俺と同じ翡翠の瞳が哀しみで揺れた。 「俺は……君を基にして作られた、複写人間。……レプリカだ」 〜Shining Rain〜 「なっ、何言っているんだ。おまえ……」 アッシュの言葉を聞いてルークはアッシュから手を離した。 レプリカ その言葉が嫌なくらい頭に響く。 「七年前、ヴァンは君を誘拐し、フォミクリーの技術を使って俺を創った。……全ては君を生かす為に」 「……ルークを生かす為? それはどういうこと……?」 アッシュの言葉に疑問を感じたティアはそう言った。 「……ND2000。ローレライの力を継ぐ者、キムラスカに誕生す。其は王族に連なる赤髪の男児なり。名を≪聖なる焔の光≫を称す。彼はキムラスカ・ランバルディアを新たなる繁栄に導くだろう」 すると、突然アッシュはルークたちがバチカル上で聞いた預言を言った。 「……ND2018。ローレライの力を継ぐ若者、人々を引き連れ、鉱山の町へと向かう。そこで若者は力を災いとしキムラスカの武器となって街と共に消滅す。しかる後にルグニカの大地は戦乱に包まれ、マルクトは領土を失うだろう。結果キムラスカ・ランバルディアは栄え、それが未曾有の繁栄の第一歩となる」 「「!?」」 続けてそう紡いだアッシュの言葉にルークとティアは驚いた。 それは初めて聞いた預言だった。 「秘預言には、アクゼリュスの消滅とルークの死が詠まれていた。それを知っていたヴァンは俺を創ってルークの代わりをさせることを思いついた」 「そっ、そんな! だから、兄さんはあなたを殺そうとしたの!! 預言に為に!!」 ティアの言葉にアッシュはコクリと頷いた。 「ああ、預言のことだったら、テオドーロさんのほうがよく知っていると思うよ」 「そっ、そんな……」 ティアは返す言葉を失った。 「……おまえはあのとき死ぬつもりだったのか?」 すると、静かな声でルークはそう言った。 「もし、あのとき俺たちが助けなかったら、おまえは死ぬつもりだったのか?」 それに、アッシュは無言で首を振った。 「だったら、何故だ! 何故、おまえはヴァンの命令に従っていたんだ!!」 俺に代わりにアクゼリュスを消滅させてのは何故なんだ。 「どうして、おまえはそこまでして俺を守るんだ?」 自分の命を危険に晒してまで、どうして俺を守るんだ。 「それは……秘密だよ」 ルークの問いにアッシュは笑って答えた。 本当は言ってしまったほうが楽なのかもしれない。 ルークのことが好きだからと。 でも、言えない。 そんなことを言ったら、きっとルークは困ってしまうと思うから。 俺はルークを困らせたくない。 「……じゃあ、俺もう行かないくちゃ」 ルークに背を向け、アッシュは歩き出そうとする。 「ま、待てよ!」 それをルークはアッシュの腕を掴んで止めた。 その途端、アッシュの視界が再び揺れた。 足に力が入らなくなり、その場に倒れる。 「「アッシュ!!」」 ルークとティアが同時に叫び、ルークはアッシュの身体を受け止める。 アッシュの身体を受け止めると同時、ルークにアッシュの熱が伝わる。 ひどい熱だ。 「馬鹿か! こんな身体で何処に行くつもりだ!!」 「……セント……ビナー…………」 アッシュは搾り出すようにそう言った。 「……早く……しないと……セント……ビナー……が…………」 アッシュはそう言うと瞳を閉じた。 「アッシュ!!」 「……大丈夫。眠っているだけみたい」 ティアは落ち着いた声でそう言った。 ティアはすぐさまアッシュに治癒譜術をかけてやった。 すると、アッシュの顔色が少しよくなった。 「…………ルーク。アッシュをお願い。私はお祖父様のところに行って来るわ」 そう言ったティアの声はひどく静かだった。 「……ああ、わかった」 ルークの返事を聞くとティアはテオドーロの許へと向かって行った。 「お祖父様!」 ティアはテオドーロのいる部屋のドアを勢いよく開け、そう言った。 「どうしたのだ、ティア?」 それに驚いたようにテオドーロはそう言った。 驚いたのはテオドーロだけでなく、部屋に一緒にいたガイたちもだ。 「お祖父様、本当なんですか? アクゼリュスの消滅は預言に詠まれていたというのは」 「「「「!?」」」」 ティアの言葉を聞いたガイたちは驚きの表情を浮かべた。 だが、イオンだけは哀しそうな顔をした。 「そうだが、それがどうしたか?」 「なんで、そんなこと黙っていたのですか! もし、アッシュが助けていなかったら、アクゼリュスの人々は死んでいたわ! これでは、ホドと同じじゃない!!」 ホド その言葉にガイの肩が微かに震えた。 「何故か? 預言は遵守されるべきもの。預言を守り、穏やかに生きることがローレライ教団の教えではないか。だが、死の預言を前にすると人は穏やかでいられなくなる」 「そんなの当たり前だわ! 誰だって死にたくないもの!!」 テオドーロの言葉にティアはそう叫んだ。 「それでは困るのだよ。ユリアは七つの預言でこのオールドラントの繁栄を詠んだ。その通りに歴史を動かさねば、来るべき繁栄も失われてしまう。我らはユリアのもとに外殻大地を繁栄に導く監視者。ローレライ教団はその為の道具なのだ」 「……だから、モースは僕を軟禁して戦争を起こさせようとした」 イオンは哀しそうにそう言った。 「……では、ヴァンもそれを知っていて、アッシュに……」 ジェイドは、険しい表情でテオドーロを見つめた。 「その通りです」 テオドーロは当たり前のように頷いた。 「……お祖父様は言ったわね。……ホドの消滅は、マルクトもキムラスカ聞く耳をもたなかったって! あれは嘘だったの!?」 ティアは涙を滲ませながら、そう叫んだ。 「……すまない。幼いおまえには真実を告げられなかった」 「……兄さんは、世界に復讐するつもりなんだわ。兄さん、言ってたもの。預言に縛られて大地など、消滅すればいいって……」 ティアがそう言ったときだった。 部屋全体が大きく揺れた。 「なっ、何!? 何が起こってるわけ!?」 それにアニスは驚いたように声を上げる。 「市長!!」 すると、部屋に一人の男が入ってきた。 「どうした! 何が起こったのだ!!」 「そっ、それが≪ユリアロード≫に魔物が出現しました!!」 「なんだと!!」 男の言葉にテオドーロは驚愕した。 「……それって、もしかして!?」 「おそらく≪妖獣のアリエッタ≫だろうな」 「でっ、でも、どうして、根暗ッタがここに?」 「それは本人に直接聞いてみればいいのではないでしょうか?」 「とっ、とにかく、ユリアロードに行ってみましょう」 ティアの言葉にガイたちは頷くと、ユリアロードを目指して部屋を出た。 「……何、やってるんだ、俺は……っ!」 アッシュをベッドに寝かせたルークはそう呟いた。 なんで、あんなことを言ってしまったのだろう。 本当はずっとアッシュのことが心配だったのに……。 素直にそれを言えなかった。 そして……。 ――――俺は……君を基にして作られた、複写人間。……レプリカだ。 あの哀しい声が頭に響く。 哀しい笑顔が目に焼きついて離れない。 アッシュを傷付けてしまった。 後悔しても、もう遅かった。 謝らなければいけない。 傷付けてしまったことを……。 「!!」 すると、突然大地が揺れた。 「なっ、なんだ!?」 ルークは声を上げた。 「まっ、魔物がいるですの! ボ、ボクわかるですの!」 ミュウは怯えたように身体を縮ませてそう言った。 「なんだって!?」 ルークは驚いた表情を浮かべた。 ミュウは仔供だが、一応チーグルという魔物だ。 だから、こういうことは、俺より敏感なんだろう。 「……ミュウ。その場所がわかるか?」 「は、はいですの!」 ルークの問いにミュウは慌ててそう答えた。 「なら、その場所に案内してくれ。……嫌な予感がする」 障気で包まれた魔界の街に魔物が現れるのは明らかにおかしい。 「はいですの!」 ミュウはそう返事をすると、ルークの肩に飛び乗った。 ルークは部屋にアッシュを残して、勢いよく階段を駆け下りて行った。 Rainシリーズ第4章第14譜でした!! やってしまったよ、ルーク;後悔するなら言わなきゃいいのに;(言わせてるの私だけどね;) まぁ、ティアは怒鳴るわ、怒鳴るわww まぁ、アッシュのことが好きだから仕方ないけどねww 次回で、第4章完結です(えぇ!?) H.20 9/23 次へ |