カイツール、キムラスカ軍港 ルークたちはやっとそこへ辿り着こうとしていた。 ふと、ルークは空を仰いだ。 すると、上空に数匹の魔物がこちらに向かって飛んでくる。 魔物の目標は……。 「イオン! 危ない!!」 〜Shining Rain〜 「えっ?」 イオンはルークの声に振り向こうとしたが、ルークに押されて尻餅をついた。 「ルーク! 何をす――」 ティアはルークに向かって怒鳴ろうとしたが、ルークの姿は何処にもなかった。 「……どうやら、上のようですよ♪」 ジェイドは空を仰いで楽しそうにそう言った。 ジェイドの言葉にティアたちも空を見ると、そこには魔物に捕まったルークの姿があった。 「ルーク!!」 ティアは思わず声を上げた。 「あ〜っ! 根暗ッタ!!」 アニスが一匹の魔物に指差して言う。 その魔物には、桃色の長髪の少女の姿があった。 ≪妖獣のアリエッタ≫だ。 「ちょっと、根暗ッタ! 何すんのよ!! ルーク様を放しなさいよ!!」 「アニスのバカ! アリエッタ、根暗じゃないもん!!」 アニスの言葉にアリエッタは泣きそうな顔で言った。 「アリエッタ、お願いです! ルークを放してください!!」 「イオン様……」 イオンの顔を見たアリエッタは哀しそうな顔をする。 「……ごめんなさい、イオン様。それは出来ない……です」 イオン様の言うことも聞いてあげたい。 でも、これは兄さまがアリエッタに頼んでこれたことだから。 アリエッタは兄さまの力になりたい。 「くっそ! 放せっ!!」 すると、ルークは魔物から逃れようともがきだす。 それを阻止しようと、魔物はルークを強く掴む。 「くっ……!!」 それはルークの身体に激痛を与えた。 「ダメ! 彼を傷つけたら!!」 それを見たアリエッタはその魔物に怒鳴った。 アリエッタが怒鳴ったことに魔物は驚き、ルークを掴んでいた力を緩めた。 ――――誰も傷付けるに、ルークをコーラル城に連れて来れるよね? 誰も傷付けない。 それが兄さまとの約束。 アリエッタは、ポケットから青い袋を取り出し、袋の中を探る。 その中には、液体の入った瓶が一つ入っていた。 アリエッタはルークを捕らえている魔物に近づき、それを無理矢理ルークに飲ませた。 その途端、ルークはひどい眠気に襲われた。 そして、ルークは意識を手放した。 それを確認したアリエッタは、急いでコーラル城へと向かうように魔物に指示を送る。 魔物はそれに従い、コーラル城へと向かって飛ぶ。 「ルーク!!」 それを見たティアたちは、ルークを助けようと魔物を追いかける。 だが、それは魔物たちに遮られ、出来なくなった。 「ルークっ!!」 ガイはルークが消えた方向に叫んだ。 コーラル城入り口前 そこにアッシュはいた。 (……アリエッタは、ちゃんと約束を守ってくれただろうか?) 俺の記憶では、アリエッタはカイツールの軍港を襲い、そこにいた整備士を人質に俺達をここに誘き寄せた。 もう、そんなことをして欲しくなくてああ頼んだのだ。 すると、カイツールのほうの空から数匹の魔物が飛んできた。 そして、魔物には美しい桃色の長髪の少女と燃えるような紅の長髪の彼の姿があった。 魔物は自分の近くに着地した。 「兄さま!」 アリエッタはアッシュを見つけると、嬉しそうに駆け寄ってきた。 「アリエッタ、ご苦労様」 それにアッシュは笑みを浮かべて迎えてやる。 「兄さま、ルークを連れて来ましたです」 「ありがとう、アリエッタ。……誰も傷付けなかった?」 「はい。……でも、ルークが逃げようと暴れて、それを阻止しようとお友達が強く握って……」 アッシュの問いにアリエッタは泣きそうな顔でそう言った。 「……ごめんなさい……です。……兄さまと約束……したのに……」 「アリエッタ……」 俺はバカだ。 アリエッタは俺との約束と必死で守ろうとしてくれていたのに。 それを疑ってしまっただなんて……。 「ありがとう、アリエッタ」 アッシュはアリエッタの頭を優しく撫でた。 「でも……アリエッタは……」 「アリエッタは俺との約束を守ろうとしてくれたんだろ?」 「……はい」 「だったら、アリエッタが謝ることはない。……頑張ったね」 アッシュがそう言うと泣きそうだったアリエッタは少しだけ意味を浮かべた。 「さぁ、アリエッタ。中に入ろう」 アッシュはルークを抱きかかえると、アリエッタにそう促す。 「はいです」 アリエッタはそれに頷き、アッシュの隣に並んで、コーラル城の中へと消えていった。 「漸く、片付きましたね」 魔物との戦闘が終わり、ジェイドはそう言った。 「ルーク様、一体何処に連れてかれちゃったんだろう?」 「魔物が飛んでいった方向から考えると、多分コーラル城じゃないか?」 アニスの問いにガイは剣を鞘に収めながら答えた。 「……コーラル城?」 「ああ。コーラル城はファブレ公爵の別荘だよ。前の戦争でこの辺りに戦線が迫ってきて放棄されたんだ。……そして、七年前、誘拐されたルークが発見されが場所でもある」 「だとすると、そこに連れて行かれた可能性が高いですね……」 ジェイドは眼鏡の位置を直しながら、そう言った。 「ああ、早くルークを助けに行こうぜ」 ガイの言葉にティアたちは頷き、コーラル城を目指して歩き出した。 Rainシリーズ第3章第3譜でした!! やった〜、ルークが攫われたよ♪(別に喜ぶことではない;) このほうが断然に面白いですよね!! H.19 7/27 次へ |