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「ごめん。待ったよね?」 グランコクマを出たアッシュはテオルの森を抜けるとそう言った。 「いえ、そうでもないですよ。アッシュさん!」 それに一人の少女、ノエルは笑って答えた。 「さっき、兄から無線が入りました。あと少しで、アルビオール三号機が完成するそうです」 「……そうか。じゃあ、さっさとシェリダンへと向かおうか」 「はい! わかりました!!」 ノエルはそう言うと、アルビオールのタラップを下げた。 アッシュはアルビオールに乗り込もうと足を動かした。 だが、周囲の木々から人の気配を感じ、足を止めた。 「……ノエル。危ないから、少し下がってて」 ノエルの返事を待たずにアッシュはその方向へと歩き出す。 「……隠れてないで、出てきたらどうだ?」 姿の見えない相手にアッシュはそう言い放つ。 そして、剣をいつでも抜ける体勢に整える。 不自然に草花が揺れるとそこから人影が現れた。 アッシュはその人物を見て、目を見開いた。 ~Shining Rain~ 木々の緑によく見える美しい桃色の髪が揺れている。 「……アリエッタ」 アッシュは少女の名を呟いた。 「兄さま……」 アリエッタは恐る恐るアッシュへと歩み寄った。 「……やっと見つけた、です。兄さま、急にいなくなったから…………」 「…………ごめん」 「一緒に帰りましょう、です。アリエッタと一緒に……」 「……ごめん。それは…………出来ないよ」 アリエッタの言葉にアッシュは哀しく笑ってそう言った。 「どうしてです! 兄さまアリエッタのこと……嫌いになったんですね……」 「それは違うよ! 俺、アリエッタのこと嫌いになってないよ」 「だったらどうして、一緒にいてくれないんですか!」 瞳に涙を溜めてアリエッタは叫んだ。 その表情を俺は何度見ただろうか。 その度にもう二度と見たくないと思っているのに……。 アリエッタにこんな顔をさせているのは自分だとわかっているのに……。 「……それは……もう、俺はヴァンの操り人形じゃないから……」 「……操り……人形……?」 アッシュの言葉にアリエッタは不思議そうに言った。 「……アリエッタ」 アッシュはアリエッタに歩み寄りと、アリエッタの肩に両手を置いた。 そして、アリエッタの瞳を見つめた。 そのアッシュの行動にアリエッタの瞳は戸惑ったように揺れた。 全てを話さなければ。 あの哀しい結末を避ける為に……。 「……これから話すことを目を逸らさずに聞いて欲しい」 いつもとは違う、アッシュの声に少しアリエッタは驚いたが、コクリと頷いた。 それを見たアッシュはゆっくりと口を開いた。 「……そっ、総長はそんなことを……!」 アッシュが全てを話し終わった後、アリエッタが驚いたような声でそう言った。 信じられなかった。 総長がやろうとしている計画が。 そして、その為に総長が兄さまにしたことが。 「……信じられないかもしれないけど、本当のことなんだ」 そんなアリエッタを見たアッシュは哀しそうにそう言った。 その瞳は決して嘘をついていなかった。 「だから、もう六神将には戻れない。俺はヴァンのやり方は間違っていると思うから。……あの人を止めたいから」 あのときは、あの人を止めることが出来なかった。 願うことは同じだったはずなのに……。 もし、出来るなら今度は止めたい。 あの人に生きて欲しいから。 「……だから、ごめん。アリエッタ」 アリエッタにアッシュは笑いかけた。 そして、アッシュは踵を返して、アルビオールへと向かって歩き出した。 「待って!!」 突然、アリエッタが叫んだ。 それに、アッシュは足を止めた。 「……私、総長が何をやろうとしているのか、今まで知らなかった、です。……ただ、総長はアリエッタの街を復活させてくれるって約束したから…………」 ホド戦争に巻き込まれて沈んだ、フェレス島を。 でも、それはまやかしにしか過ぎない。 そして、その為にこの世界に住むを人々は消滅させられるのだ。 「……でも。アリエッタ、総長のやり方はおかしいと思うですっ! だって……だって、総長のやり方だと、ママやみんなが死んじゃう!!」 いや 大切な人たちがいなくなってしまうのは。 泣いてはいけないとわかっているのに、瞳から涙が溢れ出す。 「だから、総長の計画を止めたいですっ! 兄さまと一緒にっ!!」 「……本当に、いいの? ヴァンやリグレットたちと戦うことになるかもしれないんだよ?」 アリエッタの反応に驚いたようにアッシュはそう言った。 それにアリエッタは、首を振るとアッシュを真っ直ぐ見つめた。 「…………覚悟は出来てる、です!」 アッシュに向けられるアリエッタの瞳には迷いはなかった。 それを見たアッシュは再びアリエッタへと歩み寄り、手を指し伸ばす。 「……ありがとう、アリエッタ。一緒に行こう」 「……はいです!!」 アリエッタは嬉しそうに笑って、アッシュの手を取った。 それは久しぶりに見た笑顔だった。 そして、二人はそのままアルビオールへと向かって歩き出した。 「……何が、おかしい。ガイ」 セントビナーへ向かうタルタロスの中。 ルークは不機嫌そうにガイの顔を見ることなくそう言った。 それは、隣にいるガイがさっきから人の顔を見て笑っているからだ。 「いや~。だってさ、あのときのおまえの言葉がアッシュそっくりだったからさ」 アッシュが宿屋を後にしてから数時間後、ルークたちはガイと再会した。 そして、ガイはそのときに自分がマルクト人であることを、ガルディオス伯爵の息子ガイラルディア・ガラン・ガルディオスであることを明かした。 それにルークは少し驚いたようだが、それでもルークは自分のことを許してくれた。 そして、ルークはガイを見つめて言った。 『もし、ガイがアッシュを手にかけたら、そのときは俺がガイを殺る』、と。 それを聞いたガイは思わず笑ってしまったのだった。 「おまえなぁ……」 ルークの眉間に皺が寄った。 それを見たガイは何とか笑うのを止める。 「…………なぁ、ルーク」 「なんだ……?」 さっきとは違うガイの声にルークは不思議に思い、ガイの顔を見た。 ルークがガイの顔を見た途端、ガイはニッと笑った。 「おまえ、アッシュのこと好きなのか?」 「なっ///」 ガイの言葉にルークは赤面する。 それを見たガイはさらに面白そうに笑う。 「やっぱり、そうなのか!」 「ちっ、違う! だっ、誰があんな奴!!」 それにルークは向きになってそう言った。 「そうか。……だったら、俺がアッシュを物にしてもいいんだな?」 「なっ、何!?」 ガイの思ってもみない発言にルークは固まってガイを見る。 ガイの表情はとても真剣なものへと変わっていた。 「言っとくけど、俺は本気だからな」 アッシュの言った一言が自分の心を瞬時に溶かしてしまった。 今こうやってルークの隣にいられるのも、アッシュのおかげだ。 そして、アッシュと二人っきりで話して自分の気持ちに気付いてしまった。 アッシュのことが好きだと……。 「……いいんだよな、ルーク?」 「…………」 ガイの問いかけにアッシュは今だ固まったままだ。 それほどまでに発言の驚いたのだろう。 「――――ねぇよ」 「うん? なんだって?」 すると、ルークの唇が微かに動き、声が出た。 その声を上手く聞き取れなかったガイは聞き返した。 「……あいつは渡さねぇよ」 翡翠の瞳が強く煌いた。 それは、あのとき見たアッシュの瞳によく似ていた。 それを見たガイはフッと笑った。 「……そうか。だからと言っても俺も負けるつもりはないぜ」 「……それは、お互い様だ」 そう言ってルークは静かに笑ったのだった。 Rainシリーズ第5章第7譜でした!! アリエッタが仲間になりましたよ!! これでアリエッタがルークたちと戦って死ぬことがなくなったね!! そして、ガイがルークに宣戦布告しましたねww 次回、セントビナーであのシーンを再現する予定です♪(どのシーンだよ!!) H.21 3/13 次へ |