「みんな、無事?」 「ええ。見ての通りです♪」 アッシュの問いにジェイドがさわやかな笑みを浮かべてそう答えた。 そのとき、大地が激しく揺れた。 〜Shining Rain〜 「きゃっ! また、地震!?」 激しい揺れにアニスは体勢を崩した。 その方向にガイが立っていたが、アニスを支えることなく避けたため、アニスは地面へと尻餅をついた。 それが原因とは言い切れないが、地面に亀裂が走った。 「まずいわ。崩落が始まったわ!」 「ヤバイぞ。まだ、全員避難し終わってないんだぞ」 ガイの言うとおり、セントビナーの人々はまだ全員避難していないのだ。 しかも、かなりの人数がまだ街の中にいた。 「ノエル! ギンジ!!」 アッシュは空に向かって叫んだ。 すると、セントビナー上空を旋回していた二機の譜業機械が崩落し始めた大地へと着陸する。 そして、すぐにタラップが下ろされた。 「……アッシュ。これは、もしかして…………」 「ああ。シェリダンで飛行実験で完成した、譜業機械『アルビオール』だよ」 イオンの言葉に頷いたアッシュはそう言った。 「詳しい説明をしている暇はない。今はセントビナーの人たちを避難させないと……」 「……そうですね。話は後でゆっくり聞かせていただきます」 全てを見透かしているのではないかと思うようなジェイドの血のように赤い瞳がアッシュの翡翠の瞳を見つめた。 それに思わずアッシュは苦笑した。 そして、すぐに顔を引き締め、人々のほうへと振り向いた。 「皆さん! 時間がありません! 慌てずに二手に分かれて、アルビオールに乗ってください!!」 アッシュの言葉をきっかけにルークたちは作業を再開した。 「……これで終わりだな」 一息ついてルークはそう言った。 二手に分かれて人々をアルビオールへとルークたちは誘導した。 そして、やっと今最後の一人をアルビオールへと乗せ終わったところだった。 「ありがとう、アッシュ。あなたのおかげで助かったわ」 「いや。俺は何もやってないよ。ティアたちが頑張ったからだよ」 ティアの言葉にアッシュは微笑んだ。 そして、ティアから視線が離れるとアッシュの表情が硬くなった。 「……俺たちもアルビオールに乗ろう。もう少しでディバイディングラインを超えそうだし」 アッシュの言うとおり、こうしている間にもセントビナーはゆっくりと確実に魔界へと落ちていた。 ルークたちはアルビオール二号機へと急いで乗り込んだ。 アッシュを先頭にコックピットへと向かった。 すると、そこには長い桃色の髪の少女がいた。 「ゲッ! なんで、根暗ッタがここにいるわけ!?」 アリエッタの姿を見たアニスは心底驚いたような声を出した。 「アリエッタ、根暗じゃないもん! アニスの意地悪〜〜!!」 アニスの反応にアリエッタはぬいぐるみをギュッと抱き締め、泣きそうな顔でそう言った。 「アニス。アリエッタをいじめるなよ;」 「ぶ〜〜〜っ!」 「……しかし、何故アリエッタがここに? 彼女は六神将ですよ」 ジェイドがアリエッタを見つめると、アリエッタの肩はブルッと振るえ、アッシュの背に隠れると何故かジェイドを睨みつけた。 「……ジェイド。俺も一応六神将なんですけど?」 「……ああ、そうでしたね。私としたことがすっかり忘れてました♪」 「…………」 ジェイドの笑みにアッシュは溜息をついた。 「……俺も、アリエッタも敵じゃないよ。……俺はヴァンの計画を止めたいから」 そうアッシュが言ったとき、外から物凄い音が聞こえてきた。 アッシュは外へと視線を向けた。 セントビナーが加速度をつけて崩壊した。 魔界の泥の海へと大地が落ちるのに数分もかからずに。 その光景はあのとき見たものとまったく同じだった。 「……空から見る魔界は、また一段と凄まじいものですね」 ジェイドの声が静かに辺りに響いた。 「…………一体、セントビナーはどうなってしまうのでしょう?」 「……今はまだ泥の海に浮いているけど、このまま暫くすると、マントルに沈むと思う」 ナタリアの問いにティアは平坦に答えた。 「そ、そんな! なんとかならないのですか!?」 「今回は、ホドが崩落したときの状況によく似ているわ。そのときは結局、一ヵ月後に大陸全体が沈んだから……」 辺りに重い空気が漂う。 もうセントビナーを救うことは出来ないのだろうか。 「…………ひとつだけ、方法がある」 そこにアッシュの静かな声が響いた。 「本当なのか? アッシュ」 ルークの言葉にコクリとアッシュは頷いた。 「……ああ。でも、その前に一度セントビナーの人たちをユリアシティに連れて行ったほうがいいかもしれない。預言が外れた今だったら…………」 「お祖父様も協力してくれるかもしれないってこと?」 アッシュの言葉に続けてそう言ったティアにアッシュは頷いた。 「……そうですね。一度ユリアシティに行っておきますか」 こうして、アルビオールはユリアシティへと向かって飛び始めた。 アッシュは大きな溜息をついた。 その原因は、自分の周りで繰り広げられるジェイドの行動の為だ。 ジェイドが動く度にアッシュの身体で身を隠しているアリエッタが動くのだ。 そのアリエッタの行動を面白がって、さらにジェイドが動く。 正直言ってかなりウザイ。 「……いい加減、アリエッタで遊ぶなよ、ジェイド;」 「おや、失礼ですね。私は彼女とお近づきしようかと思ってやっているのですよ♪」 その状況に耐えかねたアッシュがジェイドにそう言うと、ジェイドはさわやかな笑みを浮かべた。 だが、その笑みは見る人によっては恐怖を覚えるような笑みである。 「……とてもそうには見えないんですけど;」 「おや、失礼ですね〜♪」 相変わらずのジェイドの反応に再びアッシュは溜息をついた。 「……アリエッタも、ジェイドのことは怖がらなくてもいいよ」 きっとアリエッタは、≪死霊使い≫と言う二つ名を持つジェイドのことが怖いのだろう。 そう思ったアッシュはアリエッタに優しく言う。 「確かに、ジェイドは何考えているのか全然わかんないし、言っていることが冗談なのか本気なのかもわかんないけど、決して悪い奴じゃないよ」 「……アッシュ。あなたサラリと酷いこと言ってませんか?」 「だって、事実だもん」 「…………」 ケロッとした顔でアッシュがそう言ったので、ジェイドは何も言えなくなった。 「だから、大丈夫だよ。ジェイドだけじゃなくって、みんなも」 「……でも……この人。……兄さまのこといじめたもん!!」 それにアリエッタは泣きそうな顔でそう言った。 アリエッタが言う俺をいじめたとは、恐らくタルタロスのときのことだろう。 「い、いや、アリエッタ。それはもう解決したから……;」 「でも、また同じことしないとは言い切れないもん! アリエッタ、兄さまをいじめる人、嫌いです!!」 アリエッタはジェイドを睨みつけてそう言った。 (……困ったなぁ;) どうしたら、アリエッタはジェイドのことを許してくれるだろうか。 別に嫌いのままでもいいかもしれないが、やっぱり仲良くなって欲しいとも思うし……。 そんなことを考えている、そのときだった。 「ほえっ!? ジェ、ジェイド///」 アッシュはいきなり後ろからジェイドに抱きつかれ、驚きの声を上げる。 「なっ、何するんだよ! いきなり!!」 「いや〜♪ 仲がいいのを手っ取り早く見せるには、これが一番いいかと思いまして♪」 アッシュがジェイドの顔を見るとさわやかな笑みを浮かべていた。 「ふっ、ふざけるなよ! 大体、こんなことでアリエッタが納得するわけが――」 「凄いです! 兄さまとジェイド、仲良しだったんですね!!」 (なっ、納得してる!?) 嬉しそうにそう言うアリエッタにアッシュは言葉を失った。 「ええ、そうですよ♪」 それにジェイドは笑って答える。 「もっ、もういいだろ/// さっさと、離れろよ////」 ジェイドの腕の中でアッシュは必死に足掻くが、そこから抜け出すことが出来なかった。 「いいじゃないですか、別に♪」 「よくない! よくないってば!!」 「それにしても、アッシュは抱き心地いいですね〜♪」 アッシュの言葉をジェイドは完全に無視した。 「ジェイド! 何してるんだぁ!?」 そこへルークとガイがやってきて、半分裏返ったような声でガイが叫んだ。 「いや〜♪ アッシュの抱き心地がよくって放したくないんですよ♪」 「! ふっ、ふざけるな!! いい加減、アッシュを放しやがれ!!!」 その言葉にルークが怒鳴りながら、ジェイドとアッシュを引き離した。 「酷いですね〜♪ もっと、抱いていたかったのですが♪」 そう言うジェイをルークは睨みつけた。 「おまえも、もっと気をつけやがれ!!」 「……ご、ごめん……」 思っても見ないルークの反応にアッシュは驚きながら謝った。 そんな中ユリアシティへと着いたのだった。 Rainシリーズ第5章第9譜でした!! わ〜いwwジェイドとアッシュを絡ませることに成功しました!! ジェイドさんもアッシュを狙ってますからねwwナイスです、ジェイドさん!! H.21 6/20 次へ |