アッシュはルークを抱え、コーラル城の中を歩く。
そして、目的地でもある地下室の扉をゆっくりと開けた。






〜Shining Rain〜








「おや、アッシュ。早かったですね」

扉を開けると、そこには一人掛けソファに座ったディストとシンクの姿があった。

「シ、シンク!? どうしてここに?」
「ディストに頼まれたんだよ。アッシュとルークとの同調フォンスロットを開くのを手伝ってくれって。……僕がいるとまずいの?」
「い、いや、そうじゃなくて。ちょっと、驚いただけだよ;」

シンクの言葉にアッシュは慌てて言葉を紡ぐ。

「アッシュ、さっさと被験者(オリジナル)をその台に乗せてください」
「えっ? あっ、うん」

アッシュはディストに言われた通り、ルークを台へとゆっくりと乗せた。
その台にルークの燃えるような紅の髪が美しく散らばった。
今は閉じられている瞳が開いたら、綺麗な翡翠色が現れるだろうに……。
今、それを見ることが出来ないのが残念だ。

「そういえば、アッシュ。私が作った睡眠薬を使ってくれましたか? よく、眠れたでしょ?」

ずっと、ルークを眺めていると、アッシュはディストに話しかけられた。

「……いや」
「な、なんでですか! 私が折角アッシュのことを思って作ったのに!!」

アッシュの言葉を聞いたディスとは頭を抱えて叫ぶように言った。

「ルークをここへ連れて来るのに使ったから……」
「そ、そうですか……」

アッシュの言葉を聞いて、何故かディストはルークを睨みつけた。

「……どうでもいいから、さっさと始めようよ」

ずっとその様子を傍観していたシンクは溜息をつくと、怒っているような声でそう言った。

「はいはい、わかりましたよ。アッシュは被験者(オリジナル)の隣に寝てください」
「えっ///」

ディストの言葉にアッシュは、思わず赤面してしまった。
仮面を付けてなかったら、きっとおかしいと思われていただろう。

「何してるんですか? さっさと、始めますよ」

ディストは、譜業装置(ふごうそうち)を動かす機械のところへ既にいた。

「あ、ああ。……アリエッタ」
「はい?」

突然、アッシュに名前を呼ばれて、アリエッタはキョトンとした顔をした。

「もしかしたら、彼を助けにイオンたちがここへ来るかもしれない。だから、時間稼ぎをしてくれないか?」
「はいです! アリエッタ、頑張るです!」

アリエッタはアッシュの言葉に元気よく頷くと、部屋から走って出て行った。

「……じゃあ、始めるか」

















「……ここが、コーラル城? 何が不気味〜」

コーラル城へと着いた途端、アニスはそう呟いた。
外壁には蔦が這い、窓は殆どが汚れて曇っていた。
昔は庭だっただろう場所も荒れ果て、草花が生い茂っている。

「……長く誰も住んでいないはずなのに、人の手が入っているみたいだわ」

ティアは辺りを見渡してそう言った。

「そのようですね。この庭、道が出来ていますし」

ティアの言葉に同意するかのようにジェイドは言った。
確かに、ジェイドの行ったとおり、一見無人のまま放置されているように見える庭だが、門から入り口までに一筋の道が作られていた。

「……どうやら、ここで正解のようですよ」

ジェイドの言葉を聞いたティアたちは、入り口へと視線を向ける。
そこにいたのは、桃色の長髪の少女の姿。
≪妖獣のアリエッタ≫だ。
アリエッタは手を上にかざすと、魔物がイオン目掛けて飛んできた。

「イオン様!!」

それにアニスは背中からトクナガを下ろして、地面に置き、それを巨大化させてトクナガに乗りその魔物をぶん殴った。

「いきなり、襲い掛かるなんて、ひどいじゃん!アリエッタ!!」
「……ひどいのは……アニスのほうだもん!」

アニスの言葉にアリエッタはぬいぐるみを強く抱き締め、アニスを睨みつけた。

「アリエッタの……アリエッタのイオン様とっちゃったくせにぃ!」
「アリエッタ、違うんです!」

アリエッタの言葉を聞いたイオンは叫ぶように言った。

「あなたを導師守護役(フォンマスターガーディアン)から遠ざけたのはそういうわけではなくて……」

徐々にイオンの声は哀しいものへと変わっていった。
言えない。
言ってしまったら、彼女は傷付いてしまう。
僕は本当は……。

「…………」

アリエッタは再び手をかざした。
それを見たティアたちは再び魔物が襲ってきても大丈夫な体勢をとる。
しかし、今度は魔物はティアたちには襲ってこず、アリエッタの近くへと舞い降りた。
アリエッタが魔物に掴まると、魔物は再び上空へと上がる。

「ルークを返して欲しいなら、ここの屋上へ来い……です。来ないと……ルークを……殺します」

アリエッタはそう言い残し、屋上へと向かって行った。

「大佐ぁ。どうしますかぁ?」

アリエッタがいなくなった後、アニスはジェイドに話しかけた。

「……そうですね。アレが本当だったら困りますしねぇ。……とりあえず、二手に分かれますか?」
「じゃあ、アニスちゃんは屋上へいきま〜す♪ 根暗ッタをこらしめないといけないし☆」
「僕もアニスと一緒に屋上に行きます」

アニスの言葉に続いて、イオンはそう言った。

「俺はルークを探すな。それなりに、この城には詳しいしな」
「私はこの城をいろいろ調べてみたいですね。ティア、あなたはどうしますか?」
「えっ? 私は……」

ジェイドの問いにティアは言葉につまった。
ルークのことも心配だけど、アニス一人でイオン様を守るのも難しいだろう。
とても、選ばなかった。

「ティア、ルーク様のことが心配だったら、そっちに行ってもいいよ。私は一人でも大丈夫だから」

そんなティアの心境を感じ取ったのか、アニスはティアを見て言った。

「でっ、でも、アニス……」
「ティア、私を誰だと思ってるの? アニスちゃんは導師守護役(フォンマスターガーディアン)だよ! イオン様のことはちゃんとアニスちゃんが守るから」
「アニス……ありがとう」
「これで、決まりですね。では、いきますか」

こうして、アニスとイオンは屋上へ、ティア、ガイ、ジェイドは、ルークを探すためにコーラル城へと入っていった。
























Rainシリーズ第3章第4譜でした!!
書いた後に気づいてしまったよ;
アリエッタのいる屋上ってルークのいる部屋を通っていくんだったんだ!!
ダメじゃん、アニスが先にルークを見つけちゃうじゃん!!
というわけで、コーラル城のつくりは微妙に変わってることにします;(おい!)


H.19 8/7



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