ティアたちはユリアロードへと入った。 そこは円形の部屋で、床に輝く五つの譜陣が白く描かれていた。 そこに、一体の魔物と二つの人影があった。 六神将≪烈風のシンク≫と≪幼獣のアリエッタ≫の姿が……。 〜Shining Rain〜 「ティア!」 ルークはティアたちより一足遅れて、ユリアロードにやってきた。 視線をティアたちから離すと、そこにはシンクとアリエッタがいた。 「へぇ〜。ヴァンが言っていたことは、本当だったんだ」 シンクは何処が楽しげな口調でそう言った。 「…………何しに来た」 ルークは、シンクを睨みつけた。 「何しに来ただって? そんなの決まってるだろ。アッシュを迎えに来たんだよ」 「何だと?」 シンクの言葉にルークだけでなく、ティアたちも驚いた。 「ヴァンは、アッシュがまだ使えるから連れて来いって言ったんだよ」 「! ふざけるな!! あいつを道具呼ばわりするんじぇねぇ!!!」 ルークの言葉にシンクは怪訝そうな態度を取った。 「道具呼ばわりだって? それをアンタが言うわけ? 誰のせいで、アッシュが死にそうになったさ!!」 シンクの言葉にルークは言葉を失った。 「わからないって言うのなら、教えてやるよ! ヴァンはあんたを生かす為だけにアッシュを創ったんだよ!! 何も知らないところで一番アンタがアッシュを利用してるんだよ!!」 「っ!!」 シンクの言葉がルークの胸を貫く。 「わかったなら、さっさとアッシュを返してよ」 「それは出来ませんねぇ。彼にはまだ色々と聞きたいことがありますし」 何も言えなくなったルークの代わりにジェイドがそう言った。 「……あっそ。だったら、力づくでもアッシュを取り返すだけだよ!!」 そうシンクは言うと、思いっきり地面を蹴った。 そして、一直線にルークの許へと駆け寄り、蹴りを喰らわす。 ルークは素早く剣を抜き、それを受け止める。 「ルーク!!」 ティアたちはルークに加勢しようとルークの許へと駆け寄ろうとした。 だが、それを魔物とアリエッタが妨害する。 「あなたたちの相手は私たちです!」 アリエッタの声と共に魔物は吼え、ティアたちを襲った。 「くっ!!」 ルークはシンクの攻撃に耐える。 以前、ルークはシンクとザオ遺跡で戦ったことがある。 だが、シンクの攻撃はパワーもスピードもあのときより上回っていた。 そして、あのとき感じなかった殺気を物凄く感じる。 本気だ。 シンクは本気で俺を殺ろうとしている。 「遅いよ!!」 「くっ!!」 キイィィィン そして、シンクの一発の蹴りがルークの剣を捉え、弾き飛ばした。 剣は弧を描いてシンクの近くへと落ちる。 それに気を逸らしたルークをシンクは見逃さなかった。 ルーク目掛けて、透かさず蹴りを一発喰らわした。 「ぐわぁっ!」 それを受けたルークは地面へと叩きつけられる。 ルークは咄嗟に受身を取ったが、本来だったら肋骨の一本や二本折れていてもおかしくない衝撃だった。 「「「ルーク!!」」」 ガイたちの声が聞こえる。 ルークは起き上がろうとした。 だが、もう遅かった。 いつの間にかルークの近くにシンクが立っていた。 そして、手にはルークの剣が握り、それをルークへと向けている。 「…………この程度なわけ?」 シンクはそう静かに言い放った。 「……アッシュより全然弱いじゃん。なのに…………」 なのに、ヴァンはルークを選んだ。 被験者という理由だけで。 レプリカという理由だけで、アッシュを殺そうとした。 自然とシンクの身体は怒りで震える。 そして、シンクは剣を握り直し、腕を振り上げる。 「……死ねよ……ここで。……アッシュの為に!!」 ルークはアッシュを傷付ける存在だ。 こいつが死ねば、もうアッシュは傷付かなくてすむのだ。 シンクは迷うことなく剣を振り下ろした。 「「「「「「ルーク!!」」」」」」 ティアたちの声が一斉に響いた。 それを聞いたルークは瞳を閉じた。 もうダメだと思ったから。 だが、いくら経っても痛みは襲ってこなかった。 ルークは恐る恐る瞳を開いた。 そして、目の前に広がる光景に息を呑んだ。 そこにあったのは、赤。 夕焼けのように赤い赤だ。 左の肩に剣が刺さり、白い服は血で見る見るうちに赤く染まっていく。 「…………なに……してるんだ……シンク?」 アッシュは苦しそうな声でそう言った。 「……アッシュ」 それにシンクは、驚いたような声を上げ、剣から手を放した。 アッシュの肩に刺さっていた剣はそれと同時に地面へと落ちた。 アッシュは薄く笑うと、シンクへと倒れ掛かる。 「アッシュ!!」 それをシンクは支えた。 「……シンク。……迎えに来るなら……もっと優しく……しろよな」 そう言ってアッシュはシンクに笑いかけた。 その笑みはとても苦しそうで、無理をしているのがわかる。 (あっ……やばい。なんだか……眠くなってきた…………) アッシュはそう感じ、瞳を閉じた。 そして、そのまま意識を手放した。 「……アッシュ? しっかりしてよ!! アッシュ!!!!」 それがわかったのか、シンクは必死にアッシュに呼びかけた。 その声は泣き声と言っていいくらい悲痛なもの。 「兄さま!!」 アリエッタもアッシュの許へと駆け寄り、アッシュに呼びかける。 「…………アリエッタ、行くよ」 シンクはアッシュを抱きかかえると立ち上がった。 「……僕はお前たちを許さない!!」 そして、シンクは仮面越しでルークたちを睨みつけてそう言った。 「……許さない。特にアッシュの被験者であるお前だけは……」 そうルークに言い放つとシンクは口の中で何を唱えた。 すると、床に描かれた譜陣が蒼白い光を放った。 そして、アッシュを連れたシンクたちの姿はその場から消えたのだった。 Rainシリーズ第4章第15譜でした!! ぎゃあぇ!!また、アッシュがボロボロですよ!! ドンだけ、無理をするんだうちのアッシュは!!(させてるのは、あんたでしょ!!) そして、シンクよ!ルークの逆恨みすんなよ!!アッシュが倒れたのアンタの不注意でしょうが!! と、とりあえず、ここで第4章は終了です;長いな〜。いつになったら終わるの、これ; 次回から、第5章突入です!! H.20 9/23 第五章へ |