「聞こえるか、バーナビー」
「…………」

その頃、隣のカプセルに入っていたバーナビーは、マーベリックの声にゆっくりと目を開いた。

「君のやり場のない気持ちはよくわかる。だが、ここで投げ出してしまっては、君の目的は達成できないよ」
「………ご心配おかけして……すみません」

マーベリックの言葉にバーナビーは、そう素直な気持ちで答えた。
マーベリックさんにはこうも素直に謝れるのに、どうしてあの人にはそれができないのだろうか。
本当は昨日のことだって、謝らないといけないとわかっているのに……。

「今は、ゆっくり休んで、もう一度立て直そうじゃないか」
「はい……」
「おやすみ、バーナビー……」

そうだ。
今は、ゆっくりと休まなければ……。
そして、今度こそあの人に謝らなければ……。
そう思ったバーナビーは、ゆっくりと目を閉じて眠りにつくのだった。






~神様ゲーム~








幼い頃に両親と暮らしていた家の風景。
その少し開いた隙間から光がドアから漏れてくる。
絨毯に落ちた蝋燭の炎が勢いよく燃え広がっていく。
バーナビーがドアを開けると炎に包まれたリビングの中に一人の男が立っていて、近くには父と母が倒れている。

(父さん! 母さん!!)

二人を殺したであろうその男の顔を確認しようとするが、バーナビーの瞳に映るその男の輪郭がゆっくりと崩れていく。
炎と一体となった顔はいつも誰なのか特定することができなかった。
それを知ってか知らずか、男の姿はいつもバーナビーを嘲笑って消えるのだ。

(一体、誰なんだ? お前が父さんと母さんを殺したのか?)

その正体を探ろうとバーナビーが手を伸ばした瞬間、景色が一変する。
さっきまで炎に包まれて明るかった部屋から薄暗い部屋に変わる。
まただ。また、あの景色だ。
あの何処かの研究施設のような場所にバーナビーはいた。
そして、また、誰かもわからぬ人物に必死に呼びかけているのだ。
僕を置いていかないで、と……。
そこにあるのは、その人物を失うかもしれないという確かな恐怖。
それは、両親を失った時以上に大きなものだと感じるものだ。

(……どうして?)

どうして、僕はこんな夢ばかり見るんだ?
父さんと母さんを失うあの夢だけでも悪夢だというのに、どうしてこんな訳のわからない夢を見なければいけないんだ?
この夢は、僕に一体何を訴えているんだ?
こんな風に誰かをまた失うくらいなら、僕はずっと独りのままでいい……。

『…………ホントに?』
「!!」

不意に聞こえてきた声にバーナビーは振り返ると、そこには幼い自分の姿があった。

『ホントに君は、それでいいの? 後悔しないの?』
(……黙れ)

何故、これは俺の神経を逆撫でることばかり言うんだ。
これは僕のはずなのに……。

『今なら、まだ間に合うよ。あの人のことを……』
「黙れと言ってるだろっ!!」

そう叫んだ瞬間、辺りに警報音が鳴り響き、幼いバーナビーの姿は掻き消えるのだった。

「!!」

目を覚ましたバーナビーは荒い息を吐きながら、肩で息をした。
遠くの方で夢の中でも聞こえてきた警報音が鳴り響き、それにリンクするかのように腕に装着しているPDAが点滅していた。

(………一体、何なんだ?)

犯人の顔を思い出せなかったばかりか、またあの不快な夢を見てしまった。
一体、いつになったらあの悪夢から解放されるのだろうか……。

『タイガー&バーナビー出動要請発令!現場は、ダウンタウン地区の教会跡地。急行してください!繰り返します……』

カプセルを開けると天井のスピーカーから警報と共にアナウンスが流れていた。
それを聞いたバーナビーは隣のカプセルに目を向けると無人になっていることに気付いた。
あの男は、もう既にここから出ていった後のようだった。
また、先を越されてしまった。
その事実にバーナビーは小さく舌打ちをすると、出動の準備をすべく、走り出すのだった。





















「…………何で?」

すぐさまヒーロースーツを着てアポロンメディアの入口へと走って出てきたバーナビーは驚きのあまりそう呟く。
そこにあったのは、道路に駐車しているダブルチェイサーのサイドカーに既に搭乗して待っている虎徹の姿であった。

「……いたんですか」

そんな虎徹の姿を見たバーナビーは溜息をついてそう言うとダブルチェイサーへと近づく。

「今度は、ショーじゃねぇ。本物の事件だ」
「…………わかってますよ」

虎徹はバーナビーと視線を合わせないようにそう言うのに対してバーナビーは素っ気なく返すとチェイサーに跨った。
「…………警察が極秘に追ってた犯罪組織のアジトを突き止めたんだと」
「! 犯罪組織……」
「…………」
虎徹の言葉にバーナビーは反応する。
犯罪組織。
それは、自分が探しているウロボロスかもしれない。
そんなバーナビーの姿を虎徹は何か言いたげにこちらを見つめていることにバーナビーは気付いた。

「何ですか?」
「えっ? いや……別に……」
「言いたいことがあるなら、はっきり言ったらどうですか?」
「本当に何でもねぇよ。それより、さっさと行けよ」
「…………」

それが気になったバーナビーは虎徹を問い詰めたが、虎徹はそう言ってはぐらかすだけだった。
本当に何なんだ、この人は……。

「なっ、何だよ?」
「別に……何でもありませんよ。ただ……」
「?」
「…………昨日は……すみませんでした」
「!!」

虎徹がバーナビーの言葉に驚いているのをバーナビーは無視してフェイスシールドを下ろすと、ダブルチェイサーを疾走させ、現場に向かうのだった。
























神様シリーズ第3章第15話でした!!
相変わらず、悪夢に悩まされるバニーちゃん。
でも、ちゃんと虎徹さんに謝れたよ!ちょっぴりバニーちゃんが成長しました!
さてさて、次回はどうなることやら。。


H.30 9/30



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