あれからどれくらいの時間が経ったのだろうか。 ルークのいる位置が大きく変わったのを感じてからアッシュはずっと考えていた。 自分が今やろうとしていることを実行するべきかを……。 〜Shining Rain〜 ルークが屋敷から消えてから一日が経った。 ヴァンはすぐに屋敷を出て、迷わずダアトへと向かった。 「閣下」 神託の盾の本部に着くとヴァンはリグレットに声をかけられた。 「アッシュは何処だ?」 「アッシュは今、シンクとアリエッタたちのところにいます。ですが……」 「? 何かあったのか?」 リグレットが曇った表情になったのでヴァンは不思議に思った。 「さっきから呼びかけても反応がないのです」 いつも無表情は彼だが、話しかけたら必ず答えてくれた。 「……そうか。とりあえず、アッシュのもとで行こうか」 「はい。こちらです」 ヴァンの言葉を聞いて、リグレットはアッシュのいる部屋へと案内した。 その部屋に入ると、シンク、アリエッタ、ラルゴの姿があった。 そして、部屋の隅にアッシュが佇んでいるのが見えた。 ヴァンはアッシュの近くに歩み寄った。 「アッシュ」 「…………」 ヴァンがアッシュに話しかけてもアッシュは反応しなかった。 「アッシュ!」 「!!」 ヴァンがアッシュの肩に触れるとアッシュの肩がビクッと震えた。 「……何があったのか?」 「……動いた」 ヴァンが問いかけるとアッシュは短くそう言った。 「何が動いたのだ?」 「……被験者の位置が大きく動いた」 「!!」 ヴァンはアッシュの言葉に驚いた。 やはり、被験者とレプリカは繋がっていた。 初めにここに訪れて正解だったようだ。 「……今、彼がいる場所がわかるか?」 「初めは、タタル渓谷の位置にあったが、徐々にエンゲーブの方へと向かっている」 アッシュはそれに淡々と答えた。 自分の記憶が確かなら、ルークたちはエンゲーブに向かっているはずだ。 「閣下、その付近で導師イオンの姿が見られたという情報が入っています」 アッシュの言葉を聞いて、リグレットは思い出したかのようにヴァンに報告した。 「……そうか、よし。ここにいる四人はすぐエンゲーブ方面へ向かえ。……アッシュ、お前のそれに付いて行きなさい」 「えっ?」 ヴァンの言葉にアッシュは驚いたような声を上げた。 今まで、被験者との接触は禁止されていたからだ。 「一度は、被験者を見ておきたいだろう。行ってくるがいい」 「……はい、わかりました」 アッシュは、ヴァンに一礼をすると、部屋から出て行った。 それに続くかのように、シンク、アリエッタ、ラルゴも部屋を出る。 「……よろしいのですか? アッシュを被験者に会わせて」 一人残ったリグレットがヴァンに問う。 今まで、被験者との接触を禁じていたのに、何故今頃それを解禁するのだろうか。 「それがアッシュによい刺激を与えると思ったからだ」 それは、アッシュだけではない。 きっと、ルークにもよい刺激になるだろう。 「……後は、頼んだぞ。リグレット」 「……はい、おまかせください」 ヴァンの言葉に頷くと、リグレットは部屋を出た。 「アリエッタ」 エンゲーブ方面へ行く準備が進む中、アッシュはアリエッタに声をかけた。 「何ですか、兄さま?」 「悪いが、アリエッタの友達を一匹貸してくれないか?」 アッシュに近寄ってきたアリエッタにアッシュはそう言った。 「……いいですけど、どうしてですか?」 アッシュの頼みに疑問を感じたアリエッタが不思議そうに首を傾げていった。 「エンゲーブのところに行く前に寄りたいところがあるんだ」 「はあ!? 何言ってるの、アッシュ!」 そのやり取りを見ていたシンクが思わず声を上げた。 「……俺は、どうしてもそこに行かないといけないんだ」 もう決めたんだ。 例え、それによって未来が大きく変わってしまっても。 もう、迷わないと……。 「用が済んだらすぐにこっちに合流する。……ダメか?」 「……それは、今じゃなきゃダメなの?」 「ああ」 シンクの問いにアッシュは力強く頷いた。 それを見たシンクは呆れたように溜息をついた。 「……ったく、わかったよ。さっさと戻って来いよな」 「ああ」 アッシュは優しく言った。 二人のそんなやり取りを見て、アリエッタは一匹の魔物をアッシュの前に連れてきた。 「……行き先は私が伝えなくても大丈夫ですか?」 「ああ、大丈夫。自分で伝えるから」 その魔物を優しく撫でると、アッシュは魔物にまたがった。 アッシュはアリエッタに教えてもらった言葉で「行って」と言った。 すると、魔物は大きく翼を広げ、地を蹴って飛び立った。 魔物はアッシュに「どこにいく?」と聞いてきた。 「チーグルの森へ」 アッシュがそう言うと、魔物はチーグルの森へと向かっていった。 Rainシリーズ第2章第4譜でした!! 第3譜ではアッシュが全然出てこなかったので、アッシュを書きました!! アッシュがチーグルの森に行く理由は大体わかりますよね? H.19 3/24 次へ |