「では、皆さんはここで大人しく待っていてくださいね♪」

そう言って一人テオルの森へと消えて行ったジェイドと別れて数時間が経過した。
ベルケンドを出た後、ルークたちはワイヨン鏡窟へと向かった。
そこで、ルークたちはヴァンが大陸ほどの大きさのレプリカを作ろうとしていることを知った。
そして、そこで地震が起こり、ルークはアッシュがセントビナーが危険な状況であると言っていたことを思い出し、ピオニー陛下に力を貸してもらうためグランコクマへと向かうことになった。
途中、タルタロスのエンジントラブルが起こったが、ケテルブルグで修理し、漸くここテオルの森までやってきた。
だが、この森を通ることが出来たのはジェイドのみ。
他の者は、許可が下りるまでここで待機することになったのだ。

「ただ待つのも結構大変ですわね……」

ナタリアがそう呟いたときだった。
木々のざわめきに混じって、人の悲鳴のようなものが聞こえてきた。

「行ってみましょう!」

それは、ナタリアにも聞こえたらしく、ナタリアは勢いよく立ち上がると悲鳴が聞こえたほうへと向かった。
ルークたちも慌ててナタリアの後を追うとそこには、数人のマルクト兵が倒れていた。
辺りは血で赤く染まっていた。

「しっかりしなさい!」

ナタリアとティアは彼らに治癒譜術(ちゆふじゅつ)をかけようとするが止めた。
もう手遅れだとわかったから……。

神託の盾(オラクル)の兵士が……くそ……」

そして、最後まで息があった兵士は最期にそう言って事切れた。

神託の盾(オラクル)……まさか、兄さん……?」
「グランコクマで何をしようってんだ?」
「まさか、セフィロトツリーを消す為の作業とか?」
「いえ、この辺りにはセフィロトはなかったはずです」
「こうしていも埒があかねぇ! 神託の盾(オラクル)の奴を追いかけるぞ!!」

こうして、ルークたちはテオルの森へと入っていった。






〜Shining Rain〜








「もうすぐ、出口じゃないか?」

辺りを見回りながら、ルークは小声でそう言った。
テオルの森をマルクト兵に見つからないように隠れながらルークたちは進んだ。
だが、ここまでに神託の盾(オラクル)は影も形もなかった。

神託の盾(オラクル)の奴ら、もう街に入っちまったのか?」
「ルーク、あそこ!」

ナタリアは崖を指した。
そこにはマルクト兵らしき男が倒れていた。

「マルクト兵が倒れていますわ!」

ナタリアはそう言うと男へと駆け寄った。
そこへ、何やら影が落ちる。

「ナタリア!!」

ルークの声に、ナタリアは横に転がった。
さっきまで、ナタリアがいた地面に巨大な黒い鎌が落ちる。
地面は抉られ、土は弾け飛んだ。
ナタリアは瞬時に顔を庇いながら、弓を構えようとする。
だが、引き抜かれた鎌を返す刃でそれを弾き飛ばされ、後ろへ飛び退いた。
その拍子に弦が切れる。
ナタリアは唇を噛んで、襲撃者を睨みつける。

「ほお、お姫様にしては、いい反応だな」

髭面の大男が、その厳つい顔に不敵な笑みを浮かべた。

「おまえは砂漠で会った……」

ナタリアが呟き。

「……≪黒獅子ラルゴ≫!!」

ルークが続けて吼えた。

「侵入者はおまえだったのか! グランコクマに何の用だ!!」

ラルゴはルークの言葉を聞くとフッと笑った。

「前ばかり気にしていてはいかんな。小僧」
「何?」

ラルゴの言葉の意味がルークにはわからなかった。
だが、自分の背後で異様な気配を感じ取り、ルークは剣を抜きながら振り返った。
剣と剣がぶつかり合い火花が散る。
ルークは剣の向こう側にある顔に目を剥く。
その顔は……。

「ガイ!?」

ガイは片刃の剣を両手で構え、強い力を込め押してくる。
その瞳には怒りを越えた感情が宿っていた。

「ちょっ、ちょっとちょっと! どうしちゃったの!?」

アニスはトクナガを掴んだが、巨大化させていいのか迷っていた。

「いけません! カースロットです!!」

カースロット
術をかけられた人間を操る、ダアト式譜術(ふじゅつ)だ。
縦横に、剣が襲い掛かる。
髪が斬り飛ばされ、服が裂ける。
本気だ
ルークは必死に防戦した。
それしか、ルークには出来ない。
ガイを傷付けるわけにはいかないから。

「何処かにシンクがいるはずです! 彼を探してください!!」

イオンの必死な声が響く。

「ルーク、後ろ!」

アニスの声にルークは首だけを動かすと、ラルゴが突進してくるのが見えた。

「俺を忘れるなよっ、小僧!」

巨大な鎌が振り下ろされる。
ルークはその軌道にいるのが自分だけでなくガイもいることに気が付く。
このままだと、二人とも斬り殺される。

(冗談じゃねぇ!)

そう思ったルークはガイの一撃をかわしながら、ルークはガイを蹴った。
そして、ルークは後ろに飛ぶ。
その二人の中間地点に鎌が突き刺さった。

「ふはははははっ! やるようになったな、小僧! さすが、ヴァンが見込んだだけのことはあるわ!!」

そうラルゴは言うと再び突進してくる。

(くそっ!!)

ルークは舌打ちをした。
ラルゴはガイのことは一切気にせず攻撃を仕掛けてくる。
その為、ルークはラルゴとガイの攻撃を受けながら、自分とガイの身を守らなくてはいけなかった。
ティアは詠唱を始め、ナタリアも詠唱しながら切れた弓の弦を張り直している。
アニスはイオンを庇いながら、焦りの表情を浮かべていた。
ルークを助けたくても、助けられないから。
そう長くは持たないと思ったそのときだった。

「きゃっ、また地震!」

大地が激しく揺れ、ラルゴとルークは体勢を崩した。
だが、ガイはそんなことはお構いなしに、ルークへと近づく。

「「「「ルーク!!」」」」

ティアたちの声が響いた直後にガイの剣がルークへと迫った。
それを剣で受け止める音が響く。
だが、受け止めたのはルークではなかった。
その人物に誰もが目を見張った。
美しい夕焼けのように赤い長髪が揺れる。

「…………アッシュ」

ルークはその人物の名を呟いた。
シンクたちに連れて行かれたアッシュ。
その彼が今目の前に立っている。
それが無性に嬉しかった。
だが、ここでルークはガイの異変に気付く。
先程まで、一心不乱に俺を襲ってきたガイ。
それが今は、俺たちから遠ざかり、躊躇っている様子を見せた。
剣は交互に俺とアッシュへと向けられる。

「……どうした、()らないのか?」

それにアッシュはガイへと一歩前に出てそう言った。
アッシュが前へと進むとガイは一歩後ろへと下がる。

「…………ガイ」
「!?」

アッシュがそう言った途端、ガイはアッシュに狙いを定め斬りかかる。
アッシュはそれを軽々と避け、そのままガイの後ろへと回り込み、ガイの首筋を殴った。

「っ!!」

それにガイは声にならない声を上げ、倒れた。
倒れるガイをアッシュがしっかりと支えた。

「…………どういうとつもりだ、シンク?」

気を失ったガイを見つめアッシュは静かにそう言った。
それには明らかに怒りが込められている。

「ユリアシティのときといい、今回といい何故ルークを狙う! ヴァンの命令に背いているじゃないか!!」

アッシュがそう叫ぶと、ラルゴの隣に人影が現れた。
≪烈風のシンク≫の姿が……。

「……残念だが、アッシュよ。総長は今や我らの計画を邪魔する者はすべて排除せよと申されたのだ」

何も言わないシンクの代わって、ラルゴはそう口を開いた。

「アッシュよ。もう、我らの許には戻らぬつもりか?」
「……ああ。もう、ヴァンの前で人形を演じるのは疲れたんだ」

ラルゴの問いにアッシュは笑みを浮かべてそう答える。
だが、アッシュの翡翠の瞳はとても強い光を放っていた。

「……そうか。だが、総長は何としてでもおまえだけは、連れて来いと言った。おまえがそう言うなら仕方ないな」

一瞬、ラルゴは哀しそうな表情を浮かべると、巨大な鎌を構え直した。
それに合わせてアッシュも剣を構え直す。

「何事だ!」

その時、木々の間から数人のマルクト兵が現れ、槍を構えた。

「……邪魔が入ったか。仕方ない。シンクよ、一旦退くぞ」
「で、でもっ!!」

ラルゴの言葉にシンクはアッシュへと目を向ける。

「アッシュなら、その気になればいつでも取り返せる。だが今は退くのだ」
「…………っ! わかったよ!!」

シンクが悔しそうにそう言うと二人はあっという間に森へと消えていった。
マルクト兵がその後を追う。
だが、追ったところで二人を捕らえることは不可能だろう。
そして、アッシュたちはマルクト兵に尋問を受けて、そのままグランコクマへと連れて行かれた。
























Rainシリーズ第5章第3譜でした!!
アッシュとルークが再会wwまた、アッシュに助けられてるよルークは;
嫌、どうやってアッシュを出そうかと考えたら、やっぱりこうなってしまったよ;


H.20 12/25



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