空中から椅子が降りてきた。 その椅子には後ろ手に縛られたノエルが気を失って座っていた。 「くそっ!!」 ルークは唇を噛み締めた。 ジェイドも溜息をついて、譜術を解除した。 「ハーッハッハッハッ! いいザマですね、ジェイド!!」 その様子を見たディストは嬉しそうに笑ってそう言った。 「お誉めいただいて光栄です♪」 「誰も誉めていませんよ!」 笑ってそう言うジェイドにディストは怒鳴った。 「……俺たちをどうするつもりだ!!」 ルークはモースを睨みつけ怒鳴った。 「バチカルに連れて行く。戦争再開のために、役立ってもらうぞ」 モースはそう言うと不気味な笑みを浮かべた。 そして、モースの指示によってルークたちは神託の盾兵たちによって拘束された。 「連れて行け!」 「ちょっ、ちょっと、待った! アッシュは私が預かります!!」 ルークたちと一緒にアッシュを連れて行こうとするモースにディストはそう言った。 そして、そのままアッシュを自分のほうへと引き寄せた。 「……あなたをヴァンの元へと連れて行かないといけませんし、それに…………」 アッシュの顔を見たディストの顔が真剣なものへと変わった。 「……一度、身体を診るべき、みたいですし」 「…………」 そのディストの言葉にアッシュは何も言わずに、視線を逸らした。 そして、アッシュはルークたちと引き離されてバチカルに向かうのだった。 Rainシリーズ第6章第7譜でした!! いや〜。せっかく、アッシュとルークが一緒に行動しているのに、また離れ離れになったし; 何するじゃい!外野よ!! そして、ディストが意味深な発言を!! 次回はアッシュとディスト、ローレライの絡み中心ですvv H.23 1/16 次へ |