守りたい 大切なあいつのことを……。 そう思っているのに、無力な自分がここにいる。 傷付き、倒れるあいつの姿を見て、それがいやなくらい思い知らされた。 力が欲しい あいつが傷付かなくてすむように……。 心の底から強くなりたいとそう思った。 〜Shining Rain〜 「さて、これからどうしますか?」 呑気な声でそうジェイドが言った。 今、ルークたちはタルタロスに乗っている。 セフィロトツリーの力を利用して、外殻大地へと戻ってきたのだ。 「ヴァンが一体何を企んでいるのか、知らないといけません」 「だが、それはどうやったら、それがわかるんだ?」 ジェイドの言葉にガイがそう尋ねた。 「……ベルケンドとワイヨン鏡窟……」 「えっ?」 突然、ティアが小さく呟いたのでガイが聞き返す。 「そこに、兄さんがよく訪ねていたとアッシュが言ってました。何か情報が得られるかもしれません」 「……ベルケンドとワイヨン鏡窟ですか。……ベルケンドは音機関の研究が盛んな街ですし、確かに何か情報が得られそうですね」 「じゃぁ、目的地はベルケンドですかぁ?」 ジェイドたちの話を聞いていたアニスは首を傾げた。 「そうなりますね。では、さっさと向かいますか」 そう言ってジェイドはタルタロスをベルケンドへと動かし始めた。 「…………アッシュ」 ティアは一人、外へ出てそう呟いた。 ルークは庇って、アッシュはシンクに刺されてしまった。 そして、そのまま彼らにアッシュを連れて行かれてしまった。 アッシュは無事だろうか。 無事でいて欲しい。 ティアの手は自然とペンダントを握った。 母の形見のペンダントであり、アッシュが二度も見つけてくれたものだ。 もうこれを二度と手放さないとアッシュと約束したのだ。 「……ティア」 「!!」 すると、突然声が聞こえた。 声が聞こえたほうへと振り向くと、そこには燃えるような紅の長髪の少年が立っていた。 「……ルーク……どうしたの?」 一瞬、アッシュと見間違えてしまったティアだったが、ルークに問いかける。 ルークは真剣な表情でティアへと近づいてきた。 「……俺に第七音素を制御する術を教えてくれないか?」 「えっ……?」 ルークの言葉にティアは驚きの表情を浮かべた。 「超振動を制御する術を知りたいんだ。超振動も第七音素から発生するんだろ?」 「えっ、ええ。……でも、どうして?」 今まで超振動はもちろん、譜術でさえ使おうとしなかったルーク。 なのに、突然超振動を制御する術を知りたいと言ってきた。 それは、何故だろう。 「…………本当は、ティアに言われる前から知ってたんだ。俺が第七音譜術士で、一人で超振動を起こせることを…。でも、こんな力必要ないと思ってた……」 全て知っていた。 でも、知らないフリをしていた。 そうすれば、この力を使わずにすむから。 この力は人を傷付ける力だから……。 「……でも、今はこの力、超振動を使いこなせるようになりたいんだ。そうしないと…………」 そうしないと、あいつが俺の代わりに力を使わされる。 そして、傷付き、倒れるのだ。 シンクと闘って、俺は自分の無力さを思い知った。 そのせいで、俺を庇ったあいつはシンクに刺され倒れた。 俺が弱いからあいつが傷付き、倒れる。 あいつを守りたい その為に力が欲しい 人を傷つけるためではなく、大切な人を守るために……。 「だから、頼む。力を貸して欲しい」 ルークは真っ直ぐティアを見つめてそう言った。 その瞳はとても強い意思を宿していた。 「……わかったわ。私でよかったら、力を貸すわ」 その瞳を見て、ティアそう答えた。 「ありがとう、ティア」 強くなる 他でもない、あいつの為に……。 強くなるんだ ダアトにある宿屋 その一室に、シンクとアリエッタはいた。 ベッドには夕焼けのように赤い長髪の少年の少年が眠っていた。 アッシュは彼の被験者であるルークを庇って僕に刺されてしまった。 あいつからアッシュを取り戻した後、シンクはすぐにアッシュに治癒譜術をかけた。 その傷はわずかに後が残ってしまったが、塞ぐことが出来た。 でも、アッシュの顔色は相変わらず蒼白く、このままヴァンの許に連れては行けなかった。 今すぐ、アッシュをヴァンに連れて行ったら、アッシュに何をさせるかわからなかった。 「シンク……兄さま……大丈夫だよね?」 アリエッタが今にも泣きそうな顔でシンクにそう言った。 「……大丈夫だよ……きっと……」 それにシンクはそれしか言えなかった。 「……それより、アリエッタ。お腹すいただろ? 食事でもいこっか?」 そんな空気を少しでも明るくなるようにシンクはそう言った。 「えっ? でも……」 「アッシュなら大丈夫だよ。それに、アッシュが目を覚ましたとき、僕たちが顔色が悪かったらアッシュが心配するだろ? アリエッタはアッシュに心配かけたいの?」 自分のことより、他人のこと一番に考えるアッシュだ。 きっと、そうなるだろう。 「…………いやです」 「そうだろ? だったら、ちゃんと食事と睡眠を取ろう。少しでもいいからさ?」 「……わかりましたです」 シンクの言葉にアリエッタはコクリと頷いた。 「じゃあ、いこっか?」 そうシンクは笑みを浮かべて言うと、アリエッタと共に宿屋を出た。 それと同時に、アッシュしかいない部屋にひとつの人影が現れた。 燃えるような紅の長髪に翡翠の瞳をもつ青年の姿が。 彼はゆっくりとアッシュへと近づいた。 そして、アッシュに手をかざし、手から光を放った。 光はアッシュを優しく包み込み、アッシュの顔色が見る見るうちによくなり、傷口も綺麗に無くなった。 「――――っ!」 アッシュは声にならない呻き声を上げると、ゆっくりと瞳を開けた。 そして、自分の近くにいる青年に視線を向けた。 『アッシュ』そっくりを容姿を持つ彼を……。 「……ローレライ」 アッシュはそう言うと上半身を起こした。 さっきまで、重く感じた身体はすっかりと軽くなっていた。 「ローレライ……?」 アッシュは首を傾げた。 今、目の前にいるローレライは何処かいつもと違っていた。 自分に向けている視線が何処か怖い。 「…………もしかして……怒ってる?」 『当たり前だ!!』 アッシュがそう言った途端、ローレライは怒鳴った。 『あんな無茶なことをして! もし、あのとき我が助けなければ、どうなっていたかわかっているのか!!』 「……えっ?」 アッシュはアクゼリュスのことを思い出そうとした。 パッセージリングを破壊した後、俺はヴァンに殺されそうになった。 もうダメかと思ったとき、俺の身体を包むように赤い光が現れたのだ。 あれはローレライが俺を助ける為に力を使ってくれたのだった。 「あっ…………ごめん……俺……っ!」 アッシュがそう言った途端、ローレライはアッシュの腕を引っ張り、そのままアッシュを抱き締めた。 一瞬、何が起こったかわからなかったアッシュはただただ呆然としていた。 『……本当にルークは馬鹿だ。我を呼べばすぐに助けたのに……っ!』 ローレライは声を搾り出すかのようにそう言った。 ヴァンデスデルカが『ルーク』に剣を振り下ろしたとき、ローレライは我を忘れていた。 血の気が引き、目の前が真っ暗になりそうだった。 『ルーク』が呼べば、もっと早く助けられたのに……。 だが、『ルーク』は決して我を呼ばない。 何もかも自分独りで片付けようする。 そして、『ルーク』独り傷付くのだ。 そんなの、見たくもないのに。 我は、『ルーク』に頼って欲しいのに……。 「……本当に、ごめん。……今度は、ちゃんと呼ぶから」 アッシュはそう優しく言った。 俺の行動のせいでローレライがどんな思いをしたのかなんとなくわかったから。 こんな俺のことを心配してくれる人がいる。 アッシュはそのことを忘れていたのかもしれない。 ずっと、人形を演じていたから……。 でも、それを今思い出すことが出来た。 これからは気をつけよう 俺のことを心配してくれる人の為に……。 アッシュは心の隅でそう思ったのだった。 Rainシリーズ第5章第1譜でした!! いや〜ルークはこれから強くなるねww なんたって、アッシュのために強くなりたいと思ったんだからさww そして、ローレライ!やってしまったよ!!これじゃあ、ローレライ×ルークじゃん!! あっ!でも、それいいかもwwww(おい!!) H.20 11/17 次へ |