シンクの様子を見に行こうと思い、アッシュはコーラル城へ向かう準備をする。
すると、誰かが部屋の扉をノックした。

「どうぞ」
「…………」

だが、扉が開くことはなかった。

「? ……誰だろう?」

不思議に思ったアッシュは扉を開けた。






〜Shining Rain〜








扉を開けると、そこには美しい桃色の髪の少女が立っていた。

「アリエッタ?」

アッシュは彼女の名前を呼んだ。
すると、アリエッタの瞳から涙が溢れ出した。

「兄さま……」
「中に入るか?」

アッシュが恐る恐る尋ねると、アリエッタはコクリと頷いた。
アッシュはアリエッタを部屋に入れ、椅子に座らせてあげた。

「何かあったのか?」
「……イオン様、アリエッタのこと嫌いのなっちゃったのかな?」
「えっ?」

アリエッタの言葉にアッシュは驚いた。

「どうして、そう思うんだ?」
「……だって、アリエッタ、導師守護役(フォンマスターガーディアン)を辞めさせられたから」
「それは……」

言えない。
彼女の知っているイオンはもう死んでしまったことを……。
今いるのは、レプリカイオンだということを……。
言っても彼女は決して信じないだろう。

「……やっぱり、イオン様はアリエッタのこと嫌いになっちゃったんだ」
「…………」

アッシュは何を言っていいのかわからなかった。
今、何を言っても彼女には何の慰めにもならないと思ったからだ。
すると、アリエッタは突然椅子から立ち上がったかと思うと、アッシュに近づき抱きついた。

「ア、アリエッタ!?」

アリエッタの突然の行動にアッシュは驚いた。

「……兄さま。兄さまはアリエッタのこと嫌いにならないですよね? ……アリエッタを一人にしないですよね?」

アリエッタの声はひどく震え、その小さな肩も小刻みに揺れていた。
アッシュはその肩を優しく触れた。

「……大丈夫。アリエッタのこと嫌いになったりしないよ」
「本当?」

アッシュの言葉にアリエッタは顔を上げた。
目は赤くなっていたが、もう涙は止まっていた。

「うん、本当だよ」

アッシュはアリエッタに優しく笑いかけた。
それを見たアリエッタも笑顔になった。

「あっ! そういえば、アリエッタは魔物と会話が出来るんだよな?」

少しでも、話題を変えようと思ったアッシュは明るく言った。

「はい。でも、どうしてですか?」
「俺にも、よかったら教えてくれないか? 魔物と話が出来るようになりたいんだ」

魔物と会話が出来るようになりたいと思った。
そうすれば、また一つ運命を変えることが出来るような気がするから。
あの運命を……。

「はい! 私でよかったら教えます」

それにアリエッタは笑顔で答えてくれた。
もう、イオンの話をしていたことを忘れたようだ。

「それでは、さっそく教えますね♪」
「えっ! 今から!?」
「はい! ぜんは急げといいますから♪」

アリエッタはジェイドに似た笑みを浮かべて言った。
やっぱり、やめておけばよかったと後で後悔したアッシュだった。

















ごめんね、アリエッタ。
君の笑顔を見て俺は心の中で謝った。
君のことを嫌いになることは絶対にならないけど、ずっと一緒にいることは出来ないよ。
俺は、『ルーク』の代用品として死ぬかもしれないから。
でも、君を絶対に一人にはしない。
俺が生きている間だけでも、一人にはさせないよ。
そして、他に大切な人が出来ることを俺は願うよ。
それが、君に生きる希望を与えてくれるはずだから……。
























Rainシリーズ第1章第6譜でした!!
意外に短くなってしまいました。
次に、意外な人が登場したりして!!(誰だよ!!)


H.19 2/26




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