(やっと、見つけたよ) アスターの屋敷の入り口の近くでイオンたちをシンクは見つけた。 イオンたちの中で金髪の青年お手には音譜盤と書類のようなものの束があった。 (音譜盤を解析したのか……) アスターの屋敷には音譜盤解析機がある。 これで奪い返すものが増えた。 (アイツとの接触は禁じられてるけど……仕方ないね) シンクは、ルークたち目掛けて駆け出した。 〜Shining Rain〜 出航の準備が出来るまで、ルークたちは暇になった。 すると、イオンがこの街の商人ギルドの長、アスターに挨拶をしていきたいと申し出たので、一同はアスターの屋敷へと向かった。 そこには最先端の音譜盤解析機があったので、ガイがコーラル城で手に入れた音譜盤を解析してもらった。 アスターの屋敷から出ると一人のキムラスカ兵がルークたちに近づき、敬礼をした。 「ルーク様、こちらにお出ででしたか。船の準備が整いました。キムラスカ側の港へ……」 「! 危ない!」 「うわっ!」 ティアがそう叫ぶとほぼ同時にガイは何者かに襲われた。 嘴型の仮面を付けた少年。 それは間違いなく、≪烈風のシンク≫だった。 シンクの攻撃にガイは倒れ、音譜盤と書類を弾き飛ばされた。 だが、ガイはすぐに近くに落ちた書類を集めにかかった。 「それをよこせ!」 ガイから音譜盤を奪い取ったシンクは叫んだ。 「ここで諍いを起こしては迷惑です。船へ!」 ジェイドの言葉にイオンたちは一斉に走り出した。 「逃がすかっ!」 シンクは急いで後を追った。 「ちっ! 逃げられたか!!」 シンクが港に着いた頃には、ルークたちは連絡船に乗り込んだ後だった。 「ハーッハッハッハッ!」 すると、耳障りな声が聞こえたかと思うと、すぐ傍に一人掛けソファが降って来て、ギリギリのところで止まった。 顔を見なくてもわかる。 ≪死神ディスト≫だ。 「ドジを踏みましたね、シンク?」 「……アンタか。わざわざ、嫌味を言いに来たの?暇だね」 「ムキーーッ! 違いますよ! 私はヴァンから伝言を頼まれたのですよ!!」 「ヴァンから? 何だって?」 ディストの言葉にシンクは首を傾げる。 「アッシュとラルゴと共に導師を奪還してくださいとのことです」 「あっ、そう」 「まあ、こっちのことは私に任せなさい。超ウルトラスーパーハイグレードな私の譜業で、あの陰湿なロン毛メガネをぎったぎたの……」 シンクはディストの話を無視して踵を返した。 「待てーっ! 待て待ちなさいっ! 私の話はまだ終わってない!!」 「あのガイとかいう奴は、カースロットで穢してやった。いつでも傀儡に出来る。アンタはフォミクリー計画の書類を確実に始末してよね。じゃあ、僕はアッシュのところに行くから」 そうシンクはディストに吐き捨てると、さっさと港を出て、宿屋へと向かった。 「ムキーーッ! 偉そうに! 誰のせいですか!! こんなめんどくさいことをしないといけないのは!! 覚えておきなさい! 復讐日記につけておきますから!」 ディストの声が虚しく港に響き渡った。 宿屋へ向かう足はいつの間にか速くなり、走っていた。 宿屋へと着くとアッシュのいる部屋から声が聞こえてきた。 (……誰かいるのか?) 「アッシュ、入るよ」 シンクはそう言いながら、扉を開いた。 すると、部屋の中にはアッシュが一人佇んでいた。 「あれ? アッシュ一人なの? 声が聞こえた気がするけど?」 「俺は初めらか一人だったが? 気のせいじゃないか?」 シンクの問いにアッシュは首を傾げた。 「気のせいだったのかな? ……そんなことより、さっさとバチカルに向かおう」 「待って。その前に、寄りたい場所があるんだ」 「寄りたい場所?」 「うん。すぐ近くだから付いて来て」 アッシュとシンクは、キムラスカとマルクトの国境にある酒場へと訪れた。 中へと入ると、アッシュとシンクのところに一人の女が近づいてきた。 「あら〜ん、アッシュ。久しぶりね♪」 女はアッシュを見るとうっとりした声でそう言った。 「お久しぶりです、ノワールさん」 「いやだねぇ、アッシュ。あたしのことは呼び捨てでいいって言ったのに」 「アッシュ、誰だよ? コイツ」 状況の読めないシンクは不機嫌そうにそう言った。 「なんだい? このムカつくガキは?」 シンクの言葉にノーワルは怪訝そうにシンクを見つめ、さっきとは明らかに違う声音でそう言った。 「俺の同僚だ」 「へぇ〜。六神将にはこんなガキでも入れるんだね」 「だ、誰がガキだって!」 ノワールの言葉にカチンときたシンクは吠えた。 「ガキにガキって言って何が悪いのさ」 ノワールがそう言うと二人は静かに睨みあった。 まさに冷戦状態だ。 「あ、あのさ。今日は頼みたいことがあって来たんだけど;」 そんな場の空気を変えようと、アッシュはそう言った。 まさか二人の相性がこんなに悪いとは思ってもみなかった。 「なんだい? 頼みって?」 シンクを睨むのをやめたノワールはアッシュへと視線を向けた。 「導師イオンをある場所まで連れて来て欲しい」 「!!」 アッシュの言葉にシンクは仮面の下で驚きの表情を浮かべた。 「導師か……。で、何処へ連れて行けばいいんだい?」 「バチカルの廃工場の入り口に。……頼めるか?」 「ほかならぬ、アッシュの頼みだしね。……わかった、引き受けてやるよ」 「ありがとう、ノワール!」 ノワールの言葉にアッシュは笑みを浮かべてそう言った。 それに対して、何故かノワールの頬は少し赤くなった。 「? どうかしましたか? 顔、赤いですけど?」 「な、なんでもないわよ/// ヨーク! ウルシー! さっさとバチカルに向かうよ!」 「へい! 姉さん!!」 ノワールがそう言うと、カウンターで飲んでいたニ人は、さっさと酒場を後にした。 「今度は、バチカル廃工場に会いましょう。アッシュ♪」 「ああ、待ってる」 アッシュがそう言うとノワールは満足そうに酒場を後にした。 「なんで、あんなのにあいつの奪還を頼むのさ」 すると、シンクが不満そうにそう言った。 「彼女らは、ああ見えても腕は立つ。信用できる」 「でも、あんなのに頼まなくたって、僕たちだけであいつは取り返せるだろ?」 「イオンのいるところはバチカルだ。下手に動けば怪しまれる。彼女たちなら、それを軽減されるだろ?」 「あっ……」 アッシュの言葉にシンクは少し間抜けな声を上げた。 自分はただあいつを取り返せばいいと思っていたけど、アッシュは様々な状況を読んでさっきの奴らに頼んだのだ。 (これじゃあ、参謀失格じゃん……) 「さあ、俺たちもバチカルに向かおう。ラルゴはこのことを知らないから伝えないといけないし」 「そうだね。ラルゴのことだから何も気にせず、バチカルの乗り込みそうだしね」 「あははは! それ、有り得るかも!」 シンクの言葉にアッシュは思わず笑ってしまった。 それにつられて、シンクも笑みを浮かべる。 「それじゃあ、いこっか、シンク?」 「……うん」 こうして、アッシュとシンクはバチカルへと向かった。 このとき、タルタロスに乗船していたラルゴがくしゃみをしていたことは、この二人は知る由もなかった。 Rainシリーズ第3章第10譜でした!! 言わしてしまったよ。ディストのあの台詞をww その方がおもしろいですよねwwそして、ノワールの喋り口調がよくわからんし!! この人の一人称なんだっけ? H.19 10/25 次へ |