――――約束しろ! まただ。 また、あの夢を見ている。 この夢は俺に何を語りかけているのだろう。 〜Shining Rain〜 「ルーク!」 聞き覚えのある少女の声にルークはゆっくりと瞼を開いた。 「……ティア?」 「……よかった。呼びかけてもなかなか起きなかったから、心配したわ」 ルークは目を覚ますとティアは安堵の表情を浮かべた。 「っ……!!」 ルークは身体を起こそうとすると、右肩に痛みが走った。 「一応、治療はしておいたけど、あまり無理に動かさないほうがいいわ」 ティアの言ったとおり、右肩にあった傷口は綺麗になくなっていた。 「ここは?」 「タルタロスの船室ですよ」 ルークの問いにジェイドはそう答えた。 「と、言っても牢屋ですけどね。あなたの様子を見に行ったところ六神将たちに出くわした為、捕まってしまいました」 そうだ。 俺は確か、油断して眠っていた兵士に襲われたんだ。 もうだめかと思ったときに誰かが助けてくれた。 夕日のような赤い長髪を持つ少年に……。 「申し訳ありません。私が油断したばかりに……」 「いえ、ティアのせいではありませんよ。私も彼には油断しましたから」 ティアが申し訳なさそうにそう言うと、ジェイドは穏やかに言った。 「……とはいえ、あの技を私以外にも使える人がいるとは。……なんかムカつきますね♪」 「あの人は悪い人じゃないですの!!」 ティアとジェイドの言葉にミュウは叫ぶように言った。 「ミュウ?」 「あの人は悪い人じゃないですの! ミュウの頭を優しくなでてくれたですの! とても、なつかしいカンジがしたですの!」 「「「…………」」」 ミュウの言葉に三人は何も言えなくなった。 懐かしい感じ。 それは、ジェイドも感じていた。 彼の姿、声がとても懐かしく感じた。 「……ですが、彼は六神将で私たちの敵であることには変わりません」 ジェイドはどこか哀しそうな声でそう言った。 「…………」 敵 本当に、あいつは自分たちの敵なんだろうか。 ルークは彼が現れたときのことを思い出していた。 本来は白であったであろう服は、血で紅く染まっていた。 顔は金色の仮面で隠していて、見ることは出来なかった。 俺を助けたあいつは突然強く、そして優しく抱き締めてきた。 あのとき言った、あいつの声が、言葉が耳から離れない。 そして、あいつは泣いていた。 何故、あいつが泣いていたのか、俺にはわからなかった。 でも、俺のせいであいつが泣いているのがなんとなくわかった。 あいつに泣いて欲しくなかった。 泣かせたくないと思った。 「さて、そろそろイオン様を助けに行きましょうか」 「でも、イオン様は何処かに連れて行かれたようですけど……」 ティアとジェイドの会話からイオンも六神将に捕まったようだ。 「ええ。ですが、神託の盾たちの話を聞いた限りでは、タルタロスの戻ってくるようですね。そこを待ち伏せて救出しましょう。まぁ、簡単にはいかないでしょうね。何しろ、六神将が四人――ラルゴが死んでいてくれれば、三人ですが、――ま、頑張りましょう」 ティアはその言葉に頷いた。 それを見たジェイドは、踵を返すと壁にある伝声機を操作し始めた。 キィン、と甲高い音が鳴ると、ジェイドはマイクらしきところに話し掛けた。 「……死霊使いの名において命じる。作戦名『骸狩り』発動せよ!」 ジェイドがそう叫んだ途端、天井の全ての譜石の輝きがなくなり、辺りは暗くなった。 同時に、動力を復旧させて走行させてたであろう、タルタロスの速度か一気に落ちたように感じた。 「な、何が起きたの?」 その変化に、ティアが驚いたように呟く声が聞こえてきた。 「こういうことがあるかと思って、あらかじめ搭載しているタルタロスの非常停止機構を発動させました。復旧には暫くかかります」 それにジェイドは微笑みながらそう言った。 ジェイドはずっとポケットに入れていた手を出すと、彼の手には小さな箱が握られていた。 それを扉に向かって投げると、扉に触れると爆発し、扉を吹き飛ばした。 「すごい……」 それを見ていたルークは小さく呟いた。 「左舷昇降口へ向かいましょう。非常停止した場合、あそこしか開かなくなりますから、イオン様を連れた神託の盾兵もそこから艦内に入ろうとするはずです。その前に取られた武器を探しましょうか。おそらく、近くにあると思います」 「まさか、こんなに近くにあるとはな」 ルークの剣と、ティアの杖はすぐ隣の部屋に置かれていた。 「どうせ、出られないとふんでいたんでしょうね」 「でも、大佐。左舷昇降口までどうやって行きますか? さっき、見たら扉は閉まってましたし……」 ティアは杖を握る感触は確かめながら、ジェイドに聞いた。 「それなら、私にいい考えがあります♪ 付いて来てください」 ジェイドはそう言うと踵を返して、違う部屋へと入っていった。 ルークとティアはそれについていくと、そこにはドクロマークが彫られた大きな木箱があった。 「? なんだ、これは?」 「爆薬ですよ。艦内に物資の横流しをしている集団がいましてね。彼らがここに爆薬を隠していることを突き止めていたんですよ。最も、この騒ぎで調査も無駄になってしまいましたが」 「なるほど、この爆薬を爆発させて壁に穴を開けるんですね」 「そのとおりです♪」 ティアの言葉にジェイドは笑って答えた。 「大丈夫なのか?」 「爆発に巻き込まれなければ☆」 ルークの問いに、ジェイドは満面の笑みでそう言った。 「では、ミュウ。第五音素をお願いします♪」 「はいですの!」 ミュウは元気よく返事をすると、口から火球を噴出した。 火球が木箱に当たると、木箱が勢いよく爆発し、壁に穴を開けた。 「これで、道は出来ましたね〜♪ では、行きますか」 ジェイドはそう言うと、穴の外へと出て行った。 ティアもそれに続いて歩き出す。 (……また、あいつに会うのだろうか?) もし、会えたならあいつに聞きたいことがある。 何故、あのとき俺を見て泣いていたのかを……。 ルークはそんな思いを胸に抱いて、ティアたちの後を追って歩き出した。 Rainシリーズ第2章第13譜でした!! 目を覚ましたルーク。アッシュのことばっかり考えてるといいなww ルークにはわかんないもんね。何故、アッシュが泣いていたなんかは。 アッシュのために必死に叫ぶミュウが可愛いねww H.19 5/26 次へ |