――――……おい、虎徹。お前、本当に大丈夫か? (? 何がだよ?) そうクロノスが虎徹に問いかけたのは、虎徹がキッチンで独りになった時だった。 その問いの意味がわかないといった表情を浮かべる虎徹に対して、クロノスは呆れたように溜息をつく。 ――――お前なぁ; さっき、あれだけ豪快に頭をぶつけといて、何かはないだろう? (えっ? まだ、ちょっと、頭がズキズキしてるけど、別に何とも…………あれ?) ――――! 虎徹!? クロノスの心配をよそにそうあっさりと答えようとした虎徹だったが、その瞬間、視界がグラついた。 そして、クロノスの慌てたような声だけが虎徹の頭の中で響くのだった。 ~神様ゲーム~ 『馬鹿者! やっぱり、お前、軽い脳震盪を起こしてるじゃないかっ!?』 そして、次に気が付いた時には、虎徹は、クロノスの腕の中にいた。 何だか、よくわからないが、急に頭がボーッとするのと、軽い吐き気も感じた。 そんな虎徹の事を気遣ってか、クロノスは虎徹の頭に直接ではなく、声に出してなるべく小声で話しかけるのだった。 『……まったく、お前という奴は……。待ってろ、今、楽にしてやるから……』 (いっ、いや……でも……) 『お前、今の姿で相棒たちに見つかってもいいのか?』 (…………) 口を上手く動かせなかったが、虎徹の思考を読み取れるクロノスには、何の問題もなく会話が出来ていた。 それにより、逆に困ったのは、虎徹の方だった。 クロノスの言っている事が実際に起きれば、間違いなく騒ぎになるかもしれない。 そして、サムの子守も真面に出来なくなるだろう。 それは、非常にマズい気がする。あいつらにサムの飯の準備は、無理だろうから……。 (…………おっ、おねがい……します……) 『はい。素直でよろしい♪』 そう考え直した虎徹は、クロノスに全てを任せる事にした。 そんな虎徹に対して、クロノスは、満足そうにそう言うと、左手を虎徹の頭へと翳し、光を出現させた。 その優しい光が虎徹の頭へと消えていく。 全ての光がその場から消滅した頃には、意識がボーッとする事もなくなり、吐き気もすっかり治まっていた。 『ほーら、終わったぞ。……まったく、少し考えてから動けないのか? ここで倒れたからまだよかったものの、あっちだったら、何もしてやれなかったかもしれないんだぞ』 「わっ、悪ぃ……; けど、治してくれて、ありがとうな!」 少し呆れつつもクロノスは、もう自力で立てると判断した為、虎徹を解放した上でそう言った。 それに対して、虎徹は、申し訳ないと思いつつも、素直にクロノスにお礼を言うのだった。 「…………あの……おじさん?」 「!!?」 『いだっ!』 突如、声が聞こえて来たのは、そんな時だった。 それに驚いた虎徹は、思わずクロノスの事を突き飛ばした。 その虎徹の行動にクロノスは、何処かをぶつけたのか、辺りにドンっと響いた音にクロノスの声は搔き消された。 そして、クロノスの姿もちゃんとその場から消えていた。 直後、キッチンに姿を現したのは、何処か心配そうな表情を浮かべたバーナビーだった。 「どっ、どうしたのぉ? バニーちゃん?」 「あの……大丈夫ですか? さっき……頭を打っていたので……」 「へっ? あっ! 全然、平気だから!」 「そう……ですか? あと、さっき……何だか凄い音が聞こえたんですけど?」 「あっ、あれは、その……ほら! ちょっと……変な虫が出たから!」 「虫……?」 「そうそう! 虫!!」 バーナビーの問いに若干慌てながら、そう虎徹は答えた。 「ちょっと、デッカイ虫がいたから……こうバシッと……な!」 「そう……ですか。なら、いいんですけど……僕も何か手伝いましょうか?」 「えっ? 別にいいよ。バニーちゃん、料理できないでしょ?」 「何で、貴方にそんな事わかるんですか?」 「そんなの大体、冷蔵庫の中見たら、わかるだろ?」 そう言いながら、虎徹は、備え付けられている冷蔵庫のドアを開けて見せた。 その中にあるのは、虎徹が想像していた通り、スポーツドリンクやゼリー飲料などが殆ど占めており、それ以外の食材という食材は卵くらいだった。 「……な?」 「! でっ、ですが――」 「だぁっ! 本当にいいって! それより、またサム君が暴れて、今度こそパソコンのデータが壊れたら、どうすんだよっ!」 「! 貴方、それ、どういう――――」 「いいから、さっさと、あっち行ってろっ!!」 虎徹の言葉を聞いたバーナビーは、明らかに驚いた様子で更に口を開こうとした。 だが、虎徹はそれを遮って、バーナビーを完全いキッチンから追い出した。 (……ったく、バニーちゃんは、何考えてんだよ……) さっきは、運よく大丈夫だったが、次に同じような事が起こったら、パソコンが壊れないとは限らないのだ。 あのパソコンには、あいつが二十年という歳月をかけて集めた両親の事件の資料が入っている。 あのブリキの玩具も大切だが、あいつにとって、あのパソコンも大事なものだ。 それをちゃんと見てないでどうするんだよ……。 そんな事を考えていたら、何やら痛いくらいの視線を感じた為、虎徹はその方向へと視線を変えた。 するとそこには、案の定と言うべきか、クロノスが立っていた。 『虎徹……。よくも、神である私の事を〝虫〟扱いしてくれたな?』 そう言ったクロノスは、ニッコリと笑っていたが、目は全然笑っていなかった。 故に虎徹でもクロノスが明らかに怒っている事がわかった。 「悪かったって! けど、ああでも言わねぇと、上手く誤魔化せなかっただろうし……」 『…………』 だから、そう慌てて弁解しようと虎徹は口を開いたが、クロノスは何を言い返して来ない。 それが、逆に怖い。 「本当に悪かったって!」 『…………』 「わかった! ちゃんとトキの分のチャーハンも作ってやるから……な?」 『…………いや。それだけじゃ足りない』 今回は、相当頭に来ているのか、虎徹のその言葉を聞いてもなかなか機嫌を直してはくれなかった。 そして、漸くそう口を開いたかと思うと、クロノスは虎徹へと向き直した。 「へっ? トキ……?」 それを少しだけ不思議に思った虎徹は、クロノスに問いかけようと口を開いたが、途中でやめた。 クロノスの藍色と金色の瞳の中で吸い込まれそうな気がしたからだ。 バーナビーの翡翠の瞳も綺麗だけど、改めて見たらクロノスの瞳も結構綺麗だと虎徹は不意に思ってしまった。 特に右の藍色の方がクロノスらしい色だと……。 そんな事を虎徹が考えているうちにクロノスの手が虎徹の顔へと近づいてくる。 それに気付いた虎徹は、クロノスが一体何をしようとしているのか大体わかったが、それを拒む気はなかった。 (…………まぁ、一回やったしなぁ) クロノスと一度キスをした事があった虎徹にとっては、それはあまり大した事ではなかった。 だが、やっぱり、自分からしない分、何処か恥ずかしい気持ちにもなった為、それを隠すように虎徹は目を瞑った。 「…………っ!」 だが、虎徹が予想していたソレとは、明らかに違った。 虎徹の身を襲ったのは、唇に伝わる生温かく柔らかな感触ではなく、頸筋を噛まれたような痛みだった。 そして、その後は、物凄い力で吸われるような感覚に襲われた。 それに驚きつつ、虎徹は声が外に漏れないように手で口を必死に抑えてから、目を開けて視線を変えた。 すると、そこには案の定、クロノスが己の首筋に痕を付けている姿が目に映った。 それを認識した途端、虎徹は思わず赤面してしまう。 「…………おっ、お前……! 何してんだよっ!?」 『何と言われても、お前が言ったではないか? 私の事を〝虫〟だと?』 そして、一通り気が済んだのか、暫くしてからクロノスが虎徹から離れた後にそう虎徹は、口を開く事が出来た。 それを聞いたクロノスは、心外とばかりに口を尖らせた。 『だから、ちゃんと虫としての仕事をしてやったまでの事だろう? そして、これが一番の虫除けにもなるしなぁ♪』 (んわけあるかっ!!) 満足気にそう言ったクロノスに対して、本当はそう怒鳴りたかった虎徹であったが、それをグッと堪えた。 そんな事をすれば、またバーナビーがこっちに戻って来るかもしれないからだ。 その為、虎徹はクロノスに対しては「はいはい、わかりましたよー」と若干投げやりな返事をしつつ、自分たちの晩御飯とサムのミルクの準備をする事にしたのだった。 尚、この行為による罰が当たったのか、大目に作って別にクロノスの分として分けておいたチャーハンも後々パオリンに見つかって、食べられてしまうクロノスであった。 神様シリーズ第4章第17話でした!! はい!本日が、タイバニ放送12周年記念という事でアップしました! 虎徹さんは、案の定、倒れてしまいました。本当の脳震盪だったら、もう少し時間が経ってから起こるものかもしれませんが、そこは気にしないでください! 恐らくですが、虎徹さんとトキがそれぞれ言っている〝虫〟は異なっています(何かとは敢えて断言しませんが)。 ちなみに、虎徹さんは2週目なので、バニーちゃんの冷蔵庫の中身も把握済みでした。 R.5 4/3 次へ |