「やっと帰ってきたのか……」 水平線の向こうにある港を見てルークは呟いた。 帰ってきたのか。 俺に家に。 バチカルに……。 〜Shining Rain〜 「お初にお目にかかります。キムラスカ・ランバルディア王国軍、第一師団団長のゴールドバーグと申します。この度は、無事のご帰国、おめでとうございます」 船を降りると、赤い軍服を着た禿頭で髭を生やした男と、淡い金髪の女性がルークたちを出迎えた。 「アルマンダイン伯爵より鳩が届きました。マルクト帝国から和平の使者が同行しておられるとか」 ゴルードバークの言葉を聞くとイオンは一歩前に歩み寄った。 「ローレライ教団導師イオンです。マルクト帝国皇帝ピオニー九世陛下に請われ親書をお持ちしました。国王、インゴベルト六世陛下にお取次ぎを願えますか?」 イオンは凛とした声でそう言った。 「無論です。皆様のことは、このセシル将軍が責任を身って城にお連れします」 「セシル少将であります。よろしくお願いします」 セシルと呼ばれた女性がそう言うと会釈をした。 その時、ガイの表情が少し強張ったようにルークには見えた。 「? どうかいたしましたか?」 それを見たセシルは少し不思議そうに尋ねた。 「えっ、いや、その……なんでもないです。俺はガイです。ルーク様の使用人です」 ガイがそう言うと、ティアとアニスが一歩前へと出る。 「ローレライ教団、神託の盾騎士団、情報部第一小隊所属、ティア・グランツ響長であります」 「ローレライ教団、神託の盾騎士団導師守護役所属、アニス・タトリン奏長であります」 そして、最後にジェイドが歩み出る。 「マルクト帝国軍、第三師団団長、ジェイド・カーティス大佐であります。陛下の名代で参りました」 「!!」 ジェイドの言葉にゴールドバーグとセシルの表情は強張った。 「きっ、貴公があのジェイド・カーティス……」 そんなセシルに対してジェイドは眼鏡の位置を直してさわやかな笑みを浮かべた。 「いやいや、ケセドニア北部の闘いでは、セシル将軍に痛い思いをさせられました」 「ご冗談を……。私の軍はほぼ壊滅でした」 セシルは目を伏せてそう言った。 彼女は手を強く握り締め、震えていた。 「皇帝の懐刀と名高い大佐が名代というわけですか。なるほど、マルクトも本気と言うわけか」 ゴールドバーグの言葉にジェイドは笑みを消して頷く。 「ええ。国境の緊張状態が、ホド戦争開戦より強まっています。本気にならざる得ません」 「仰るとおりだ。では、ルーク様は私どもとご自宅へ」 「いや、俺もイオンたちと城へ行く。俺がイオンに伯父上の取次ぎを頼まれたのだから」 ルークの言葉を聞いたイオンは嬉しそうに微笑んだ。 「ありがとうございます。ルークがいると心強いです」 「承知しました。では公爵への使いはセシル将軍に頼みましょう」 ゴールドバーグの言葉にセシルは頷いた。 「では、ルーク。案内をお願いします」 「ああ」 イオンの言葉を聞いたルークは先頭を切って歩き出した。 「なんか色々なことがあったけど、無事にバチカルに着きましたねぇ」 城へ向かう途中、アニスがそう話を切り出した。 「そうだなぁ。船で襲われたときは正直、焦ったけどな」 アニスの言葉に、ガイは同意した。 ガイの言ったとおり、ルークたちはバチカルに向かう途中の船で襲撃を受けたのだ。 海上では、逃げ場など何処にもない。 「それにしても、大佐がディストと知り合いだったなんて、意外でしたよぅ!」 「ええ。それは私にとって一番の汚点ですけどね」 それに対して、ジェイドは本当に嫌そうにそう言った。 船を襲ったのは六神将の一人、≪死神ディスト≫だった。 だが、ジェイドとディストは知り合いだったらしく、明らかにディストはジェイドの遊ばれていた。 そして、最後はジェイドの容赦ない攻撃で、ディストは水平線の遥か彼方へと消えていった。 それを見たルークは、ディストのことを少し同情した。 「それよりどうだ、ルーク? 久しぶりのバチカルの街並みは?」 すると、ガイがルークへと話を振った。 「……七年間、ずっと屋敷の中にいたからかもしれないが、少し変わったように感じる」 「そっかぁ。ルーク様、誘拐されてからずっとお屋敷から出てないって言ってましたもんね」 「ああ。だが、屋敷の中の生活は別に不自由ではなかった。知識は屋敷の中にある本で大体得られたしな」 少しくらい表情になったアニスに気にするなと言うように、ルークはそう言った。 それが伝わったのか、アニスの表情は少し明るくなった。 それと同時にアニスは街へと視線を向けた。 「あれ! あの年増! 『漆黒の翼』じゃないですか!?」 アニスの指差す方向へと視線を向けると、下にノーワルたちの姿があった。 「あいつら、ここで何してやがるんだ?」 「本当ですよ! サーカス団みたいな格好して!」 「そういや、あいつらどことなく、サーカス団の『暗闇の夢』に似てるよな。昔一度見たきりだから自信はないがな」 アニスの言葉にガイはそう言った。 「妙なことを企んでいそうで気になりますが……。今は早く国王陛下に新書を渡しに行きましょう」 「そうですね」 イオンがそう言うと同時に、上へと登る昇降機が降りてきた。 ルークたちはそれに乗り込み、上へと登った。 Rainシリーズ第3章第11譜でした!! ルークたちがバチカルの到着しました!! しかも、何気に漆黒の翼もバチカルに来てます。 速過ぎだよ、お前達;どうやって、バチカルに着たんだ? H.19 11/8 次へ |