「エドワード! ……ねぇ、エドワード!!」

虎徹から勇気をもらったイワンは必死にエドワードの姿を探した。
だが、何処を探してもエドワードの姿が見つけられない。
けど、エドワードはきっとまた姿を現す。
何故なら、彼は、まだ僕への復讐を諦めていないから……。
息を切らして走り回るイワンは、一旦足を止め、また踵を返して走り出そうとした。

「!?」

その瞬間、イワンは足首を何かに掴まれ、バランスを崩して倒れてしまう。

「うっ……」
「なんだよ、その顔? 俺を探してたんだろ?」

その声にイワンは振り返るとエドワードが地面から現した。
そして、倒れているイワンを見下す。
その瞳には、未だ自分へと憎悪が宿っていた。
言わなければ……。
これ以上、彼に罪を背負わせない為に……。

「…………こんな事やめよう。ねぇ、エドワード!」
「うるせぇ!!」

イワンは必死にエドワードを説得しようとするが、そのイワンの言葉にエドワードは耳を貸さなかった。
と、次の瞬間――。

「「!?」」

エドワードの目の前を青い炎が矢が通り過ぎ、炸裂した。
それに驚いた二人は視線を返るとそこには、赤い月をバックにした校舎の屋上に立つルナティックの姿があるのだった。






~神様ゲーム~








「!!」

イワンとエドワードの許へと走る虎徹の耳に爆発音が聞こえてきた。
間違いない。
イワンとエドワードが奴――ルナティックに遭遇したんだ。

「校長はここに!」

虎徹はそうマッシーニに言い残すとそのまま爆発音が聞こえた方向へと走り出す。
そして、虎徹はあの時より早く現場へと辿り着いた。
そして、そこにいたのは、イワン、エドワード、そして、ボウガンを手にしたルナティックの姿であった。

「っ! あいつ!!」
「待て、バニー!」

ルナティックの姿を見つけた途端、バーナビーの翡翠の瞳が苛烈な光を帯びる。
そこにあるのは、ルナティックに対しての憎悪だ。
それをわかっていた虎徹は、必死にバーナビーの肩を掴んでを呼び止めた。

「何してるんですか! このままだと、先輩がっ!!」
「折紙なら、もう大丈夫だ」
「無理です。いくら何でも、ルナティック相手では……」
「俺の事は、今は信用しなくていい。けど、折紙の事は、もう少し信用してやってくれ」
「ですが!!」
「頼む」
「…………」

虎徹の言葉を聞いたバーナビーは虎徹へと顔を向ける。
彼の琥珀色の瞳が真っ直ぐバーナビーを見つめていた。
その瞳には、何の迷いもない。
折紙サイクロン――イワンをヒーローとして信頼している目だった。

(…………どうして)

どうして、貴方はそこまで他人を信じることが出来るんですか?
僕には、それが理解できない。
今すぐ、肩を掴んでいる手を振り切って走ればいい。
けど、この瞳に見つめたらたら、それが出来なくなる自分がそこにいた。

「…………わかりました。少しだけですよ」
「! ありがとうな、バニーちゃん!!」
「っ///」

バーナビーが溜め息をついてそう言うと虎徹は、嬉しそうに笑って折紙を見つめた。

(頑張れよ、折紙!)

お前なら、きっと大丈夫だから……。
折紙へとすぐに視線を向けてしまった為、虎徹は気付かなかったが、バーナビーの表情は赤面しているのだった。





















――――……お前はもう、ヒーローなんだぞ、折紙。

あの時の言葉がイワンの頭の中でフラッシュバックされ、イワンの決意を更に固いものへとしていく。

「私から逃れられると思ったか」

炎上する車の前にへたり込んで動けないでいるエドワードにルナティックがボウガンを構える。

「……ちょっと、待てよ!」

追いつめられるエドワードに対して少し離れたところからもう一人のエドワードが現れる。

「本物は……僕だ……」
「!?」

二人目のエドワードの登場に戸惑い、ルナティックの動きが止まる。
もう一人のエドワードも驚きの表情を浮かべている。

「お前……」
「あんたの狙いは、僕だろ? ……僕を()れよ!」

恐怖を胸に抑え込んで、エドワードに変身したイワンは懸命にニヤリと笑って見せた。

「…………無益な殺生は主義に反する。罪人は歩み出よ」
「僕が本物だって言ってるだろっ!」

偽エドワードの言葉を聞いたルナティックは、矢を向ける。

「……己の罪を償うというのだな?」

ルナティックの言葉に偽エドワードは無言で頷く。
そんな偽エドワード――イワンの姿にエドワードの表情が揺れ動く。

「よかろう……。なら……」
「!?」

そんな偽エドワードの言動からルナティックは、矢の照準を本物のエドワードに合わせた。

「! どうして……!?」
「罪人は、皆、卑怯だ」

愕然として呟く偽エドワードに対して、そうルナティックは言った。

「!!」
「正義の裁きを受けよ!」

ルナティックは、ボウガンの引き金に力を籠め始める。
それを見たイワンは、擬態のNEXT能力を解くと、エドワードの前に立つ。
そして、何の迷いもなくエドワードを守るように両手を広げた。
それは、まるで盾のようである。

「エドワードは、僕が守る……。僕が守るんだっ!!」
「!!」

イワンの力強いその言葉にエドワードの心に変化が訪れる。
自分がやろうとしていたことは、間違っていたのではないのだろうかと……。
そして、イワンのその言葉を待っていたかのように笑みを浮かべる人物がもう一人いた。

「…………さぁ、行こうぜ、バニーちゃん!」

その人物――虎徹は、NEXT能力を発動させると、一気にイワンとエドワードの許へと駆け出した。





















「……仕方あるまい。罪人を庇う者もまた、悪なり……」
「「!!」」

ルナティックの青い炎の矢が放たれる。
その矢の矛先は、イワンとエドワード。
とても、僕たちには避ける事なんて、出来ないと思った。
僕は、エドワードを守ると言ったのに……。
だが、その矢が僕たちを射抜くことはなかった。
そして、それと同時に自分の身体が浮くような感覚にイワンは陥ることを感じた。

「大丈夫か! 折紙!!」
「タッ、タイガーさん!!」

それは、この人が、タイガーさんが僕たち二人を抱えて飛んでくれたからだった。

「!!」
「だあああぁぁぁっ!」

それに驚いたルナティックにバーナビーの蹴りが襲い掛かる。
だが、ルナティックはギリギリのところで避け、そのまま校舎の上までジャンプして逃げていく。

「ふっ……。逃がすかっ!」

それを見たバーナビーは、すぐさまルナティックの後を追いかけ出す。
虎徹もバーナビーの後をすぐに追いかけようとしたが、その前にやるべきことを思い出す。

「……よくやったぞ、折紙!」
「! はっ、はいっ!!」
「…………」

虎徹は、イワンとエドワードから手を離すとそう言ってイワンの頭を優しく撫でてやった。
虎徹に褒められたイワンは嬉しそうに笑みを浮かべた。
そんなイワンをエドワードは、戸惑いながら見つめているのだった。
























神様シリーズ第4章第6話でした!!
今回は、イワン君が頑張った回となりました!
そして、虎徹さんは、イワン君がいる場所が元からわかっていた為、早めに現場に着いてしまいました。
けど、ちゃんとイワン君でも大丈夫だと分かっていたから、バニーちゃんを止めるんだよね。
虎徹さんに笑いかけられて、赤面するバニーちゃんは相変わらず可愛いです(本人は無自覚ですが;)。


R.1 10/31



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