トゥエ レィ ツェ クロア リュオ トゥエ ズェ 美しい旋律が風に乗って甲板から艦橋の入り口あたりまで響き渡った。 すると、そこにいた兵士がバタバタと倒れていった。 マルクト兵とは明らかに違う兵士たちは、死んでいるかのように眠りについた。 〜Shining Rain〜 「さて、タルタロスを取り返しましょう。ティア、手伝ってください。ルークはここで見張りをお願いします」 「はい」 「……わかった」 ジェイドの言葉にルークとティアは頷いた。 そして、ティアとジェイドは扉の向こうへと消えていった。 今、ここにいるのはルークとミュウ。 そして、近くで寝ている兵士だけだ。 ルークはその場に座り込んだ。 色んなことが一気に起きて、頭の中は混乱していた。 今、頭の中を整理する、ちょうどいい機会だ。 「ご主人様! 元気だすですの!」 「はぁ?」 何故か自分を励ますようなことを言うミュウにルークは首を傾げた。 「ティアさんたちは、ご主人様が邪魔だから置いて行ったんじゃないですの!」 どうやら、ミュウは自分がティアたちに置いて行かれれ落ち込んでいると思ったらしい。 「別に、俺は落ち込んでなんかない」 「みゅう? だったら、どうしてご主人様は暗い顔をしているんですの?」 「そ、それは……」 自分でも、わからなかった。 あのラルゴという大男に今日初めて会ったはずなのに、そんな気がしなかった。 ずっと、昔から知っているような変な気がしたから……。 「ご主人様! 見ててくださいですの!」 ミュウはそう言うと、口らから火を噴出した。 その火が綺麗だと、思ったのはほんの一瞬だった。 ミュウが噴出した火球は見事に眠っている兵士の兜に当たったからだ。 「ばっ、馬鹿野郎! 何やってるんだ! このブタザルが!!」 「ご、ごめんなさいですの!」 ルークに怒鳴られ、ミュウはしゅんと小さくなった。 ルークは兵士を見たがどうやら兵士が起きる気配はなかった。 (なんだよ、脅かしやがって……) ルークはホッと胸を撫で下ろした。 ルークは兵士から離れようと背を向けた。 そのとき 「ご主人様! あぶないですの!」 ミュウの声とにルークは咄嗟に動いた。 右肩が斬られ、血が流れ出す。 「くっ……!!」 油断した。 敵に背を向けることは死を意味することを忘れていた。 再び、兵士がルークに斬りかかる。 それにルークは剣を抜き、受け止める。 だが、利き腕をやられているせいか、力が入らず、思うように動かせない。 その為、あっさりと兵士に剣を弾かれてしまった。 剣が空中を飛び、かなり離れたところに落ちた。 (しまった……) 兵士が奇声を上げながら、ルークに襲い掛かる。 (もう、ダメか……) ルークが死を覚悟したそのとき、何かが自分と兵士の間に割って入った。 「何をしている」 アッシュは自分の部下である兵士に剣を突きつけた。 「と、特務師団長!?」 アッシュに剣を突きつけられているせいか、兵士の声は恐怖で震えていた。 「彼に手を出すなと、命令があったはずだ。忘れたのか?」 その声音は静かだったが、怒りの満ち溢れていた。 「も、申し訳ありません!!」 「……もう、いい」 アッシュはそう言うと、部下であるはずの兵士を斬った。 『アッシュ』を傷つけた罰だ。 アッシュは剣についた血を振るって落とすと、鞘へと収めた。 そして、ゆっくりと振り向いた。 そこにあるのは、燃えるような紅の長髪に綺麗な翡翠の瞳。 ずっと、会いたかった彼がそこにいた。 彼は呆然と自分を見ていた。 「ルーク……」 「!!」 アッシュは思わず、ルークを抱きしめた。 突然のアッシュの行動にルークは驚くしかなかった。 「……よかった」 よかった。 本当に『アッシュ』は生きていた。 こうして、彼の身体を触るとそれがよくわかる。 あのとき、抱きしめた彼の身体は氷のように冷たかった。 だが、今は違う。 とても温かかった。 嬉しい 嬉しいはずなのに、何故か自然と涙が流れた。 それが仮面の下から流れ落ちる。 「……ルーク、少しだけ眠ってて」 「……なに? ぐっ!」 囁くように行ったアッシュの言葉にルークは聞き返そうとした途端、首筋に痛みが走った。 「ご主人様っ!?」 その声にミュウは驚いたような声を上げた。 アッシュは気を失ったルークをゆっくりと寝かせた。 それは、まるで壊れ物を扱うかのように優しく……。 「ご主人様になにをしたですの!」 「……心配するな、気絶させただけだから」 かつて、自分のことを「ご主人様」と言って慕っていた聖獣にアッシュは優しくそう言った。 そして、ミュウの頭を優しく撫でた。 「……ルークのこと頼むな」 「みゅう?」 「ルークっ!!」 ミュウに笑いかけたと同時に扉が開き、ティアとジェイドが出てきた。 アッシュはそれに気付き、素早くティアに近づくと、ティアの腹を一発殴り、ティアを気絶させた。 その勢いのまま、アッシュはジェイドも気絶させようと殴りかかるが、あっさりと避けられてしまった。 「……さすが、≪死霊使い≫殿だ」 「あなたは……≪鮮血のアッシュ≫ですか」 アッシュの言葉にジェイドは薄い笑みを浮かべて言った。 「……無駄な足掻きはやめて、大人しくしたほうが身のためだが」 「そうしたいのは山々ですが、残念ながら、こちらも仕事でしてね〜♪」 ジェイドはそういいながら、手に光の粒子を集めて槍を出現させた。 血のように赤い瞳が冷たく光、こちらを見据えていた。 (……変わってないなぁ) 変わってしまったのは、自分たちの関係。 仲間だったのが、今では敵同士だ。 アッシュはゆっくりと剣を抜き構える。 今、自分の体調は万全ではない。 そんな自分が今のジェイドとどれだけやり合えるのだろうか。 「……では、いきますよ」 ジェイドはどこか楽しげにそう言うと、アッシュへと向かって走り出す。 アッシュもそれに答えるようにジェイドに迎え撃った。 Rainシリーズ第2章第11譜でした!! はい。アッシュがルークと再会(?)しました!!よかったね、アッシュ!! 何気に、ルークにミュウのことブタザルと言わせて見ました♪一度は聞いてみたいな〜と思ってww てか、なんだか大変なことになってまいりました!!アッシュとジェイドの対決ですよ!! 一体どういう結果になることやら。 H.19 5/8 次へ |