『……で、一体お前は何を思いついたんだ?』 「?」 『日本マニアの話を聞いて、ジェイク戦での打開策を思いついたのだろう?』 「お前、日本マニアって……;」 イワンとのトレーニングを終えた後、自宅に帰るために一通り片づけを終えた虎徹に対してクロノスはそう問いかけた。 初め、何を言われているのか理解できなかった虎徹は不思議そうな表情を浮かべたので、クロノスはそのまま言葉を続けると虎徹は少し呆れたような表情になった。 「せめて、折紙って呼んでやれよ;」 『別にいいだろう。間違ってはないのだから。……で、実際のところ、どうなんだ?』 「うーん。一応は……な。けど、まだ試してみねぇとわかんないしなぁ……」 『なら、今ここで試してみるか?』 「へっ?」 突然のクロノスの提案に虎徹はきょとんした表情を浮かべた。 その反応にクロノスは少し怪訝そうに眉を顰めた。 『思いついたのなら、さっさと試す方がいいだろうが? それとも、今日はもう疲れたのか?』 「いや。それは、大丈夫だけど……。何か、今日のトキはいつも以上に協力的だなぁ、と思って」 『なんだその言い草は; 私は面倒なことは早く片付けてしまいたいだけだ。で、どうする? やるのか?やらないのか?』 「……んじゃ、トキの言葉に甘えて、いっちょ試してみるか。相手、頼むぞ」 クロノスの言う通り、思いついたことはすぐに試した方がいいだろう。 それに、こうもクロノスが協力的なことは珍しいし……。 『うむ。なら、さっさと、始めるぞ』 こうして、虎徹はクロノスとのトレーニングを再開させるのだった。 ~神様ゲーム~ 「……で、どうだよ? ……俺の考えてること……読み取れたか?」 『…………』 一通り、クロノスとの手合わせを終えた虎徹は少し息を切らしながらそうクロノスに問いかけた。 それに対してクロノスは何故かすぐには答えなかった。 だが、その表情は明らかに動揺しているように虎徹には見えた。 「なぁ……どうなんだよ、トキ?」 『…………読めなかった』 再度、虎徹が問いかけると、そうクロノスは静かに答えた。 『お前の心を読んでも……それが動きと全く……合ってなかった……』 「! よっしゃあ!!」 『…………』 そう何処か悔しげに言ったクロノスの言葉を聞いた虎徹は嬉しさからガッツポーズをとった。 やった。うまくいった。 折紙の言葉から頭の中を空っぽにするのではなく、別のことを考えながら動けないかと模索してみたのだが、こうもうまくいうとは思わなかった。 これなら、ジェイクとの戦いも何とかなるかもしれない。 だが、クロノスは何処か納得していないような表情を浮かべている。 「なっ、なんだよ?」 『……確かに、これなら奴にもお前の考えは、読まれないだろう。着眼点もいい。だが……』 虎徹の打開策についてクロノスは冷静に分析をする。 『……お前は、奴の前でずっとあれを続けられると思っているのか? ……歌を……歌い続けられると思っているのか?』 虎徹の作戦はこうだ。 無理に頭を空っぽにできないのならば、別のことを考えればいい。 その方法として虎徹は、歌を選んだのだ。 頭の中で歌を歌うことで自分の動きを惑わしたのだ。 そして、そのおかげか若干虎徹の動きにもキレがでている。 おそらく無意識のうちにリズムを取っていたからだろう。 こんなことがすぐにできるのも、虎徹の身体能力がずば抜けていいのと、我としょっちゅう頭の中で会話をしていたからだろう。 だが、この方法には、一つだけ欠点がある。 これをジェイクの前でずっと続けていられるかということだ。 『曲の長さは大体三分から五分。だが、人が鼻歌やアカペラなどで歌えば、無意識のうちに伴奏なしで歌ってしまう。そうすれば、その時間はおのずと短くなる。……お前が能力を発動させている時間よりかわな。そんな短時間で奴を倒せると思うのか?』 「……お前、妙に歌に詳しいなぁ; 別にもう一曲歌えば、何とかなるだろ?」 『いや、それは無理だろう。その頃には、奴はお前の作戦に気付いているだろうし』 若干クロノスの解説に引きつつ虎徹はそう言葉を返すが、それに対してクロノスは間髪を入れずにそう言った。 それに対して虎徹は、不満そうな表情を浮かべる。 「じゃぁ、どうしろって言うんだよっ!」 『…………まぁ、方法がないこともないがなぁ』 「なっ、なんだよ! 教えろよ!!」 クロノスはその言葉を待っていたかのようにニヤリと笑う。 『教えて欲しいのか? だったら、もっと顔を我に近づけろ』 「? ……こうか? ……っ!!」 その言葉に虎徹は何の疑いもなくクロノスへと顔を近づけた。 その瞬間、クロノスが虎徹の頭に手を添えて、自分の方へとグッと近づける。 そして、そのまま虎徹の唇を一気に己の唇で塞いでキスをした。 驚いた虎徹はそこから逃れようともがくが、虎徹の頭を押さえているクロノスの手の力は思っていた以上に強く、うまく動かせない。 そして、虎徹の口の中に侵入したクロノスの舌が虎徹の舌へと絡みつき、息がうまくできなくなる。 「んー……んんっ……! ……やめろって!!」 クロノスの激しいキスに意識が飛びそうになったが、それを気力で何とか乗り越えて虎徹はクロノスを思いっきり突き飛ばした。 それによって虎徹はクロノスのキスから漸く解放され、新鮮な空気が肺へと流れ込む。 『…………虎徹。お前、思っていた以上に……巧いな♪』 「っ//// ふっ、ふざけるなよっ! いきなり、何すんだよ!?」 『さっき言った通りだ。この方法が一番効率がよかったから、そうしたまでのことだ』 赤面する虎徹にをよそにそうクロノスは悪びれることなくそう言った。 『よし、虎徹。お前の能力を発動させた上で、私の力を使ってみろ』 「はあっ? 何でだよ?」 クロノスの意図がわからず、そう虎徹は聞き返す。 『それは、試せば全てわかる。……まぁ、嫌だというのなら、お前は私にキスされ損になるがな』 「っ! ……わかったよ。やればいいんだろう! やれば!!」 クロノスのの言葉に虎徹はそう言った。 こうなったら、もうやけだ。 トキが一体何を考えてあんなことをしたのか知らねぇが、きっと考えがあってのことだろう。 じゃなければ、ぶっ飛ばす! 正直、トキの力を使うのは気が引けるが仕方がない。 虎徹は意識を集中させ、NEXT能力を発動させる。 虎徹の身体を青白い光が覆う。 よし、ここまではいつも通りだ。 後は、トキの力だ。 最近になって漸くあの力の使い方がわかってきたが、力を使えば頭が痛くなるのは、相変わらずだった。 だが、今はトキに言われた通りにやってみるだけやる。 虎徹は、更に意識を集中させ、あの力を発動させてみる。 その瞬間、青白い光に包まれていた虎徹の瞳の色がトキと同じ金色の光へと変わった。 それと同時に虎徹は、今までになかったとある違和感を感じた。 (……あれ? ……頭が……痛く、ない?) いつもだったら、すぐに頭が痛くなるはずなのに、今はそれがないのだ。 でも、一体どうして……? ――――……あた……まえ……だ。……そうな……いじ……。 (……えっ? 今、何って言った?) 頭の中からトキの声が聞こえてくる。 だが、それはいつもとは明らかに違った。 いつも、鮮明に聞こえたトキの声は、まるでノイズがかかったかのように聞こえづらかった。 『ふむ。こっちについても、大方は成功したみたいだなぁ♪』 「! どっ、どういうことだよ、それ!?」 虎徹の様子を見てクロノスは満足そうに声を出してそう言った。 まるで、こうなることが最初から分かっていたかのような口ぶりで……。 『さっきのキスでお前に与えた力について少し微調整をさせてもらった。一つは、お前がNEXT能力を発動させた時には、私の力の効果を抑えるように。そして、もう一つがジャミング効果だ』 「ジャミング?」 クロノスの言葉に虎徹は首を傾げる。 『人が何かしら思考を巡らせる時には、必ず微量の脳波が発生する。おそらく、奴のNEXT能力はその脳波を使って人の心を読み取っているのだろう。だったら、別の脳波を流してしまえば、心を読みにくくすることは可能になる』 「だから、さっき頭から聞こえてきたトキの声はあんなに聞こえづらかったってわけか……」 クロノスの説明を聞いて虎徹は納得した。 『まぁな。だが、私の場合は、それが事前にわかっているから、それすらを相殺させてお前と会話することも可能だがな。……さっきは、テストをする為にわざとそれをせずに確認したまでだ』 「……そっか」 確かに、これならいけるかもしれない。 これならNEXT能力を発動させている間なら、何の制約もなくジェイクの奴をぶっ飛ばせることができるかもしれない。 後は、あの厄介なバリアーをどう攻略するかだが……。 『……ただ、これには一つだけ欠点ができてしまった』 「へっ? 欠点って……っ!!」 『! 虎徹!!』 希望の光が見えてきたかと思った瞬間、何故かクロノスが悔しそうにそう言ったので虎徹が不思議そうに首を傾げたその時だった。 NEXT能力の制限時間が過ぎたのか、虎徹の身体を包んでいた青白い光が消えたのと同時に、ドクンッと心臓が跳ね上がるのを感じた。 そして、いつもの、いや、それ以上の頭痛が虎徹を襲い、それに耐え切れず虎徹は体勢を崩した。 それを見たクロノスは慌てて虎徹を支える。 『くそっ! 思っていた以上に、体力の消耗が激しい!!』 そして、虎徹の様態を見るや否や、まずは虎徹の頭痛を緩和させるべく力を使った。 クロノスの手から優しい光が現れ、それが虎徹の身を包み込むと、虎徹を襲っていた頭痛が徐々に引いていく。 「……っ! ……あれ? ……俺、何で?」 『虎徹! …………よかった』 それに気づいた虎徹は、自分の身に一体何が起こったのかわからないといった様子でクロノスの顔を見てそう言った。 それを見たクロノスは安堵の表情を浮かべる。 だが、それが虎徹には何処か悔しげな表情にも見えた。 「……もしかして、これが……その欠点ってやつか?」 『あぁ……。最後の力の調整をする際に……ミスをした』 「……そっか」 そのクロノスの言葉で虎徹は、すべてを理解した。 トキは今の俺が力を使っても最小限しか体に負担がかからないように調整をしようとしてくれていたのだ。 だが、その最中に俺がトキとのキスを拒んだことでそれが中途半端に終わった。 その結果、NEXT能力が切れたと同時にその間使っていた反動で一気に身体に返ってくるようになってしまったというわけだ。 『……すまない、虎徹。これは、私のミスだ』 「別に、トキのせいじゃねぇだろ? 俺が……驚いて突き飛ばしちまったのが悪かったわけだし……。それに、俺がトキの力を使いこなせれば、それもなくなるんだろ?」 『……まぁ、断言はできないが、力さえ制御できるようになれば、それも軽減されるはずだ』 「じゃぁ、後はそれを俺が頑張ればいいだけのことだろ? ……ありがとうな!」 『っ!!』 この男は……。 いくら虎徹の為とはいえ、我はお前に強引にキスをしたのだぞ。 それでいて、一番肝心なところでしくじってしまったというのに、何故我に礼を言うのだ。 そんなことを言われれば、我はよけい惨めになるではないか……。 「それじゃぁ、いい加減、帰るか」 『……虎徹、そんな状態で家まで帰ったら、途中で倒れるだろうが;』 先程の術はあくまでも、応急処置であり、虎徹の体力までを完全に回復させたわけではないのだ。 『……そのまま我に掴まってろ。家まで一瞬で送ってやる』 「えーっ、けどさぁ……;」 『ヒーローが事件でもないのに街中で倒れて、市民に迷惑を掛けてもいいのなら、別に我は止めないが?』 「…………わかったよ。けど、今日だけだからな」 『はいはい』 クロノスの言葉でその状況を想像したのだろう。 虎徹は渋々そう言うとそのままクロノスに身を預けた。 虎徹の言葉をクロノスは軽く受け流すと、虎徹を連れて一瞬のうちにトレーニングセンターを後にするのだった。 神様シリーズ第4章第2話でした!! はーい。今回は、突然のトキ虎をぶち込んでみましたwww もっとエロく書きたかったのに、私の文章力だとこれが精いっぱいのようです; とりあえず、これで虎徹さんのジェイク対策は制限付きですが、バッチリですかね! そして、いよいよ次回からヒーローアカデミーのお話を書いていきます!!(๑>◡<๑) H.30 12/24 次へ |