「あった!」

トイズバレー鉱山の坑道を魔物を倒しながら、ルークたちは奥へと進んでいった。
すると、ロイドが転がっていた石の中から抑制鉱石を見つけて声を上げた。
他の者にはただの岩にしか見えなくても、幼い頃から養父の工房で遊んでいたロイドとっては、鉱石を見分けるくらい簡単なことだった。

「こっちもすんだせぇ」

緊張感の欠片もない声でゼロスは、そう言うと剣を鞘へと収めた。
長い間、人の手が入っていなかった為かここは魔物の棲み処となっていて、かなりの魔物を倒していた。
ロイドは、抑制鉱石を袋に入れるとリーガルへと振り返った。

「助かったよ、リーガル! あんたがいなかったら、もっと手間取っていたと思う」
「いや、これくらい大したことではない」

ロイドの言葉にリーガルはそう言った。

「けど、詳しいんですね、この鉱山のこと?」
「…………昔、ここで働いていたことがあるのだ」
「ふ〜ん。アンタがこのトイズバレー鉱山でねぇ……」

ルークの何気ない言葉にそう言ったリーガルの言葉を聞いてゼロスは目を細めた。

「…………んなわけないでしょうが」

そう呟いたゼロスの言葉に何も答えず、リーガルは来た道を引き返し始めるのだった。






〜Symphony The World〜








(なんだ……?)

採掘場の出口へと近づくと何やら話し声が聞こえてきた。
そこにいたのはランプを下げた小太りで中年の男が護衛の剣士を二人を引き連れていた。

「ダメだ。この辺りにもエクスフィアはない……」

ルークたちの存在にまったく気付いていないのか、男は舌打ちをしてそう言った。
その男を見て、リーガルの表情が一変した。

「…………ヴァーリ!」

そう言ったリーガルの声には、怒りが込められていた。

「! リーガル! そうか、外のガードシステムを破壊したのはおまえだったのか」

リーガルの声にヴァーリと呼ばれた男は、振り返ると納得したようにそう言った。

「誰だ? あいつ……」
「あいつは、エクスフィアブローカーのヴァーリだ」

ロイドの問いに答えたのはゼロスだった。

「何でこんなところに……?」
「貴様、何故ここにいる! 教皇は何故おまえを野放しにしているのだ! 私との約束が違うではないか!!」

リーガルのその言葉を聞くと、ヴァーリは弄るように哂った。

「ハハハ! 教皇様が人殺しの罪人と本気で約束なさると思ったか? おまえこそ、コレットを連れてくるという約束を忘れて仲間に成り下がってるじゃねぇか!」
「黙れっ!!」

< 吼えるようなリーガルの一喝にヴァーリは息を呑んだ。

「……教皇が約束を果たさぬと言うのなら、私自ら貴様を討つ!!」
「冗談じゃねぇ! ズラかるぞ!!」

そう言うとヴァーリは、護衛を引き連れて一目散に逃げていった。

「リーガルさん、あの人は一体……?」
「仲買人だ。金になるなら、石ころから、ハーフエルフ、人間、魔物まで何でも扱う。仲でも奴が一番力を入れているのがエクスフィアだ。奴はこの一体の鉱山で採掘されるエクスフィアを一手に買い入れ、それを何者かに売り捌き、加工品をまた買い入れて、これを売り捌いているんだ」
「つまり、テセアラのエクスフィアは、奴が売ったものというわけか」

リーガルの言葉にアッシュはそう言った。
やがて、外の明かりが見えてきて、一行は鉱山を出るとそのまま山道を下った。
下りたすぐそこが入り江になっている。
そこに停めておいたエレカーに乗り込むと、ゼロスがすぐに発進させた。

「…………リーガルさん」

エレカーの操縦を自動操縦に切り替えた頃、コレットが言い難そうにリーガルに声をかけた。

「あの、訊いてもいいですか? さっきの人が言っていたこと……人殺しの罪って……」
「…………ヴァーリの言葉通りだ。私は人を殺めた囚人だ。軽蔑してくれてかまわん」
「何があったんですか?」
「…………」

そうルークは訊いたが、リーガルは何も答えなかった。

「知り合いってそんなに間があるわけじゃないけど、俺には、あんたが金目当てとかで、そんなことをするようには見えないんだけどな」

それに対してロイドは、首を傾げてながら言った。

「言えば言い訳になる。……私は罪を背負ったのだ。それでいい」

リーガルの言葉にロイドは溜息をついた。

「…………俺も、俺のバカな行動のせいでたくさんの人を……殺した」

そう言ったルークは、そのときのことを思い出したのか声は酷く震えていた。
それに対してアッシュの眉間の皺が微かに寄る。

「ルーク。おまえ、まだあのことを……」
「忘れられるわけないよ。アレは俺が犯した罪なんだから」
「違う!!」

ルークの言葉を振り払うかのようにアッシュは言った。

「アレはおまえだけのせいじゃねぇ! 俺やナタリアたち、俺たちの世界に生きる全ての奴が背負う罪だ!!」
あのとき、誰もがルークの死を望んだ。
預言(スコア)がもたらす繁栄の為に……。
ルークとアクゼリュスを犠牲にしたんだ。
そのことを知っていて俺は止めることが出来なかった。
ルークを止めることが出来なかった。
それが俺の背負う罪だ。

「アッシュ。それは違うんだ」

ルークは哀しそうな笑みを浮かべた。

「アッシュは、俺を必死に止めようとしてくれてたよ。なのに……俺はその声を聞かなかった」
――――やめろ! アクゼリュスを滅ぼす気かっ!!

あのときのアッシュの言葉をちゃんと聞いていれば、あんなことにはならなかったのだ。
誰も死なずにすんだのだ。

< 「ティアたちも俺を止めてくれたのに、俺は聞かなかった。だから、これはバカな俺一人の罪なんだ」
「違う!!!」

先程よりも大きな声でアッシュは怒鳴った。

「……俺が犯した罪は決して消えないし、それをずっと背負って生きていかないといけないと思う。けど……例え罪を背負っていても幸せにはなっていいと思う。苦しいときは苦しいって言ってもと思うんだ。こんな俺の為にもこうやって怒鳴ってくれる相手がいるんだから」
「ルーク……」

ルークはアッシュに笑みを浮かべた。
そんなルークにアッシュは「馬鹿が」と小さく呟くとルークから目を逸らした。

「あの、リーガルさん。私、上手く言えないんだけど、人の心の中には神様がいるんだと思うの。だから、リーガルさんが背負っている罪は、神様も一緒に背負ってくれてると思います。えっと……それだけです」

コレットは何とか自分の思いを伝えようと必死でそう言った。
二人の言葉を聞いたリーガルは天井を仰いだ。

「…………いずれ、話す機会が与えられればそのときは……だが、今は……すまない。罪人と旅をするのは恐ろしくもあろうし、辛かろう。暫し我慢して欲しい。プレセアのエクスフィアの呪縛から解き放つまでは」
「……あんただけじゃないさ。……みんな、同じなんだ」

そうポツリと呟いたジーニアスの声だけが、エレカーの車内にいつまでも残った。
























Symphonyシリーズ第5章第10話でした!!
こちらの更新も久しぶりになります!更新が遅くなりまして、ごめんなさいっ!!
web拍手で「何度も読み返しています!更新はもうないのでしょうか・・・さみしいです。」というコメントを見て慌てて書き上げました。
今回は、トイズバレー鉱山でリーガルさんがメインな感じで書いてます!
アクゼリュスのことを話すルークが本当に切ないです。
アッシュ!もっと言ってやれ!!と思いつつ書いてましたww


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