「やはり、開いてますね……」

セントビナーを救う為にルークたちはシュレーの丘へとやってきた。
目的は、セフィロトだ。
パッセージリングを操作して、セフィロトツリーを復活させれば、セントビナーを泥の海の上に浮かせることだ出来るのだ。

「アルバート式封咒(しきふうじゅ)は解かれてしまっている。……行きましょう」

そして、セフィロトヘと繋がる扉へと向かうと、入り口を見てイオンはそう言った。

「ああ」

ルークはそれに頷くと中へと入っていった。






〜Shining Rain〜








「……兄さま、一人で大丈夫かな…………」

慎重に中を進んでいくと、アリエッタが一人呟いた。
アリエッタの言うとおり、今ここにアッシュの姿は何処にもない。
アッシュは調べたいことがあると言って、一人別行動をしているのだ。

――――大丈夫だよ。調べ終わったらちゃんと、ルークたちの許へと行くから、信じて。

俺の顔を見て、アッシュは苦笑してそう言った。
本当は一緒にここへ来て欲しかったが、仕方がない。
ルークはアッシュを信じることにしたのだ。

「……大丈夫だ。あいつは強いからな」

ルークが心配そうな顔をしているアリエッタを見ながら優しく言った。
あいつは、強い。
俺なんかより、ずっと……。

「そうですよね。兄さま、強いもん!」

ルークの言葉を聞いてアリエッタの表情は少しだけ明るくなった。

「しかし、アクゼリュスといい、ここといい、パッセージリングがあるところは、何か雰因気が違うよなぁ……」

ガイが感嘆したようにそう呟くと、それに同意したようにティアは頷いた。

「ええ。セフィロトツリーを護る為の場所だもの。創世記時の様式なんだと思うわ」
「そっか。ここも二千年前からあるってことだよね」
「そうなりますね。さすが…と言うべきか。かなり高度な技術を使っているようです。現代の技術では、このような建造物は造れません」

ジェイドは辺りを見渡しながらそう言った。

「……どんな時代だったんだろうな。ユリアが生きた時代ってのは。大いに興味があるよ」
「……おまえの場合、音機関が目当てだろうが」

ルークの言葉にガイは、ははは、と笑った。

「まっ、それもあるが、外殻を造ろうなんて発想する時代だぜ?」
「ええ。間違いなく、激動の時代ですわね……」
「今だって、激動の時代よ。ユリアの預言(スコア)にもなかったことが起ころうとしているんだから」
「確かに……そうですけど…………?」

そう言ったとき、ナタリアはティアの右手首に目がいった。

「……あら? ティア。あなた、いつからそのブレスレットをつけてましたの?」
「ええっ!? こ、これは/// その……////」

自分がつけているブレスレットのことを言われたティアの顔は見る見るうちに真っ赤になっていった。

「あっ、本当だな。どうしたんだ、これ?」
「べっ、別に/// 何でもないわよ////」

ティアの慌てる様子を見て、アニスは何を察したように笑みを浮かべた。

「はは〜ん。もしかして、例の≪ペンダントの君≫に貰ったとか?」
「!?」

アニスの一言でティアは驚き表情を浮かべた。

「……≪ペンダントの君≫? 誰だ?」
「あのですね――」
「アニス!!」

ルークの問いにアニスが口を開こうとした途端、ティアが怒鳴った。

「いいじゃないですの。わたくしたちには話して頂きましたし♪」
「それとこれとは、話が違うわ!!」
「あのですねぇ〜。ティアの首にかかっているペンダントを二回も失くしちゃったのに、戻ってきたんですぅ。しかも、見つけてくれた人が二回とも同じ人だったんですよ!」

ナタリアがティアを惹きつけている間にアニスはルークたちを集めて、そう言った。

「……それって、まさか…………」

アニスの話を聞いて、ルークは≪ペンダントの君≫が誰なのか理解した。

「いや〜。まさか、アッシュとは♪」
「アニス!!!!」

ジェイドの一言でティアは漸くアニスが喋ったことに気が付き、怒鳴った。

「……ジェイド。おまえ、わざとだろ?」
「いや〜。そんなわけないじゃないですか♪」
(絶対、わざとだ)

ルークはジェイドの笑みを見てそう確信した。

「だから、アッシュはあのとき、ああ言ったんですね」
「さすが、兄さまです♪」

イオンとアリエッタは嬉しそうに笑みを浮かべてそう言った。

「やはり、何度聞いてもロマンチックな話ですわね♪」
「いいよなぁ〜。ティアは、アッシュにブレスレット貰えて。私も欲しい〜」
「くっそ……。いつの間にそんなことになってたんだよ!!」
「いや〜。若いっていいですね♪」
「…………」

そして、ジェイドたちは好き勝手なことを言い始めるのだった。

「もっ、もういいでしょう/// それより、さっさとパッセージリングへと行きましょう////」
その状況についに耐えきれなくなったティアはそう大声を上げると、さっさと歩き始めてしまった。
それを見たルークたちは話をやめ、ティアの後を追いかけ始めたのだった。





















「はぁ〜〜〜〜〜」

アルビオールの中、アッシュの大きな溜息が響いた。
その理由は、自分のカバンの中に紛れ込んで来たものを見たからだ。

「…………で、なんで付いて来てるんだよ! ミュウ!!」

そして、アッシュはカバンに向かってそう怒鳴った。

「みゅううぅぅ……アッシュさん一人だと淋しいと思って……」

それに、ミュウはビクッと震え、恐る恐るそう言った。
真ん丸の大きな瞳が大きく揺れる。

「だからって、勝手に付いて来たらダメだろ? ミュウの主人はルークなんだから」

それを見たアッシュはさっきより柔らかい口調で言った。

「そうですの……でも! アッシュさんも、ミュウのご主人様ですの!」

ミュウは長い耳をピンと立ててそう言った。
そのミュウの言葉にアッシュは哀しそうに顔を歪めた。

「…………それは、俺がルークのレプリカだからか?」
「違うですの! アッシュさんはアッシュさんですの!!」

ミュウは首を大きく振ってアッシュの言葉を力の限り否定した。

「……よくわからないですけど、ボクはアッシュさんのこと知ってるですの! タルタロスで会う前よりずっと前に!!」
「!?」

ミュウの思っても見ない言葉にアッシュは驚いた。
ローレライの力によって、あのときの記憶を持っているのは俺とローレライだけのはずである。
それなのに……。

「…………それは、気のせいだよ、ミュウ。俺がおまえと会ったのは、あのときが初めてだよ」
「でっ、でも、ボクは……」
「きっと、ルークとずっと一緒だったから、俺のことを知っていると勘違いしたんだよ」
「みゅううぅぅ」

そう言い切るアッシュにミュウは何も言えなくなり、俯く。
すると、ミュウの頭をアッシュは優しく撫でた。

「……でも、俺のこと心配してくれて……ありがとう、ミュウ」

優しくミュウに笑いかけてアッシュは言った。
それを見たミュウも嬉しそうに笑うのだった。
とっても、不思議な感じですの。
この暖かい手の感触も、優しい笑みも、優しい声も全て。
ミュウは知っていたですの。
でも、それを何故知っているのかボク自身わからなかったですの。
でも、今はそんなことどうでもいいですの。
ただ、アッシュさんの傍にいたいですの。
それだけで、もう十分幸せだから……。











(あっ! ここにミュウがいて、ルークたちは大丈夫だろうか?)

アッシュが思ったとおり、ミュウがいなかったルークたちはセフィロトの仕掛けを解除するのにかなり苦労したのだった。
























Rainシリーズ第5章第11譜でした!!
ガイたちにからかわれて赤くなるティア、可愛いですよねvv
でもアッシュのこと、《ペンダントの君》というアニス。ちょっと、古い感じが……。
まあ、その辺は気にしないでおこう。うん。
しかも、ミュウはアッシュと一緒にいるし;
本当に、どうやってセフィロトの仕掛けを解除するんだろう?(おい;)


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