「あっ! みんな! 思っていたより、早かったね♪」

砂漠のオアシスに着いた途端、ルークたちはアッシュの温かい笑みに目を奪われるのだった。






〜Shining Rain〜








「アッシュさん。お久しぶりです!!」

ルークたちと共にアルビオールから降りたノエルはアッシュを見て笑みを浮かべた。

「あっ! ノエル! 久しぶり〜♪」

それにアッシュも笑みを浮かべて返した。

「ところで、アッシュさん。アルビオール三号機の姿がありませんけど、兄さんとは一緒じゃなんですか?」
「えっとね……それは……」

ノエルの問いにアッシュは苦笑した。

「オアシスまでは一緒だったんだけど、着いた途端イエモンさんから連絡が入って、シェリダンに戻っていったんだ」
――――すみません、アッシュさん! 本当にすみません!!

と、半ば半泣き状態であのときギンジは何度も頭を下げたのだった。
俺は気にしなくても言いと言ったのに;

「……なるほど。そういう訳だったんですね」

それを聞いたジェイドは納得したように頷いた。

「……では、急いで外殻大地に戻りましょう。……少し確かめたいこともありますし」
「……うん、わかった」

ジェイドのその一言だけでアッシュは理解できた。
セフィロトの暴走、それをジェイドは確かめたいことを……。





















「……あのセフィロトツリー、おかしくないか……?」

泥の海から吹き上がる黄金の光の奔流、セフィロトツリーを見てガイはそう言った。

「眩しくなったかと思ったら、消えかかったり……切れかけの音素灯(フォニムとう)みたい……」
「……やはり、セフィロトが暴走していましたか。……パッセージリングの警告通りだ」

アニスの呟きを聞いたジェイドは息をついた後そう言った。

「セフィロトの、暴走……ですか?」
「ええ。恐らく何らかの影響でセフィロトが暴走し、ツリーが機能不全に陥っているのでしょう。最近地震が多いのも崩落のせいだけではなかったんですよ」
「ま、待ってください! ツリーが機の不全になったら、外殻大地はまさか……」

そう言ったティアの声はひどく震えていた。

「……パッセージリングが耐用限界に到達、と出ていました。おそらく、セフィロトが暴走したためでしょう。パッセージリングが壊れれば、ツリーも消えて外殻大地は落ちます。……そう遠くない未来にね」
「「「「「「!?」」」」」」

ジェイドの言葉にアッシュを除いて皆、愕然とした。

「ユリアシティの奴らは、そのことを知っているのか?」
「お祖父様は、これ以上外殻は落ちないって言っていた……知らないんだわ!」
「なぁ、セントビナーもケセドニアも、セフィロトの力で液状化した大地の上に浮いているんだよな? なら、パッセージリングが壊れたら……」

恐る恐るそう言ったガイにジェイドは頷いた。

「泥の海に呑み込まれます。液状化した預言(スコア)の大地が固形化でもするなら話は別ですが……。そもそも、障気の汚染と液状化から逃げるために外殻大地を作ったのでしょう? 外殻大地を作った人々ですら大地を液状化に対して何も出来なかったのに、希望は薄いでしょうね」
「「「「「「…………」」」」」」

ジェイドの言葉を聞いて今度こそルークたちは黙り込んだ。
もう、どうすることも出来ないのだろうか。

「…………なぁ、ティア」

すると、さっきまでルークたちのやり取りを静かに見ていたアッシュがその沈黙を破った。

「ユリアの預言(スコア)には、セフィロトの暴走は詠まれていないのかな? 暴走するには何か理由があるはずだし、対処方法とか預言(スコア)にないのかな?」

あのとき、自分が言ったことを思い出しながら、そうティアに問いかけた。

「残っているとしても、祖父では閲覧できない機密情報なんだと思うわ……」

すると、ティアはあのときと同じ台詞をアッシュに言った。

「……イオン様なら…………」

ポツリと、そう呟いたのはアニスではなく、アリエッタだった。

「イオン様なら……ユリアシティの最高機密も調べることが出来ると思う、です!」
「本当か!?」
「そうだよ! だって、イオン様は、導師だし!!」

アリエッタの言葉を補うようにアニスは言った。

「だったらダアトに向かおう。何か対処方法があるかもしれない」
「でも、ルーク」

ルークの提案に少し躊躇ったよな声でナタリアは言った。

「……戦争を止めるためにバチカルへ行くというのはどうしますか?」
「たぶんだけれど、戦場が魔界(クリフォト)に降下したのなら、今はもう戦争どころではなくなっていると思うわ」

不安そうなナタリアを気遣うようにティアはそう言った。

「……そうだとよろしいのですけど……」
「大丈夫だよ、ナタリア。伯……陛下だったら、ちゃんとナタリアの声は届くはずだよ。だから……信じて」
「アッシュ……。はい、わかりましたわ」

アッシュの言葉に小さく頷くと、ナタリアは明滅するセフィロトツリーを静かに眺めたのだった。





















「…………なぁ、ジェイド」
「なんですか?」

ダアトに向かうアルビオールの中、ガイはジェイドに話しかけた。
それにジェイドは眼鏡についた汚れを拭き取りながら答えた。

「……あいつには、この世界はどう映って見えるんだろうな」

あいつとは誰か。
そんなこと聞かなくてもすぐにわかった。
ガイの視線の先にいる、アニスとアリエッタに囲まれて苦笑を浮かべる夕焼けのように赤い長髪の少年であることが……。

「……さぁ、どう映っているんでしょうね? ……少なくとも私は彼に、恨まれてもおかしくないことをしましたし……」

レプリカを創り出す技術。
フォミクリーを考案したのは紛れもまく自分。
それによってアッシュは、ルークの代わりに死ぬために作られた。
私は彼に恨まれても仕方ないのだ。
なのに……。

「ジェイド〜、ガイ〜」

二人の元にアッシュが駆け寄ってきた。

「アニスとアリエッタの喧嘩を止めてくれよ。俺だけじゃ、あれは無理だよ;」

アッシュは指差しながらそう言った。
その先にはさっきより険悪なムードなアニスとアリエッタの姿があった。

「……アッシュ。おまえ、何かしたのか?」
「俺は、何もしてないよ!」

ガイの言葉にアッシュは意味がわからない、といった感じで反論した。

「と、とにかく! 二人を止めるのを手伝ってよ!!」
「わ、わかったら、そんなに引っ張るなよ!」

アッシュはガイの腕を取るとさっさと歩き出した。
それによって、ガイはアッシュに引き摺られる形で歩くことになった。

「…………本当に、彼にはどう映っているんでしょうね」

おそらく、アッシュはずっと前から私がフォミクリーの考案者だと知っていただろう。
それなのに……。

「ほら! ジェイドも早く来てよ!!」

彼は私に笑顔を向けてくれる。
私には眩しすぎるくらいの暖かな笑みを……。

「……はい、わかりました」

ジェイドはフッと笑みを浮かべると、ゆっくりとアッシュの元へと歩み寄った。
























Rainシリーズ第6章第5譜でした!!
いや〜、今回はジェイド絡みが大目ですねww
ずっと前からジェイドがアッシュに気があるのは書いてありましたけど、(グランコクマ辺りとか)
ちゃんと書きたかったのでww
あと、アニスとアリエッタの喧嘩は絶対アッシュ絡みだと思いますww


H.22 5/15



次へ