「ルーク様、おはようございます」 翌日の朝、ルークが起きて部屋から出ると、メイドがルークのところにやってきた。 「おはよう」 「旦那様から伝言を預かっております。お目覚めになられた次第、登城するようにとのことでした」 ルークが挨拶をするとメイドは少し笑みを浮かべてそう言った。 「俺、屋敷の外に出ていいのか?」 屋敷から出られないと思っていたルークは驚きながらそう言った。 「よろしいですよ?」 「そうか……。わかった、下がれ」 ルークがそう言うと、メイドは一礼をして持ち場へと戻っていった。 (……さっさと、いくか) ルークは、屋敷の入り口へと向かって歩き出した。 〜Shining Rain〜 昨日、ルークたちはバチカル城へと訪れた。 すると、ルークたちの前に誰かが王、インゴベルトと面会していた。 それは、大詠師モースだった。 ルークたちはモースがインゴベルトに変なことを吹き込むといけないと思い、無礼を承知で謁見の間へと殴りこんでいった。 それによって、何とか無事に親書をインゴベルトに渡すことが出来たのだ。 すると、城前の広場でティアとモースが話をしている姿を見つけた。 ルークは、二人に近づくと徐々に話の内容がハッキリ聞こえてきた。 「では、第七譜石はアクゼリュスに……?」 ティアの言葉にモースは頷く。 「そうだ。おそらくルークがアクゼリュスに……」 「俺がどうしたって?」 自分の名前が出てきたので、ルークは思わず声を出してしまった。 それを聞いたモースは驚いたような表情を浮かべ、ルークを見た。 「こ、これはルーク様」 モースは昨日とは打って変わって媚びるような態度をとった。 「お待ちしておりました。カーティス大佐なら、もう中でお待ちですぞ」 「ジェイドが……?」 「参りましょう」 モースはそう言うと先頭をきって歩き出した。 ティアもモースの後について歩き出す。 ティアの表情はいつもの変わらないはずなのに、何故か妙に硬く感じた。 「おお、待っていたぞ、ルーク」 謁見の間に入ると、インゴベルトの声が聞こえてきた。 その隣には、濃い緑の瞳に肩のところでそろえられた金髪の少女が座っている。 彼女は、ナタリア。 俺に幼馴染で、婚約者でもある。 「どうしたんです、伯父上?」 「昨夜、緊急議会が召集され、マルクト帝国と和平条約を締結することが合意しました。そして、その第一歩として、キムラスカ・ランバルディア王国は新書にあった救援の要請に応えることにしました」 ルークの言葉に内務大臣はそう口を開いた。 「救援?」 「現在、マルクト帝国のアクゼリュスという鉱山都市が障気なる大地の毒素で壊滅の危機に陥っているとここと。マルクとでも救援活動を行っているものの、アクゼリュスへ繋がる街道が障気で完全に覆われてしまい、遅々して進んでいない模様です。ですが、アクゼリュスは元々は我が国の領土。当然、カイツール側からも街道が繋がっています」 「それで、こっちに救援の要請があったわけか。あっちの人間を助ければ、和平の印にはなるだろうな。……だが、それと俺に何の関係が?」 「ルーク。陛下はありがたくも、おまえをキムラスカ・ランバルディア王国の親善大使に任命されたのだ」 ルークの問いに父、ファブレ公爵が何処か重々しくそう答えた。 「俺を親善大使にですか?」 「そうだ。引き受けてくれるな?」 「…………わかりました」 インゴベルトの問いに少し躊躇ったが、ルークはそう答えた。 それを聞いたインゴベルトは安堵した表情を浮かべた。 「よく決心してくれた、ルークよ。実はな、この役目、おまえでなければならないわけがあるのだ」 「……えっ?」 「この譜石を見なさい」 ファブレ公爵がガラス板の欠片のようなものをルークに見せた。 「これは、我が国の領土に降った、ユリア・ジュエの第六譜石の一部だ。……ティア、この譜石の下のほうに記された預言を詠んでくれないか?」 「……はい」 ティアはそう返事をすると譜石へと歩み寄り、譜石に書かれている文字を指でたどり始めた。 「ND2000。ローレライの力を継ぐ者、キムラスカに誕生す。其は王族に連なる赤髪の男児なり。名を≪聖なる焔の光≫を称す。彼はキムラスカ・ランバルディアを新たなる繁栄に導くだろう」 ≪聖なる焔の光≫ それは古代イスパニア語でルークを意味する。 「……ND2018。ローレライの力を継ぐ若者、人々を引き連れ、鉱山の町へと向かう。そこで……。この先は欠けています」 「結構」 ティアがそう言うと、インゴベルトは頷く。 「つまり、ルーク。おまえは選ばれた若者なのだよ」 「ルークよ。今まではその選ばれた力を狙う者から護るため、やむなく軟禁生活を強いていたが、今こそ英雄となる時だ」 ファブレ公爵は譜石を下ろすと、まっすぐルークを見つめてそう言った。 「……英雄ねぇ」 その言葉を聞いたジェイドは嫌な笑みを浮かべた。 それを見た内務大臣は眉をひそめた。 「何か? カーティス大佐」 「いえ、何も。……それでは、同行者は私と、あとは誰になりましょう?」 「ローレライ教団としては、ティアとヴァンを同行させたいと存じます」 モースはここぞとばかりに前に出てそう言った。 「ルーク。ガイを世話係に連れて行くといい」 「……ああ、それでいい」 ファブレ公爵の言葉にルークはそう返事をした。 「お父様!」 ナタリアはそう言って勢いよくその場に立ち上がった。 「やはり、わたくしも使者として一緒に……」 「それはならぬと申したはず」 ナタリアの言葉をインゴベルトはキッパリとそう言った。 インゴベルトの言葉と態度にナタリアは俯いた。 「……では、伯父上。俺たちは失礼します」 その様子を見たルークは、インゴベルトへそう言った。 「うむ。頼んだぞ、ルーク」 インゴベルトの言葉を聞き、ルークたちは城を後にした。 このとき、ユリアの詠んだ預言という歯車がずれ始めたことを。 世界の運命が変わり始めたことを。 この場にいる誰も知らなかった。 唯一、それを知っているものは、夕焼けのように赤い髪を持つ少年だけであった。 Rainシリーズ第3章第12譜でした!! ルークたちがアクゼリュスに向かうことになりました。 この話では、ヴァンは捕まりませんでしたvv ゲームではヴァンを餌にルークをアクゼリュスへと向かわせましたけど、こっちのルークはそれは必要ないと思ったからです。 これにて、第3章は終了です!!次回からはいよいよ第4章!!長いよ!! とりあえず、アクゼリュス崩壊まで書こうと思ってますvv H.19 11/21 第四章へ |