「こっちだ! 急げ! 慌わてるなよ!」

ルークたちは大きな声で人々を導いた。
セントビナーへとやってきたルークたちは老マクガヴァンに会い、人々を避難させ始めた。
彼らはさほど慌てることなく、ルークたちの指示に従ってくれている。
それは、全て老マクガヴァンの人徳のおかげだろう。
街の人たちは彼のことを尊敬しているから、彼の言うことを信じたのだ。

「何とか、間に合いそうだな」
「ああ、そうだな……」

ガイの言葉を肯定しつつ、内心ルークは焦っていた。
今は安定している大地。
それがいつアクゼリュスのように崩落するかわからないからだ。
だから、一刻も早くセントビナーの人々を避難させなければ……。
そう考えているとき、人々の悲鳴が上がった。






〜Shining Rain〜








「ハーッハッハッハッ!」

聞き覚えのある笑い声が辺りに響いた。
すると、門に影が差したかと思うと何かが落ちてきて、濛々と土煙が立ち籠もった。
土煙で見えないが、機械特有の作動音が聞こえる。

「漸く見つけましたよ、ジェイド!」

その声と共に、風で徐々に土煙が消えていく。
現れてたのは巨大な譜業機械(ふごうきかい)だった。

「ハーッハッハッハッ! どうです! この私の傑作! ≪カイザーディストRX≫!!」
「この忙しいときに……」

ジェイドは眼鏡の位置を直すと、呆れたように溜息をついた。

「……昔からあなたは空気が読めませんでしたよねぇ、ディスト」
「何とでも言いなさい! それより、導師イオンは渡していただきますよ!!」
「断ります。それより、その邪魔なものを退かしなさい」

ジェイドは≪カイザーディストRX≫を指差した。

「へぇ? こんな虫けら共を助けようと言うのですか? ……ネビリム先生のことは、諦めたくせに!」

ディストの言葉にジェイドの顔色が変わった。

「……おまえは、まだそんな馬鹿なことを!」
「さっさと音を上げたあなたに、そんなこと言う資格はない! さぁ、導師を渡しなさい!!」

ディストは腕を動かすと、譜業機械(ふごうきかい)は煙を噴出して動き出した。
球体に付いている四本の腕のうち、一本はノコギリ、もう一本はドリル、残る二本には発射装置のようなものが付いている。

「させるかよっ!」

ルークは剣を抜くと突進した。

「馬鹿め! ……やっておしまいなさい、カイザー!!」

強大なノコギリがルークへと迫りくる。
だが、ルークはそれに臆することなく剣を振るった。
そのとき、

「刃に更なる力を! ――――シャープネス!」

ナタリアの声が響くと、ルークの周りに譜陣(ふじん)が出現する。
そして、譜陣(ふじん)が光へと変わり、ルークの剣へと吸い込まれていくのがわかった。
全ての光が剣へと溶け込んだと同時に、ルークは一気にノコギリの付いた腕を斬り落とした。

「ムキーーッ! よくもやってくれましてね!! しっかりしなさい、カイザー!!」

それに答えるかのように機械の作動音が鳴り響き、ルークにドリルが襲い掛かる。
それをルークは剣で受け止める。
剣とドリルの間で火花が散る。

「出でよ、敵を蹴散らす激しき水塊!」

ルークの耳にジェイドの詠唱が聞こえたので、ルークは≪カイザーディストRX≫から離れ、間合いを取った。

「――――セイントバブル!」

そうジェイドの声が響いた途端、≪カイザーディストRX≫の真下の無数の水泡が出現し、破裂した。
機械相手だからジェイドの≪セイントバブル≫効果覿面のはずである。
が、水泡の間からルーク目掛けてドリルが飛んできた。
ルークはそれを慌てて避けた。

「何っ!?」
「ハーッハッハッハッ! 驚きましたか? この≪カイザーディストRX≫には防水加工してあるんですよ。その程度の攻撃ではビクともしませんよ!!」

ジェイドの反応を見たディストは高らかにそう宣言した。

「≪鼻垂れディスト≫にしては、考えましたねぇ」
「ムキーーッ! 誰が鼻垂れですか! 誰が!!」

そう怒鳴りながらディストは≪カイザーディストRX≫を操作し、発射装置をルークたちへと向ける。

「これで、終わりですっ!!」
「あ〜〜〜〜〜〜っ!?」

これで、決着をつけようとディストが腕を振り上げたその時、アニスの声が辺り一面に響き渡った。

「なっ、なんか、こっちに飛んでくるよ!?」

信じられないものを見たような顔をしたアニスは空を指差した。
それにルークたちも空を仰ぐ。
そこには、明らかに鳥とは違うものが宙を浮かんでいた。
小型の船に似ていて、左右の端に槍のようなものが付いた円筒が付いた譜業機械(ふごうきかい)だった。

「きっ、機械が空を飛んでるぞ!」

それを見たガイは、今戦闘中であることを忘れて瞳を輝かせながら言った。
さすが、譜業馬鹿(ふごうオタク)

「あっ! あそこに、誰がいますよ!!」

イオンの言葉にルークは目を細めた。
譜業機械(ふごうきかい)の円筒部分に人影が見えた。
その譜業機械(ふごうきかい)がある程度近くに来るとその人影がはっきりと見えてきた。
美しい夕焼けのように赤い長髪が風で激しく揺れている。

「「「「「「「アッシュ!?」」」」」」」

その人物の名を叫んだルークたちの声は見事に重なった。
それが聞こえたのか、アッシュはフッと笑みを浮かべると、譜業機械(ふごうきかい)を力強く蹴り、飛んだ。
重力に逆らうことなくアッシュは落ちていく。
目指すは≪カイザーディストRX≫。

「崩襲脚!」

≪カイザーディストRX≫と接触する寸前にアッシュは蹴りを喰らわした。
その蹴りは≪カイザーディストRX≫の胸部を見事に貫いた。
アッシュはそのまま地面へと無事着地した。
それとほぼ同時に≪カイザーディストRX≫は爆発した。

「着地成功〜☆」

アッシュは何事もなかったかのように、その場に立ち上がると服に付いた砂埃を払い、笑みを浮かべた。
それをルークたちは呆然と眺めていた。

「ああああぁぁ! 私の可愛いカイザーディスト号がぁ!!」

ディストは見るも無残な姿になった≪カイザーディストRX≫を見て喚いた。

「ア、アッシュ! なんてことしてくれるんですか!?」
「あっ、……ごめんね、ディスト。別に悪気はなかったんだけど;」

半泣きなディストの顔を見て、アッシュは苦笑いを浮かべた。

「あっ! でも、元はと言えば、ディストがルークたちの邪魔するからだよ。ルークたちが折角頑張ってセントビナーの人たちを避難させよとしてるのに」
「うっ……;」

ディストはアッシュの言葉に言葉を詰まらせる。

「とっ、とにかく! 憶えておきなさい! 次はギタギタにしてやるますから!!」

そして、ディストはアッシュからルークたちに視線を向け、そう言い放った。

「そして、アッシュ! 今回は見逃しますが、次は必ずあなたを連れて帰りましからね!!」

ディストはそうアッシュに言い残すと椅子ごと飛び、あっという間に見えなくなった。
























Rainシリーズ第5章第8譜でした!!
やってやったよ!!
OPムービーでアルビオールから飛び降りるルークが好きだったので、やらしてみましたww
そして見事に≪カイザーディストRX≫が犠牲にww
≪カイザーディストRX≫に防水加工って……;


H.21 6/20



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