「……なあ、ディスト」 「? 何ですか、アッシュ?」 アッシュに話しかけられ、ディストはアッシュへと目を向ける。 「……俺、行きたいところがある」 「な、なに言ってるんですか! そんな身体でダメに決まってるでしょう!!」 「……だったら、俺一人で行く」 アッシュはそう言うと、ディストの膝から降りようとする。 「なっ、なにやってるんですか! ここから地面までどれくらい離れてると思ってるんですか!」 そんなアッシュをディストは必死になって止める。 「……じゃあ、連れてってくれる?」 「うっ; ……仕方ありませんね。で、何処に行きたいのですか?」 「ケセドニア」 〜Shining Rain〜 「着きましたよ、アッシュ。……って、アッシュ!?」 ケセドニアに着いた途端、アッシュは走り出し、ディストはアッシュを見失った。 「一体、どうしたらあんな状態で走れるんですか! ……とにかく、アッシュを捜さなければ!!」 もしも、アッシュの身に何かあったら、私が倒れてしまいますよ。 ディストはそんなことを考えながら、アッシュを捜し始めた。 「ハァ……ハァ……」 アッシュはケセドニアの市場を走り抜けた。 その目的はただ一つである。 (…………いた!) アッシュは、その目的の人物を見つけた。 タタル渓谷で俺とティアを乗せてくれた辻馬車の御者だ。 男は、客らしき人物と話し込んでいて、手にはペンダントが握られていた。 それは間違いなく、ティアのペンダントだった。 「待って!」 アッシュは、思わず叫んでしまった。 それに男と客は驚いたような顔をした。 「……あ、あの、そのペンダント。俺に売ってもらえませんか?」 「な、何言ってるんだよ、あんた。これは私が先に見つけたものなんだよ」 「それは俺もわかってます。でも、俺はそのペンダントじゃないとダメなんです。それは大切なものなんです!」 ティアにとって大切なペンダント。 それを辻馬車に乗るためだけに手放してしまったのだ。 だから、取り返してあげたいのだ。 「そんなに大切なものなのか?」 「……はい」 「……仕方ないな、諦めるよ。それはこいつに売ってやんなよ」 「あ、ありがとうございます!」 客の言葉を聞いてアッシュは、笑顔でそう言った。 「じゃあ、五万ガルドになるよ」 「えっ?」 「なんだよ、持ってないのか?」 「い、いや。持ってますよ;」 男の言葉にアッシュは、その金額を取り出し男に渡した。 「はい、確かに五万ガルドだな。まいどあり」 金額を確認した男はアッシュにペンダントを手渡した。 (……よかった) ティアのペンダントを取り戻した。 しかも、あのときよりも五万ガルドも安く買い戻すことが出来たので正直驚いた。 あとは、これをどうやってティアに渡すかという問題だけとなった。 「アッシュ!」 すると、遠くの方からディストの姿が現れた。 「ディスト。……どうしたの? 息荒いよ?」 何故か息を切らしているディストを見てアッシュは首を傾げた。 「だ、誰のせいだと思っているんですか! あなたがいきなりいなくなるから、私はあなたを捜し回っていたんですよ!!」 「えっ? そうなの? ごめんな、ディスト」 「……まぁ、いいですけど。……で、それはなんですか?」 ディストはアッシュが手に持っているペンダントを指差した。 「……何って、ペンダント」 「って、それは見てればわかりますよ。もしかして、それがここへ来た理由ですか?」 「うん!」 ディストの問いにアッシュはコクリと頷いた。 「そ、そんなものなんかいつでも買えたでしょうが! アッシュ、あなたはもう少し自分の身体を大切にしなさい!!」 ディストはそう叫ぶと、アッシュの腕を掴んで歩き出した。 「えっ? ちょ、ちょっと、ディスト。何処に行くの?」 「宿屋に決まってるでしょうが! 少しは、そこで身体を休めなさい!!」 ディストは、そう言うと宿屋へと向かって歩き出した。 キムラスカ領、カイツール軍港。 「やっと、カイツール軍港に着きましたね。もうヘトヘトですよぅ」 アニスは港に着いた途端、そう言った。 すると、港のほうでヴァンの姿を見つけた。 ヴァンもルークたちに姿を見つけ、こちらに近づいてきた。 「ずいぶん、到着が遅かったが、何かあったのか?」 「いえ。ただ、ルークが六神将のアリエッタに攫われただけですよ」 ヴァンの問いに、ジェイドは何故か笑みを浮かべてそう言った。 「アリエッタが?」 ジェイドの言葉にヴァンは眉をひそめた。 「後、≪烈風のシンク≫の姿もありましたよ」 「……兄さんがそうさせるように言ったんじゃないの?」 ティアはヴァンを疑うような口調で言った。 「……ティア、何度言ったらわかるんだ。私は今回の件は六神将とは全く関わっていない」 「でもっ!」 「ティア、もういいだろう? 俺はなんともないし。こんなところで揉めてないで、さっさとバチカルに向かった方がいいと思うが?」 「…………そうね、ごめんなさい」 ティアはルークの言葉に素直にそう言った。 「船は明日の早朝に出発するとしよう。この港にあるのは簡易施設だが、今日のところはそこで身体を休めるといい」 ヴァンはそう言うと、整備士らしき人物のところへと行ってしまった。 そのときのヴァンが一体何を考えていたのかは、ルークにはわからなかった。 Rainシリーズ第3章第7譜でした!! これ書いた後で、微妙に間違っていることに気が付いた。 辻馬車がティアのペンダントを売るのはグランコクマでしたね; 直すのが面倒なのと、後々の展開がややこしくなるのでこのままにしておきましたww ソファで移動しているはずなのに、なんでディストは息荒いだろう? H.19 9/14 次へ |