アニスは階段を一気に駆け上がった。 そして、やっと屋上へと着いた。 そこにいたのはフレスベルグとライガの二匹の魔物と桃色の長髪の少女の姿があった。 そこに燃えるような紅の髪の少年の姿は何処にもなかった。 はやり、ルーク様は別の場所にいるようだ。 「……他の人たちは何処です?」 少女、アリエッタはアニスに話し掛ける。 「ふん。アリエッタ一人だったら、このアニスちゃん一人で十分なのよ!」 「……そうですか。だったら、アニスを倒して、イオン様を取り返すもん!アニス、覚悟!!」 「……何も知らないでっ! わからずや!!」 アニスはトクナガを地面に置き、巨大化される。 「いっけえ!」 そして、トクナガに乗り、地響きをたててアリエッタへと突っ込んだ。 〜Shining Rain〜 「…………なるほど。音素振動数まで同じとはねぇ。アッシュは完璧な存在ですよ」 頭の上でディストの声が響き渡る。 ルークとの同調フォンスロットを開く作業は、アッシュの身体にかなりの負担を与えた。 あのときは、自分は眠らされていたのでわからなかったが、こんなに苦痛を感じるとは思っていなかった。 いつも、一方的に繋げられる『アッシュ』との回線の痛み以上にこれはきつい。 「……アッシュ、大丈夫か?」 心配そうな声でシンクはアッシュに話し掛けてきた。 「……ああ、大丈夫だ」 アッシュはそれに答え、台から降りる。 だが、その途端視界が揺れ、アッシュは体勢を崩した。 「アッシュ!!」 シンクは咄嗟にアッシュの腕を掴み、アッシュを支えた。 「バカっ! 無理して立つなよ!!」 「……大……丈夫……だって」 「あなたの大丈夫は信用出来ませんよ! シンク、アッシュを私に渡しなさい! アッシュを連れて帰りますから!!」 「べ……別に……いい…………」 「よくありません! さぁ!!」 シンクは少し嫌だったが、アッシュのことを思ってアッシュをディストに渡した。 「シンク、後の処理は頼みますよ!!」 ディストはアッシュを自分の膝の上に置くとそう言って部屋から出て行った。 アッシュを見ると微かに口元が動いていた。 声にならない、言葉。 でも、それはシンクにはちゃんと伝わった。 「アリエッタを頼む」と……。 彼はあんな状態になっても、人のことばかり気にする。 「……ったく、仕方ないなぁ」 シンクはそう呟くと、さっきまでディストが操作していた譜業装置を操作始める。 これを使った証拠を消しておかないといけないから。 その作業も、ほとんどディストがやっていた為、すぐに終わってしまった。 そして、シンクの目にふとルークが映った。 アッシュの被験者の彼。 彼は何も知らずに安らかに眠っている。 彼をこんなにも近くで見るのは初めてだ。 (……やっぱり、似てる) アッシュに、そっくりだ。 でも、彼はアッシュとは違うのだ。 そして、シンクはアッシュの行動を思い出す。 彼をここに連れてきたアッシュは、彼をとても大事そうに抱えていた。 この台に置くときも、まるで壊れ物を扱うかのように優しく乗せていた。 彼へと向けられるアッシュの視線は、仮面を付けていてもわかるくらい優しいものだった。 それが妙にムカついた。 アッシュにそんな視線を向けられる彼に……。 (今なら殺れる……) この部屋にはシンクとルークしかいない。 ヴァンはルークに手を出すなといったが、そんなことは僕には関係ない。 僕にとって、彼は邪魔でしかないのだから……。 そして、シンクはルークにゆっくりと手を伸ばした。 そのとき 「ルーク!!」 声と共にガイが部屋に飛び込んできて、躊躇うことなく剣を抜きシンクを斬りつけた。 シンクはそれを避けたが、シンクの服の胸の部分は裂けていた。 乾いた音が響き渡り、ガイは床に落ちた円盤状の板を拾い上げると、微かに眉を顰めた。 「しまった!」 シンクはそれを取り返そうと、ガイへと攻撃を仕掛ける。 ガイもそれに負けじと剣を振るう。 シンクはそれを紙一重で避けては、その合間合間に円盤へと手を伸ばすが、ガイはそれを許さないかのように剣を振った。 そして、そのうちの一刀がシンクを捉え、シンクの仮面を弾き飛ばした。 仮面を弾き飛ばされたシンクは慌てて顔を手で覆い隠した。 「おまえ……?」 シンクの素顔を見たガイは、驚いたような声でそう言った。 「ちっ」 「うぉっ!」 シンクの蹴りが、ガイの顔を掠めた。 その隙にシンクは仮面を拾い、また構えた。 「おや? なんだか、楽しそうですねぇ。私も交ぜてもらえますか?」 場違いの声が部屋の中に響くと部屋にジェイドとティアが入ってきた。 「ちっ……ここは一先ず逃げるか」 そう言うとシンクは床を蹴り、並の人間では届かぬ高いところに指だけでぶら下がった。 「待て!」 ガイの声にシンクは皮肉めいた笑みを浮かべた。 「やだね。今回の件は正式な任務じゃないんでね。……この手であいつを殺せないのが残念だけどね!」 シンクはルークに視線を向けてそう言うと、暗闇へと消えていった。 「ダメじゃないですか。取り逃がしては」 「あ、あんたなぁ;」 ジェイドの言葉にガイはガクッとなった。 「これは……!」 ジェイドはルークのほうへと視線を向けると驚いたような声を上げた。 「大佐、これがなんだかわかるんですか?」 「……いえ……確信が持てないと。……いや、確信出来たとしても……少し考えさせてください」 ジェイドはそう呟くと機械へと近づいた。 「……とりあえず、今はさっさとルークを助け出して、イオン様たちと合流しましょう」 そう言いながら、ジェイドは何の躊躇いもなく、その機械を操作する。 それはまるで、最初からその操作方法を知っていたかのように。 (まさか……ありえない) こんなところで、自分が犯してしまった罪を目の当たりするなんて……。 機械を操作するジェイドの手は微かに震えていた。 Rainシリーズ第3章第5譜でした!! 何気にシンクがルークに嫉妬してます! 可愛いですよねwwでも、殺そうとしちゃだめだよ、シンク! そして、ジェイド。この辺りで、ルークとアッシュについてオリジナルとレプリカの関係を疑いだすと思います。 ゲーム本編ではタルタロスから疑っているけど、こっちのアッシュは仮面付けてるしww H.19 8/24 次へ |