「おはよう、ローレライ』 『……おはよう、ルーク』 朝、目覚めるとそこにはローレライがいた。 『……体調の方はもう大丈夫か?』 「うん、ローレライのおかげだよ」 アッシュはローレライの問いに笑って答えた。 俺が寝ている間にローレライが治療してくれていたおかげで、もうすっかりよくなっていた。 「じゃぁ、俺もう行くわ」 アッシュは服を着替えて、仮面を付けるとローレライに言った。 『……いってらっしゃい』 「……いってきます」 アッシュはローレライに見送られ、部屋を出た。 〜Shining Rain〜 「ここを越えればすぐ、キムラスカ領なんだな?」 ルークは目の前に流れる川を見下ろしてそう言った。 目の前に流れる川はフーブラス川だ。 タルタロスで、再び六神将たちに捕まりそうになったところでガイが現れて、助けてくれた。 その後、ルークたちはアニスと合流するためにセントビナーへと訪れたが、もう既にそこにアニスの姿は次の合流地点であるカイツールを目指してこのフーブラス川までやってきた。 セントビナーでは、六神将の姿を見かけたが、何とか見つからずにすんだ。 あそこにいたのは、≪魔弾のリグレット≫、≪妖獣のアリエッタ≫、≪烈風のシンク≫、 自称≪薔薇のディスト≫こと≪死神ディスト≫そして、ジェイドが殺したと思っていた≪黒獅子ラルゴ≫だ。 そこにあいつの姿は何処にもなかった。 「ああ」 ルークの問いにガイは頷いた。 「このフーブラス川を渡って少し行くと、カイツールっていう砦があるんだ。あの辺りは非武装地帯だから、神託の盾の連中も手は出せないだろう』 「……そうか、ならさっさとここを渡るぞ」 ルークはそう言うと、フーブラス川を横断し始めた。 地震と濁流でフーブラス川に掛かっていた橋が落ちて流されてしまったため、この川を横断することになったのだ。 この川は今の季節、水流も穏やかで水嵩も高くなかったので、比較的楽に反対岸へと行けた。 「あれは……!」 反対岸へついた途端、ガイは驚いたように一点を見つめていた。 ルークはガイの視線を追った。 そこにあったものは……。 「ライガ!」 ティアが杖を構えながらそう言うと、背中でイオンを庇う。 それに対してライガは、唸り声を上げる。 「後ろからも誰か来ます」 ジェイドが空間から槍を取り出しながらそう言った。 それを聞いたルークは、剣に手を添えて振り返ると、泣きそうな顔をしてぬいぐるみを持った少女を乗せたライガが、着地した。 「≪妖獣のアリエッタ≫! ……見つかったか」 ガイはそう言いながら、剣に手をかけた。 「アリエッタ! ……見逃してください。あなたなら、わかってくれますよね? 戦争を起こしてはいけないことを……」 ティアの後ろにいるイオンが声を上げる。 「イオン様の言うこと……アリエッタは聞いてあげたい……です」 アリエッタは、ぬいぐるみに顔を埋めて哀しそうに呟いた。 「でも、その人たちはアリエッタの敵!」 > アリエッタは泣きそうな瞳でルークを指差し、叫んだ。 「アリエッタ、聞いてください。彼らは悪い人達ではないのです」 イオンはまるで、アリエッタを説得するかのように一歩足を踏み出した。 「ううん……悪い人たち、です」 それに対してアリエッタは首を横に振った。 「だって……だって、アリエッタのママを……殺そうとしたもん!』 「何言ってるんだ? 俺たちがいつそんなこと――』 「アリエッタのママは、お家を燃やされてチーグルの森に住みついた。ママは仔供たちを……アリエッタの弟と妹を守ろうとしただけなのに……」 アリエッタの言葉にティアは、ハッとした顔をした。 「まさか、ライガ・クイーンのこと? でも、彼女はどう見ても人間……」 それに、イオンはコクリと頷く。 「ええ、彼女は赤ん坊の頃にホド戦争で両親を失って、魔物に……ライガ・クイーンに育てられたと聞いています。そのことで身についた、魔物と会話できる能力を買われて、神託の盾騎士団に入隊したと……』 「じゃあ、もしかして俺たちが倒したライガが!?』 「それがアリエッタのママ! 兄さまが助けてくれなかったら、ママは死んでた!!』 「兄さま?」 アリエッタの言葉にガイは首を傾げた。 「それに、あなたたちは兄さままでいじめた! アリエッタ、兄さまをいじめたあなたたちのこと許さない!』 「兄さまって一体……』 「おそらく、≪鮮血のアッシュ≫のことじゃないですか。彼は私とやり合って、多少負傷させましたからね」 ティアの言葉にジェイドはさわやかにそう言った。 「……絶対、許さないだから!」 アリエッタがそう叫ぶと、ライガも咆えた。 「きますよ!」 ジェイとの言葉にルークたちは戦闘の体勢へと入る。 その途端 「な、なんだ!」 突然、突き上げるような衝撃に襲われ、ルークは声を上げた。 地面が割れ、その割れ目から紫色をした蒸気のようなものが噴出した。 「きゃっ…………!」 アリエッタの乗ったライガがその直撃を受けたかと思うと、苦しそうに悶えてアリエッタを振り落とした。 アリエッタは草むらに叩きつけられて、動かなくなった。 アリエッタを振り落としたライガも倒れた。 「障気だわ!」 ティアは口を押さえながらそう言った。 「いけません! 障気は猛毒です!」 ティアの言葉にイオンは付け足すように警告は放った。 「ですが、もう逃げ場がありませんねぇ〜」 ジェイドは、何故か楽しそうにそう言った。 ジェイドの言うとおり、至る所で障気が噴出し、逃げ場なんて何処にもなかった。 すると、突然ティアは一息つくと、ティアの口から美しい旋律が流れ出した。 「譜歌を歌ってどうするつもりだと……』 「待ってください、ジェイド。この譜歌は…ユリアの譜歌です!」 クロア リュオ ツェ トゥエ リュオ レィ ネゥ リュオ ツェ その瞬間、ティアの足元に巨大な譜陣が出現し、光を放つ。 すると、辺りに立ち込めていた障気は跡形もなく消えてなくなっていた。 「障気が消えた!?」 ガイは驚いたように呟いた。 「障気が持つ、固定振動と同じ振動を与えて、消滅させたの。……一時的な防御術よ。長くは持たないわ」 それにティアは小さく咳き込んで答えた。 「噂には聞いたことがあります。ユリアが残したと伝えられる七つの譜歌。……しかし、アレは暗号が複雑で詠み取れた者がいなかったときいてますが」 ジェイドは興味深げにティアを見ながらそう言った。 「おい、詮索は後だ。ここから逃げないと』 「……そうですね」 ジェイドはそう言うと、槍を取り出しアリエッタの側に行きその槍を振り上げた。 「お、おい! 何をするつもりだ!!」 その行動にルークは思わず声を上げた。 「生かしておけば、また命を狙われますよ?』 「だが……」 そうだとしても、無抵抗の奴を殺すなんて……。 「ジェイド、僕からもお願いします。アリエッタはもともと僕付の導師守護役だったんです』 「…………」 ルークとイオンを見たジェイドは溜息をつくと槍を消した。 「……まぁ、いいでしょう』 「障気が復活しても、当たらない場所へ運ぶ位いいよな?」 ガイはアリエッタを抱き上げるとジェイドに向かって言った。 「ここで見逃す以上、文句を言う筋合いではないですね」 ジェイドはそう言って肩を竦めたのを見て、ガイは苦笑した。 すると、地面の割れ目から再び障気が出始めた。 「そろそろ、限界だわ」 ティアが緊張した声にイオンは頷いた。 ルークたちは急いでその場から離れて、アリエッタを障気の当たらない草むらへと置いた。 「……行きましょう」 イオンは何処か哀しげな声でそう言った。 そして、ルークたちはカイツールを目指して歩き出した。 Rainシリーズ第3章第1譜でした!! いや〜すごいね。アリエッタは。アッシュ命ですねww アッシュを怪我させてだけでルークたちはアリエッタに恨まれてしまったのですからww 何もしていない、ルーク・ティア・ガイがちょっと可哀相ですね〜。 次回はアッシュがアリエッタのところにやってきます!! H.19 6/25 次へ |