「ありがとうな、ローレライ!」 バチカルの街の入り口、そこにいたアッシュはいた。 彼が話しかけた相手は燃えるような紅い長髪に翡翠の瞳の男。 アッシュと完全同位体である、ローレライだった。 〜Shining Rain〜 『……まったく、そなたはいつも我を冷や冷やさせるのだな』 少し呆れたようにローレライは言った。 「いいじゃんか! 今回はちゃんと呼んだんだからさ!!」 謁見の間で神託の盾兵に取り囲まれたとき、アッシュは小さな声で呟いた。 例えどんなに小さな声でもアッシュの己を呼ぶ声はローレライの耳には届くのだ。 『…………まぁ、それもそうだが……』 何処かに呆れたようにローレライは溜息まじりでそう言った。 それに不満そうにアッシュは眉を吊り上げた。 「……なんだよ、その言い草は」 『……それより、ルーク。そなた、急がなくていいのか?』 それにローレライは目を泳がせてそう言った。 「あっ! そうだよ!! 早くベルケンドに行かなくちゃ!!」 ローレライの言葉にアッシュは慌てたようにカバンからカプセルを取り出した。 透明なカプセルを中へと放り投げるとポンと音をたてて煙が立ち込めた。 その煙が風で散るとそこから現れたのは一人か二人くらい乗れそうな足場に純白の翼が着いた機械だ。 「すげぇ……」 その機械を見たルークは思わず感嘆の声を上げた。 自分はそれほど譜業オタクではないが、きっとガイに見せたら大喜びしそうだ。 そして、アッシュは機械に乗り込もうとした。 そのとき 「うわっ!?」 『ルーク!!』 突如、急発進した機械にアッシュの身は投げ出された。 だが、それをローレライが優しく受け止めた。 『……ルーク。そなた、これの取り扱いの書いた紙を呼んだのか?』 「いや、全然」 ローレライの問いにアッシュはケロッとした顔でそう言った。 『……ルーク。あれほど、読めと言ったのに……;』 「仕方ないだろう。読む暇がなかったんだからさ!」 『……仕方ない。乗り方を教えるから、そう喚くな』 「なっ、なんだよ! その言い草は!!」 『返・事・は?』 「……よろしくお願いします」 ローレライの笑みに少し恐怖を覚えつつ、アッシュは頷いた。 そして、アッシュはローレライに機械の使い方を教わるのだった。 「……やっと、一段落したし;」 シェリダンに到着し、一段落したアッシュは溜息をついた。 あれから、ローレライに小型飛行譜業機械の使い方を終わった。 「ってか、アレを乗るのに筆記試験するだなんて、ありえねぇし!」 使い方自体は一日でマスターしたのだが、突然ローレライが試験を作ったのだった。 飛行譜業機械なんて三機しかいないのに試験をする必要があるのか、っとアッシュは言ったがローレライは聞く耳を持たなかった。 そして、ローレライから許可をもらうのに五日もかかってしまったのだ。 その後すぐにベルケンドに向かったアッシュだが、ルークたちはダアトに向かった後だった。 アッシュはスピノザのことを思い出し、ヘンケンと共にシェリダンに向かったのだ。 「あっ! そうだ!! ルークたちに知らせないと……」 思いついたようにアッシュは声を上げると意識を集中させた。 頭の中でキィンと高い音が鳴る。 「……ルーク。……聞こえる?」 ――――……アッシュか? アッシュがそう言うと、声が聞こえてきた。 俺より少し低く、聞き慣れた声が……。 「今……何処にいる?」 ――――今はダアトだが、もうすぐベルケンドに向かう。 「まっ、待って! 今、ベルケンドに行ってもヘンケンさんたちはいないよ!!」 ――――……どういうことだ? アッシュの言葉にルークは不思議そうにそう言った。 「俺とヘンケンさんたちは今シェリダンにいるんだ。だから、ヘンケンさんたちに用があるんだったら、こっちに来て!」 ――――……わかった、今からそっちに行く。 「……うん。……待ってる」 そう言うとアッシュはルークとの回線を切った。 「兄さま!!」 そう言って、泣きそうな顔でアリエッタがアッシュの胸に飛び込んだのはそれから数日後のことだった。 「兄さま! アリエッタ、すごく心配した、です。何処もケガとかしてないです?」 「大丈夫だよ、アリエッタ。心配してくれてありがとう」 それにアッシュは笑って答えた。 「……ですが、何故アッシュは彼らとここにいるのですか?」 眼鏡の位置を直しながらジェイドはアッシュに問いかけた。 「……実は、今ルークたちがやろうとしていることをスピノザがヴァンに漏らしたみたいなんだ」 「じゃぁ、やっぱりあのときの会話を聞かれたのか……」 アッシュの言葉にルークは苦々しげにそう言った。 「だから、あのままヘンケンさんたちをベルケンドにおいといたらまずいと思って」 「ちょっと、待ってください。アッシュ、あなたいつ地核静止の計画のことを知ったのですか? 私たちはそのことを話した覚えはないのですが?」 アッシュの言葉にジェイドは眉を顰めてそう言った。 「それは、ヘンケンさんたちから聞いたよ。第一、創世暦時代の歴史書をジェイドに渡したのは、俺だぜ」 内心焦りつつ、アッシュは冷静を装ってそう言った。 「……それも、そうでしたね」 それに対して、ジェイドは納得したようにそう言った。 「ところで、ルークたちこれからどうする?」 「私たちはこれからタタル渓谷に向かうの。そこで、地核の振動数を測定するつもりよ」 アッシュの問いにティアは優しく答えた。 「そっか……。だったら、俺も一緒に――」 「それはダメじゃっ!」 アッシュの言葉をヘンケンが遮った。 「アッシュ、おまえさんには、こっちを手伝ってもらいたいじゃよ。こっちはたださえ、人手が足りんのじゃからな」 「わっ、わかりました……」 ヘンケンの言葉にアッシュは少し残念そうに言った。 「だったら、ボクもアッシュさんとここにいるですの〜♪」 ぴょんぴょんと大きな耳を弾ませながらミュウはそう言った。 「だーかーら! おまえがいないと、セフィロトの仕掛けの解除が面倒だって言っているだろうが!!」 「みゅううぅぅ……」 思わず怒鳴ったルークに対して、ミュウはビクッと震えた。 (ミュウ。学習しろよ;) そして、それをアッシュは苦笑いを浮かべるしかなかったのだった。 Rainシリーズ第6章第11譜でした!! ローレライ、アンタ何がしたいんだい? たぶん、おそらく、きっと、アッシュ&ルークに対しての嫌がらせだろうけど。 そのせいで、アッシュはスピノザを捕まえることが出来なくなったし; ルークの邪魔はしていいけど、アッシュの邪魔はすんなよ!!(それも微妙に間違ってる;) H.23 9/1 次へ |