ルー……ク……ルー……ク! 聞き覚えのある声が俺の意識を徐々に覚醒させていった。 〜Shining Rain〜 ルークが目を覚ますと、そこには心配そうに揺れるサファイアブルーの瞳があった。 「ティア……?」 「……よかった、無事のようね」 ルークの言葉にティアは安心したかのように息をついた。 「ここは……!」 ルークは身体を起こして辺りを見渡すと息を呑んだ。 そこには、見覚えのある部屋に巨大な譜業装置が設置されていた。 「……なんで、こんなものが別荘に……」 そう口にした途端、ルークは頭痛に襲われた。 ――――出して! 檻のような場所に閉じ込められた幼い頃の自分が誰かの向かって叫んでいた。 ――――ここから出してよ! なんでこんなことするの!! どんなに叫んでも、俺の悲痛な叫びはあの人には届かなかった。 そこには、自分に向けられる冷たい目線しかなかった。 あの人は……。 ズキン あの人のことを思い出そうとしたら、さらに頭に激痛が走った。 まるで、これ以上思い出させないようにするかのように……。 ルークはその痛みに思わず膝をついた。 「ルーク!!」 ルークの只ならぬ様子を見て、ティアとガイはルークに駆け寄る。 「……大……丈夫だ。……ただ、頭痛がするだけだ……」 途切れ途切れに言葉を繋げ、何とか呼吸を整えようとする。 何も考えないようにするとスッと痛みはひいていった。 「……もう、大丈夫だ」 ルークは立ち上がると、ティアとガイを見てそう言った。 「本当に大丈夫か? 少し、顔色が悪いぜ?」 「ああ、もう頭痛はなくなった」 「変ですねぇ。この譜業装置を見た途端頭痛がするだなんて」 それまで、黙っていたジェイドが眼鏡の位置を直しながら言った。 「……それって、ルークの誘拐と何か関係あるのでしょうか?」 「可能性は高いでしょうね。ルークは誘拐されていたときのことを覚えていないと、言っていましたし。この譜業装置を見て、そのときのことを突発的に思い出したのでしょう。頭痛がしたのは、その記憶を誰かが故意に消したからでしょう」 「……あれが俺の記憶…………」 俺に忘れてしまった空白の時間。 「さて、ルークも助け出したことですし、屋上へ行きますか。さすがに、アニス一人では心配ですし」 ジェイドの言葉に一同は頷き、急いで屋上へと向かった。 「とりゃ!!」 アニスは一匹のフレスベルグを薙ぎ払った。 「ちょっと! アリエッタ!! いい加減にしなさいよね!!」 アニスはアリエッタに怒鳴った。 「アニスのバカ! イオン様を返してよぉ!!」 アリエッタは、ライガに乗ったままアニスへと突っ込む。 「もう! アリエッタのわからずや!!」 それにアニスは迎え撃つようにアリエッタへと走る。 だが、それは囮にしか過ぎなかった。 一匹のフレスベルグがアニスの横を通り過ぎた。 そして、後ろにいるイオン目掛けて飛んでいく。 (しまった!) この距離からでは、とても間に合わない。 「イオン様!!」 アニスが諦めかけたそのときだった。 「させるか!!」 声が聞こえたかと思うと、フレスベルグに向かって炎が飛んだ。 炎はフレスベルグの翼に当たり、フレスベルグの翼を焦がした。 何が起こったのかと思い、アニスは炎が飛び出したほうへと視線を向ける。 そこにいたのは、燃えるような紅の長髪の少年の姿だ。 「ルーク様!!」 アニスは、思わず彼の名を叫んだ。 「アニス、待たせたな」 ルークは口元に笑みを含んでそう言った。 そんなルークをアリエッタは、ぬいぐるみを強く抱き締め、ルークを睨みつけた。 「アリエッタのお友達に火を噴いた! ……許さないんだから!!」 アリエッタの言葉に同意するかのように、ライガは吼えた。 そして、そのままルークへと突っ込もうとする。 「アリエッタ」 すると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえ、アリエッタは静止する。 振り返ると、そこには萌え立つような緑色の髪の少年の姿。 「シンク……」 「アリエッタ、ここは一旦退くよ」 シンクはアリエッタに歩み寄ってそう言った。 「でも……イオン様を……」 「そんなのいつだって出来るさ。それより、アリエッタが怪我でもしたらアッシュが心配するよ」 「兄さまが?」 イオンに視線を送っていたアリエッタだったが、アッシュの名前が出た途端、シンクへと視線を向けた。 「そう、だから行くよ」 「……わかりました……です」 アリエッタは、シンクの言葉に頷いた。 そして、シンクは視線をルークへと向ける。 仮面を付けているので、素顔はわからないが、ルークはシンクに睨まれている気がした。 「……行くよ、アリエッタ」 シンクはそう言うと、地面を蹴って屋上から消えた。 アリエッタはライガに乗ったまま下へと降りていった。 「おや? もう、終わってしまいましたか?」 すると、階段からジェイドの姿が現れた。 「……お前わざとだろ」 「いやですねぇ。私はこれでも年寄りですよ♪ もう少し、年寄りは労わるものですよ♪」 ルークの言葉にジェイドは笑ってそう言った。 (こいつ、絶対わざとだ!) ガイとティアは俺に追いついていないからいいが、ジェイドは俺についてこれるなら少しは手伝え!とルークは思った。 「あの、ルーク。……ありがとうございます」 「……別に、それより怪我はないか?」 「はい! ルークのおかげです!」 ルークの言葉にイオンは頷いた。 「……ふう、やっと着いた……って、もう終わってたか?」 すると、ジェイドの後ろからガイとティアの姿が現れた。 「そのようですよ。では、さっさと港へ向かいますか♪」 そう言うと、ジェイドはさっさと階段を降りていった。 「……ったく、いくぞ。イオン、アニス」 「はい! ルーク!」 「はぁ〜い!ルーク様ぁ♪」 ルークの言葉にイオンとアニスはそう言い、ジェイドたちを追いかける形で歩き出した。 Rainシリーズ第3章第6譜でした!! ルークが誘拐のときのことを少し思い出しました。 やっぱり、コーラル城に言ったら少しは記憶を取り戻すような気がしたので。 そして、アニスとイオンとも合流です!! シンクがルークに敵意剥き出しですねwwww H.19 9/5 次へ |